第三十八章 ---キメラ17号--- (4)
カウンターのバーテンダーが、映像をポーズ
したかように動きを止める。
「・・・どうしたの?」
彼女の座る、何の気配も無い少し後方から、
「お主の相手は、某がしんぜよう・・・」
低く静かな声が聞こえる・・・
梓は、ゆっくりとスツールごと回って
振り返ると、短い赤いローブから覗く太腿に、
ワザと目が行くように、右足を少しだけ高く
あげて足を組んで、その男と正対する。
「おなごは好きかぇ・・・・・」
( 黒蝶【黒ちゃん】 )
そこには、クレ染めと呼ばれる濃紺色の
忍装束の出で立ちで、黒い鬼の面を
被った者が、3メートル程の距離に、
気配無く対峙していた。
梓は、上から下へゆっくり視線を
移していき、又 下から上へ移す。
( 梓 )
服の上からでも判る、胸板が厚く盛り
上った大胸筋。
引き締まった腹筋から下半身に
かけては、太いが締まった尻や腿から、
脹脛の腓腹筋、ヒラメ筋はまた
細く引き締まっている。
身長は2m位はあろうか、彼女から
みても密度の濃い圧迫感があった。
肩口から左右に覗く2本の柄と四角い鍔。
(どの様に鍛えれば、このような筋肉が
付くのか・・身体を見てみたい・・・)
(面を盗って・・・・あ・あ・あ・・・
きっと眉目秀麗に違いない!)
梓は知らず知らずのうちにスツールを
降りて、男との距離を縮め立っていた。
「某が、お主らザコの前に現るるは、
まず無いと知れ・・・」
男はその場を動かずに、静かに落ち着いた
低い声で言い放った。
「ホォーホホホ、ホォーホホホ!・・・
貴方、面白いわね・・私を怒らせたら、
この国が亡ぶわよ。」
「そら恐ろしい事でござるな・・・」
バシュ!音よりも速く、彼女の口から
白いドロドロした液体のような物が、
正対する男に向けて大量に飛ぶ。
瞬間、黒い鬼の面をした男は、太くて
白い網に全身が絡めとられ、きつく
縛りあげられていた。
「あらあら・・・簡単に捕まっちゃうのね、
もう少し楽しめると思ったのに・・・
物凄く残念だわ・・・
先に下を見て来るから、お楽しみは・・・
あ・と・で・ネ。」
(この男、ほんとに私の奴隷にしよう
かしら・・・)
梓は男に背を向け、バーの出入口に向かう。
バリバリバリバリバリバリ!!
梓の後方で太く大きな破擦音がした。
「某がお相手致すと申したはずだが・・・」
梓が振り向くと、拘束したはずの
白い太い網は、男から全て破れ落ち、
彼は無我自然体で立っている。
「貴方・・・あのアロンアロザメンの
強度は数万トンの張力に耐えると、
あの人は言っていたのに・・・」
(ねぇ鬼さんどうやったの?知りたい・・・)
また、梓は鬼の男の方に少し引き返し、
「・・・貴方、名前は?・・・・・」
黒い鬼の面の男は、質問を無視して
沈黙を守っていたが、
「主ら化成体は、番号で呼ばれている
らしいな・・・」
感情を乱すような下劣な言葉を吐いてみる。
「貴方ね!・・・私は梓っていうの、
ネームドだから覚えておいてね。」
彼女から少し怒りの波動を感じたが、
それは大きいものではない。
「・・・私はね、死体からでなく・・・
量子間結合から培養が始まり、
あの人のDNAを貰い、丁寧に人造
された、あの人の子ともいえる・・・
生物学的には人間より人間らしい、
超越者なの。」
「・・・忍びない・・・・・・」
鬼の面を付けた男は、一言悲しげに呟いた。
「・・・貴方、私を舐めてると、痛い
目に合うわよ!」
瞬間、彼女の手が槍のように尖って、
音速を越える速さで、鬼の男を捕えたかに
見えた。
黒い鬼の面を付けた男は、普通に手を
あげて飛んできた尖った手を握った。
「・・・あぁ・・・貴方・・・」
男が手を放し、延びた手が帰っていく。
元々、彼の身体を外した威嚇攻撃だった。
「本気で某と戦う気はあるのか・・・」
バババババババババババ・・・
カウンターで固まっていたバーテンダー
が、MP7A2と呼ばれるサブマシンガンを
取り出し、鬼の面を付けた忍装束の男に
向かって撃ちまくり始めた。
4.6mm×30mmという小さな弾丸でも、
小型ダムダム弾と呼ばれる、当たった
衝撃で爆発を起こす弾丸が使われており、
鬼の男の身体の正面の至る所で、火薬に
よる小爆発が起こっていた。
バーテンダーは20発のダムダム弾入りの
マガジンを、何と2秒で打ち切った。
流れる様な次のマガジンに差し替える
アクションの途中で・・・・
◇◇◇
「マリ・・・いえ・・・鴨野様~!」
プロテノールに見つかってしまった。
国立図書館の正門近くの東屋辺りから
小走りに駆け寄ってきた。
「鴨野様、綺麗な浴衣を御召しに
なられまして、後光が差したようで
遠くからでも判りました・・・
ご挨拶が遅れ、申し訳ございません。」
丁寧にお辞儀をしたまま、頭を上げない。
(マリア 着物)
「パリピー、頭を上げて。どうしたの。
また図書館に用があるの?」
「実は、先日お二人が帰られてから、
建物内に並々ならぬ気配を感じまして
から、それが気になって、今週休みに
なって時間が有りますので、偵察
がてら来てみたんです。」
(あぁ~困ったわ・・・この人 頑固
そうだし、どうしよう・・・
お姉さまとの約束の時間まで、もう
あんまり時間も無いわ・・・)
「鴨野様、私は建物内を確認しましたら
帰りますので・・・お約束があるよう
ですので、お先にここで失礼させて
頂きます。」
軽く会釈をして、東屋の方へ戻っていく。
「パリピ~、待って頂戴。貴女がそこ
まで言うなら、私も付き合ってあげる。
一人より二人の方が心強いでしょ。」
◇◇◇
有難うございました。
続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。
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