第四十章 ---キメラ17号--- (6)
ババッババッバババババ・・・!
MP7A2と呼ばれるサブマシンガンを、
バーカウンター越しにボーイ風の若い男は
鬼の面を付けた忍装束の男に向かって、
不意に撃ちまくった。
薄暗い店内に何度もフラッシュが起きる。
忍装束の鬼の面を付けた男は、微動だに
しておらず、ダムダム弾の爆発も起きない。
梓は、薄暗いバーの出入口近くで立ち止まり、
振り返って立ったまま、大きめな声で・・・
「・・・やめなさい!・・ジョバン、
怒らせないで・・・」
けたたましくフラッシュと共に、鳴り響い
ていた銃声が止み、静寂が戻る。
白灰色の煙と硝煙の匂いが辺りを覆う・・・
階下でパスパスと銃声が聞こえている。
バラバラバラバラバラ・・・・
鬼の面の男の忍装束の前面から、多くの
銃弾が、タイル張りの床に転がり落ちる。
「ジョバン・・そんな玩具で屠れるわけ、
無いでしょう!」
梓に苛立ちの感情が見える。
「黒鬼さん、貴方に聞くわ・・・貴方の
仲間は近くにいるのかしら・・・」
鬼の面の男は忍装束を手でハタキながら、
「お主が某の質問に答えたなら、教えて
しんぜよう。」
「・・・あら、何かしら?」
「先日、この近くで狙撃事件があったと聞く。
お主らの仕業か・・・」
少し間があって、梓が口を開く・・・
「私もその話は、あの人から聞いたわ。
ただ、我々の組織の者では無いことは
確かよ。」
黒鬼は少し、考えたような素振りをして
「・・・某の仲間が、近くに居ることは
ない。そもそも某も、あの人からの
命が無ければ、人前に姿を晒す事も
無かったのだ・・・」
「・・・フフフ、あの人か・・・貴方も
同じなのね・・・又、逢いましょう。」
そう言い残して、梓は風のようにバーの
出入口から外に出た。
(・・・ソウルを持つ化成体か・・・
お嬢は信じるかのう・・・)
梓が外に出たのに合わせ、黒鬼は
転移により姿を霞ませながら、
若いバーテンダーに向け、
「お前は普通の人族・・・早う組織
を抜けろ・・・」
そう言い残し、黒鬼の姿は完全に消えた。
報告に当たり黒鬼は、嫌な予感しか
しなかった。
◇◇◇
1階のロビーでは、銃撃戦が行われていた。
生き残った化成体は1体だけと思われる。
ロビーの真ん中でガーダが九の字に倒れ、
うめき声が聞こえる。
「斎藤さん、待って!」
南は、今にもガーダの元に飛び出して
行きそうな斎藤を制した。
入口近くの柱の影に隠れている化成体が
変身を始めた。
全身が黒っぽくなり、腹の部分が4倍、
5倍と膨れていき、わき腹から二本ずつ
ギザギザの触角の付いた尖った足が
出てきた。
身長も2倍ほどの大きさになり、蜘蛛の
様相を呈してきた。
斎藤の持つM50A1と呼ばれるカービン
から1秒間に12発、合計40発もの
メタル弾が、化成体にヒットした。
しかし硬い外皮に弾かれ、全く通用して
いないのが判る。
その時、裏の扉から南が飛び込み前転で
ロビーに入って来た。
右手にマグナム程の銃口が見える。
いや、よく観ると右腕と一体化している。
「対ショック、対閃光防御!!」
南は大声を張ると、大型の蜘蛛の化成体
の隠れる柱に向けて、大口径の右腕を
かざした。
「・・・・・はあっ!!」
気合と共に、直径80センチ以上の
白い光が、南の右腕から放たれた!
蜘蛛が掴まって隠れている
大きな柱に向かった。
瞬間、光の束は柱ごと貫通して、
大型の蜘蛛は柱と共に蒸発した。
太いレーザービームとなった白い光は、
1階の建物の外壁も貫通して大空に
逃げていった。
(これがLight-Handと言われる
所以か・・・)
斎藤は、神々しい物を見せてもらったと
少し畏怖の念も込め勝手に崇拝していた。
(ガーダを霊法師に診せないと・・・)
斎藤は我に返る。
脅威は一応去ったと判断して、後ろの
扉から慎重に千葉流師範1人が
顔を出した。
残り2名はまだバックスペースで
見張りを継続している。
その時である、入口側の外から、
カービンのオートモードで速射する音が
聞こえてきた。
「・・・デインさん!・・・」
外から入口側に回って来ていた、デイン
と霊法師3名が敵と遭遇したようだ。
「斎藤さん、師範一人とまた裏口を出て、
入口側に回って下さい。」
「判ったぜ・・・」
斎藤は風のように音を立てず、後ろの扉
から出ていった。
◇◇◇
2階に降りた梓は、1階で速射の銃声が
したと思ったら、窓から大きな光の束の
レーザービームが空に抜けるのを見た。
梓が1階をサーチすると、もう化成体は
1匹も残って居なかった。
2階の窓から下を除くと、まだ4人の
人影が見えた。
「・・・・もう、困ったわね。」
地下に降りる隠し通路は、建物に隣接
して外にあったのだ。
梓は2階の窓から、そっと飛び降りた。
ただ霊法師が居たため、直ぐに魔素感知
に引っかかった。
30メートル離れてはいたが、デインは
訓練以上にカービンを素早く構え、フル
オートで撃ったが、直ぐに辞めた。
よく観ると赤いバスローブを着ていて、
女の子だ、温泉の客だと思ったのだ。
デインは慌てて、大声を張りながら、
近づいていく・・・
(何発かは当たっているはずだ・・・)
「・・・あちゃ~、大丈夫ですか~!
すみませーん!」
「ああ、あれは温泉客ですね・・・」
霊法師たちも口々に、怪我をしているはず、
治さないと、と呟いている。
赤いローブを着た女の子は、建物の側面
の壁にすーっと消える様に入った。
梓は地下に向かって、金属梯子の付いた
穴に入り蓋をした。
地下二階に取り敢えず降りて、緊急で
修理した転送マシンのサークルに入った。
転送機の端末を叩き、自爆装置の
スイッチを入れる。
「私を殺し屋たちと一緒にしないでね。」
彼女の身体が消えると同時に小規模の
爆発が起こった。
◇◇◇
デインには裏口から回ってきた斎藤が
こちらに来るのが見えた。
デインは大声で斎藤に向かって、
「赤いローブの民間人を撃っちまった~
その辺の扉で倒れているはずだ~!」
デインは罪の意識と涙でもう前が見えて
なかった・・・
ズズズズーーーン
地面が振動した。
全員が一旦しゃがむ中、デインだけは
建物の外壁沿いに片手を付きながらも、
前へ進む。
すると建物に接して金属の正方形の
点検口の様なものが存在し、隙間から
煙が上がっていた。
銃口を隙間に入れ、テコで持ち上げる
と、下水道の入口の様に金属の梯子が
下に延びていた。
「・・・あああぁ~・・・」
デインは彼女はここに落ちて、息絶えた、
どんどん想像は膨らみ、降りて行けず、
固まっていた。
少し時間を置いて、レスキュー部隊や
DMAT救急車両なども駆けつけ、
ガーダは一命を取り留めた。
ただ重傷者はガーダ以外、見つけられず
赤いローブを着た女の子は、化成体
の仲間だったのではと、結論付けられた。
続けて科学調査班CSIのワイアット・
ダンカンと関西州警察の三宅警部が
別々のヘリで、調査チームを引き連れて
やって来た。
ワイアット・ダンカンが、まずミナミを
見つけると、
「先輩!お疲れ様でした、大変でしたね!
ホント、ミナミ先輩が居なかったらと
考えたら、恐ろしくなります。
流石は先輩、今回の事でまたDHSで
昇格しますよ・・・」
ダンカンは南と直接 会うのは2年ぶりと
いう事もあって話が長い。
部下に全部、仕事を押し付けて、
「先輩、晩御飯、ご一緒できますか?」
ミナミの顔がだんだん怖い顔になる。
「ワイアット!このまま夜も仕事でしょ!
私は先に帰るわ。あとヨロシクね!」
そこに、三宅警部がやって来て、
「へぇ~その右腕の銃、どうなっている
のだ?繋がっているのかね。ヘぇ~」
一言多いタイプの彼にダンカンが、
「三宅警部!建物の1階に変な死体が
ゴロゴロあります。行きましょう!」
ダンカンがミナミを見てウインクする。
その後ろをデインが、女の子は死んでない
と言われているのに、まだウロウロしている。
こうして、後日 転送マシンについての
大きな問題が起こるのだった。
◇◇◇
有難うございました。
続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。
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