第四十九章 ---BEAST--- (2)
まばゆい白い閃光が、ゆっくりと消えていき、
第一護衛艦だけが残っている光景を、誰もが
予測していた。
「第一護衛艦から入電、黒龍が一体残っており、
攻撃を受けている・・・応援求む・・・と」
映像が拡大され、この旗艦のコックピットからも
ライブで確認が出来た。
1体のみ、黒い巨大な竜が残っており、
第一護衛艦の推進部に尻尾による物理攻撃
を行っていた。
第一護衛艦の艦長、デミゴスがこの旗艦の
天井の大型モニターに大きく映し出された。
(デミゴス艦長)
「ライオネルはどうしたのだ・・・」
旗艦長席のゴッドネルが代わりに答える。
(ゴッドネル)
「先の衝撃で、深手を負いました・・・」
第一護衛艦 艦長デミゴスは目を閉じたまま
「では・・・伝えてほしい・・・我が艦は
航行不能となった・・・しかしトラデスを
残して逝くつもりはない・・・
この艦の恒星エネルギーをオーバードライブ
させ、25番7号の恒星に突っ込み、
重力崩壊を起こす・・・」
(恒星・・・太陽の様に自ら燃える星の事。)
ゴッドネルは何も聞かず、我を通す・・・
「・・・デミゴス艦長、今、行きます!
第一護衛艦の近くにショートトリップ!
主砲発射の用意!」
デミゴスは、
「馬鹿め、あなたは旗艦長代理だ!
よく考えろ!」
もう遅く、旗艦【ルナ・リーブ】は第一艦から
目視できる位置に現れた。
ルナ・リーブの葉巻型艦の先頭に銃口が現われ、
白い光が集まると直ぐに、白い光の束の電磁波が
トラデスのペットである黒竜の腹を貫き、
真ん中から真っ二つに分断された。
「・・・やったぞ!」
ゴッドネルは右手を振り上げた。
次の瞬間、コックピットのナビゲーターが、
「艦長代理、あれを見て下さい!」
ゴッドネルは全身の血の気が引くのが
判った・・・
「あれは瞬間再生!2体に増えたのか・・・」
1体の黒龍は、第一護衛艦に体当たりし、
艦をはじき飛ばした。
刹那、もう一体は旗艦【ルナ・リーブ】の後方へ
ショートトリップして現われ、推進部に尻尾の
物理攻撃のあと、口から灰色の太い光線を
吐いた。
ルナ・リーブは後方から灰色の光線に包まれ、
至る所で爆発が起こった。
「艦長代理、推進装置の95%が機能しません、
1200ヶ所で、隔壁に穴が開き吸い出されて
います!止めきれません!」
ゴッドネルの思考は一瞬だったが、自身では
恐ろしく長く感じる程、止まっていた。
「第一護衛艦から入電です!」
頭から血を流すデミゴス艦長がゴッドネルの
頭上に映し出された。
「我が艦の乗組員の10%がショートシップ
で避難する。
私は当初の予定通り、20分後に
ショートトリップで恒星で爆縮を起こす。
あなたは少しでも遠くに、乗組員と
ライオネス旗艦長のためにも・・」
ゴッドネルが我に返る。
「無人機で黒龍をおさえつつ、重力炉エンジン
の修復を急げ・・・デミゴス艦長も避難して
下さい!」
ルナ・リーブのコックピットのオペレーターが
「現在の修復率20%、ショートトリップでも
機体の方が持ちません・・・」
デミゴス艦長が落ち着いた声で話す・・・
「ゴッドネルよ、あなたのことは私も、
自分の息子だと思ってきた。
昔、訓練で教えた事をもう一度、
思い出して下さい・・・」
天井のモニターが途切れる・・・
「旗艦長代理!!」
別のオペレーターが慌てて話す・・・
「前方のモニターを・・・」
第一護衛艦のコックピット付近が爆発し、
赤い火が内部に見える。
「・・・デミゴス艦長ぉ~・・・」
ゴッドネルはグルグルと頭を振って、自身の
胸を叩き、不甲斐なさを悔やんだ。
(よく考えるのだ、考えよ・・・)
(敵に包囲され、艦隊自体が身動きの
しにくい状況になった・・・
さて、どうする。)
昔のデミゴス教官から指導を受けた時の
記憶が蘇る・・・
教室の中央に浮かぶ、大きな球の中に、
味方の艦隊、数十隻と、距離をおいて、
大きく取り囲む敵の5倍の艦隊。
ゴッドネルが長く考え込んで、
(敵の守りの薄い所から、装甲の厚い艦を
周りに配し、魚鱗陣形で1点突破を計る。)
デミゴス教官が、
(どれだけの犠牲を出すつもりか!
周りをよく観ろ!この星系を良く観察
するのだ!もっと、よく考えるのだ!)
ゴッドネルは我に返り、コックピットの
オペレーターに向け、
「この星系1000光秒の範囲を映し出せ。
サポートへ繋げ!稼働できるショート
シップは何隻ある?」
(1000光秒・・・光が千秒間に進む距離)
オペレーターがロジスティックサポートへ
急いで繋ぐと
「サポートより入電、ジャンプ可能な船は
10隻です。」
ゴッドネルは少し安心して
「直ぐに乗員、分乗して、旗艦より離れろ!
2500光年離れたグターブ艦隊に拾って
もらえ!5分で完了しろ!」
ゴッドネルはコックピットの中央に球状に
映し出された星系をじっくり眺めた・・・
ゴッドネル自ら幾つかの操作を行った。
「このハビタブルゾーンの惑星のサルは
予想以上に好戦的だったな・・・
話し合いも無く我々に向け、前触れなく
人工衛星から核ミサイルを撃ってきた。」
惑星が拡大され、99.99% extinction
と表示されている。
ナノマシンにより、殆どの高等生物や危険
生物などが、選ばれて死滅させられていた。
(惑星まで500光秒、耐えられるか・・・)
「この惑星表面 高度1万キロに、ミニ
トリップを設定!
コックピットの者も全員、避難するのだ」
ゴッドネルが大きな声で吠える。
「旗艦長代理、我々近衛兵団はお供させて
頂きますぞ。」
両脇に離れて立っている、ドラゴン族が
近衛兵団長で、ホワイトウルフ族の者が
副団長だった。
(近衛兵団団長)
(近衛兵団副団長)
◇◇◇
ライオネル旗艦長を含む医療班のショート
シップがまず、出発した。
その後、次々に旗艦ルナ・リーブの
両サイドからショートシップが飛び立ち、
消えて行った。
広く見えるコックピットには、ゴッドネル
を含む3人だけとなった。
その他の兵団員はライオネル旗艦長の、
付き添いの口実で避難させたからだ。
第一護衛艦が恒星へオーバードライブを
仕掛けるまで10分を切った。
近くの黒龍に攻撃する無人機も半数以上が
討ち取られた。
黒龍がこちらを向く。
「重力コンバーター始動、ミニトリップ、
実行!」
ゴッドネルは歯をかみしめる。
船全体にガタガタっと振動が起こった。
コックピットの正面モニターに大きく
水色の惑星が映し出された。
「指定した座標に緊急着陸!!」
ゴッドネルが吠える。
惑星の大気により船体が赤く染まる。
外壁温度調節ポリマーが黒龍の攻撃により、
剥がれ冷却装置が所々で作動していない。
コックピットの温度も80度を超えて、
上昇を続け、ゴッドネルの冷却魔法が
3体の身体を包み込んだ。
船の重力制御はまだ生きており、2分
足らずで砂漠の中の建物の前に着陸した。
側面の出入口が開き、階段の付いた
タラップが自動的に地上に降りた。
ホワイトウルフの副団長が先行して、
3体は機体の前方の方から砂地の地面に
降り立った。
ビル入口まで200m余り、3体は砂の
上を5~6秒で走破し、入口の扉をすり
抜ける。
エックス線モニタで把握した通り、地下へ
向かう非常階段がホールの奥に存在した。
その時、ルナ・リーブは轟音と共に
再び飛び立ち、船の高度なAIが
自身の考えで、黒龍との戦闘の継続を
選んでいた。
この地上の砂漠地帯に建つ大きなビル群は
全て、地下で繋がっており、エリア
全体が軍の研究施設だったらしい
事が、先の調べで判っていた。
迷うことなく3体はロビー奥の扉を開け、
広い螺旋階段を猛スピードで降りていった。
「・・・・・このエリアだ。」
ゴッドネルは呟いた。
◇◇◇
第一護衛艦は無人攻撃機に守られながら、
黒龍と交戦していた。
コックピットは既に無くなり、船のAI
が戦闘を継続していた。
まだ艦内には300体以上の戦闘員が残って
おり、船体の側面にある多くの機関砲の
砲台に座り、手動でレーザー攻撃などを
行っていた。
艦内にAIからのアナウンスが流れる・・
「恒星エネルギーのオーバードライブを
開始します・・・
重力コンバーター始動・・・
25番7号恒星へのミニトリップを開始
します・・・5・・・4・・・3・・・
2・・・1・・・」
無人機に守られ、黒龍の前に対峙していた
第一護衛艦がその宙域から忽然と
姿を消した。
25番7号、その恒星の内部深くに
第一護衛艦が現れた。
星の中心部に近く、核融合が起こっている
エリアだ。
AIが続ける・・・
「重力エネルギー解放、爆縮まで・・・
5・・・4・・・3・・・2・・・」
その刹那、25番7号の恒星の輝きが急に
大きくなった。
恒星の中心に小型のブラックホールが現われ、
すさまじい勢いで、核融合のエネルギーを
吸い込んでいく・・・
◇◇◇
3体は階段を降りきり、鉄の扉の前にきた。
取っ手も無く、真ん中から電気で開く、
スライドドアのタイプだ。
副団長のホワイトウルフが助走をつけて、
思い切り蹴った。
凄い音と共に、厚さ5センチはあろう
鉄の扉が、根元から外れてひしゃげて、
前に飛んで行った。
中に入るとそこは、ルナ・リーブの
格納庫にできる位の、広い空間が
広がっていた。
地下ではあるが、地面にはごつごつとした
岩が多く存在し、まるで地上の様だ。
天井や側面のライトは生きていた。
(副団長ダンケ)
「ダンケ、扉を蹴り飛ばす必要は無かった
のではないか・・・」
(団長 ゲイル)
ドラゴン族の近衛団長、ゲイルが意地悪く
いう。
「族長、それはあんまりですぜ・・・」
ホワイトウルフの副団長のダンケは、
ゲイル団長を尊敬して族長と呼んでいた。
「しっ!誰かいるぞ・・・」
(ゴッドネル)
2キロ以上離れてはいるが、ライオン族の
ゴッドネルにはよく見えた。
「10人以上いる、殆どがウルフ族だ。」
ダンケは理解が及ばす、
「・・・何ぃ・・・何故?」
ゲイル団長が静かに答える・・・
「・・・あれは、囚人たちですね・・・」
ゴッドネルに報告する。
ルナ・リーブが着陸した時に、AIの判断で
囚人の檻も解放したのだった。
ゴッドネルは指示をだす
「まだ、向こうに気付かれてない・・・
縦陣でゆっくり詰めていくぞ・・・」
1キロ程まで近づいた。
ゴッドネルは手を挙げ、全体を止める。
「これ以上は、匂いでも感づかれる。」
◇◇◇
有難うございました。
続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。
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