第三十九章 ---キメラ17号--- (5)
(マリア 着物)
マリアに呼び止められたプロテノールは、
振り返って、
「・・・マリアさ・・・いえ鴨野様・・・
貴女様の事を実は存じ上げております。」
今日も赤茶色のワンレングスの肩丈の髪型で、
黒いパンツスーツだ。
「・・・パリピーは、私の何を知ってるって
言うの?」
「・・・そ、それは・・・ペタルズグループ
会長の一人娘・・・もし、御身に何か・・
あろうものなら、私一人で責任のとれる
問題ではございませんので・・・」
プロテノールは消え入りそうな声で話す。
◇◇◇
彼女は1歳の時、母親を亡くし孤児院で
暮らす事となった。
当時は、母親の部下の生き残りが、孤児院
でも交代で付き切りで、面倒をみてくれた
と聞いた。
孤児院を6歳で出て、寮付きのアカデミー
に入学させてもらった。
そのアカデミーを運営するのも実はペタルズ財閥
で、そこに通っていた者たちは、将来この国に
携わる人間ばかりだった。
私は若干20歳で主席でアカデミーを卒業し、
母と同じ組織の母の部下を頼る事で、
組織に入る事が出来た。
組織に入って知ったのは、アカデミーで
の学費は、全てペタルズスクーラシップ
(ペタルズ奨学金)で賄われていて、
生活費に於いても、月々 多すぎる位の
金額が彼女の口座へ振り込まれていた。
24歳で組織で10人程度の部下を持つ、
ロワー(下級)チームリーダーとなった。
エリアの総司令が、且つての母の部下だった
事もあり、昇進辞令を直接頂く事が出来た。
併せて、母親が積み立てていた企業年金、
企業加入の任意労災保険金などの入った
タブレット型管理口座を渡された。
普通の家なら20軒ほどなら買える額だ。
「プロテノール・パピリオ、お前を〔ロワー
リーダー〕とし、チーム名【Rusty】と
する!母様より早い出世だ。
レシャ様も鼻が高いだろう。」
255人のロワーリーダーを束ねるエリアの
総司令の彼女から、涙ぐみながら勲章を授与
されたのだった・・・
現在は私が、そのエリアマネージャーとなり、
組織の名前が【八咫烏】という事、組織に
何人かいる魔王の一人、黒鬼と呼ばれる
男が、直接の上司である事などを知る事と
なったのだ。
◇◇◇
財閥や門閥といったものは、正直好きではない。
アカデミーで観た、なんと口先だけで戯け者の
多かったことよ。
ただ、ペタルズ財閥には多少なりとも恩返しの
気持ちがあった。
財閥トップの一人娘、プリンセスマリア・・・
それなりに武の心得が有る事も判る・・・
・・・でも!・・・
「パリピー!何ボーとしてんの。早く、門を
開けて!」
「・・・鴨野様、・・・もう、判りました!」
東屋の端末をプロテノールが打ち込むと、
国立図書館に通ずるメインゲートがゆっくりと
開いた。
二人はメインゲートから堂々と入って、
プロテノールは頭の中で、ぶつぶつ考えた。
(私一人なら、壁を飛び越えて入れたのに・・
それから彼女、何で浴衣なの?何で?
お嬢様の休みは浴衣なの?)
国立図書館の側面にある、勝手口のオートロック
錠を解除して、プロテノールが先頭で中に入った。
プロテノールが小声で話す・・・
「1階のレセプションにある各階の照明スイッチ
を入れて、明るくして来ますので、鴨野様、
ここで少しお待ち下さい。」
レセプションというのは受付の事だ、パリピは
横文字をよく使う。
側面入口から通路を左に折れて20m位進むと
1階メインホールへ出る自動ドアがあった。
そこを出て、1階メインホールの大きな
正面入口の横にレセプションの長いカウンター
がある。
そのメインホールの天井に蜘蛛のような形の
3メートル程の大型のものが貼り付いていた。
ダリンと感応通話が出来なくなった事で、
ゴンザは1階から2階へ移動し少し焦っていた。
(ダリンに何が・・・まさかあの女が・・・)
もう一体の外のキメラの存在も感知できない
事で、サボりに行った訳ではない事が確信
出来ていた。
その時、建物の外からあの女が侵入して来る
のが判った。
建物内のもう一体のキメラに指示を飛ばす。
(お前、1階の女を捕まえてこい。
抗うなら殺ってしまっていいゾ。)
(キィィィィ!)
それは喜びの波動だった。
◇◇◇
(急がないとお姉さまとの約束の時間が・・・)
「・・・1階のヤツはパリピに任せちゃうか。」
プロテノールは廊下を抜け、自動ドアの
電源を切って手動でゆっくりと開けていった。
大きなエネルギー反応が、メインホールの天井を
ゆっくりと移動するのを感知していた。
プロテノールは何かをつぶやき始めた。
「天別神、高御産巣日神、神産巣日神、天の
中心にあられし三大神よ天地の理をもって
顕現されたまへ・・・・
ヘヴンアンドアース、スペースカーズ!」
メインホールのフロアに直径10メートルを
越える大型の魔法陣が現れた。
それと対応するかのように、天井にも大型の
魔法陣が現れる。
プロテノールが使える第4位階の高位魔術
の一つだ。
天井に張り付いていた蜘蛛のキメラは床に
落ちてきて、身動き一つ出来ないでいる。
また分子雲になる事も出来ない様だ。
「キィィィィキィィィィキィィィィ!」
断末魔の声を上げ、3メートル程の蜘蛛の形
が徐々に縮まり、50㎝程の深緑色の泥団子
の様になった。
数千億のキメラ細胞、一つ一つに呪いと呼ばれる
特殊効果が係り、その一つ一つが激痛を伴い、
死滅していったのだ。
団子は崩れ、泥の山の様なものが残った。
「・・・今回は土に還ったか・・・」
(次は普通に生まれてこいよ・・・)
プロテノールは思い出したかのように、
カウンター内の電子パネルを叩き始める。
◇◇◇
ゴンザは急に後ろに立つ気配に気づき、
前方へ跳躍し振り返る。
(俺が視えている・・・誰だ・・・)
タイル張りの地の感触が土の感触に変わる。
気が付くと周りは薄暗い平屋で地面には
小石や砂ばかりだ。
空にはいつもより少し小さな下弦の月が見える。
10メートルほどの先に黒い長髪を結った
ジパングの着物を着た女が立っている。
目だけが、らんらんと赤く輝いている。
「何だ、お前!空間転移など、恐れると思うか!
他国に飛んだか!俺にはまったく問題ないぞ!」
ゴンザは直ぐに分子雲となって変体し、こいつを
片付けてからゆっくりと帰ろうと思っている。
「あなたにはあれが、いつもの月に
見えるの?
だから下っ端のままなんじゃない?」
ゴンザは何故か、少し息苦しくなってきた。
視界が徐々に狭まってくる。
「・・・お前、ここは何処だ・・・うっ・・・
まさか、こんな事が・・・化け物め・・・
あ・ず・さ・・・・・・」
瞬間、ゴンザは数千億の分子となり、散って
行った。
「最後に女の名前を言うとか・・・どゆこと!
らしくな~い!」
(やっぱり空気がないと生きられないわよね!
化け物って、あなた!)
マリアは又、図書館の側面の入口近くへ
転移して、何事も無かったようにプロテノール
を追いかけた。
「パリピー!」
メインホールへ入る自動ドアの半開きの隙間
から、大声でプロテノールを呼ぶ。
瞬間、全フロアの照明が点いた。
「鴨野様!まだ危のうございます!」
走ってきた彼女は本当に心配そうに話す。
「パリピー、私もう約束の時間なの、
帰るから、あとよろしくね!」
プロテノールは一瞬、間の抜けた顔になった
が瞬間、出来る女の顔に戻り、
「・・・行ってらっやいませ、鴨野様。」
少し声が低くなっている。
ジッとマリアを見送るプロテノールだった。
◇◇◇
鬼の面の男と対峙している梓は、ゴンザから
預かる対の量子が滅するのが判った。
(・・・ゴンザが殺られた?・・・)
有難うございました。
続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。
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