第三十四章 ---ブル博士--- (2)
2221年04月11日(水)20:00
国立大学図書館の三階の同じ会議室に3人は
集まった。
「パリピー、1週間くらい経かると思った
のに、優秀じゃん。」
マリアは会議室に入るなり、いつも通りの
挨拶だ。
けれど実は、マリアはプロテノールの為に、
この図書館に昨日、結界を施していた。
お姉さまは、学長に関わる件だと言うけど
犯罪者の組織にプロテノールが、狙われて
いるのかもしれないと思ったからだ。
その辺を考慮してか、アリスはマリアの
言葉使いにおいて、今日は取り敢えず
睨む事はしなかった。
20人掛けの会議用テーブルと前面の大型
量子ディスプレイの間の空間に、立ったまま
集まって、プロテノールがまず口を開く。
「マリア・・・いえ鴨野様、この光メモリー
デバイスに、復元したデータを入れて
保管しております。
関連した別の調べもございまして、
少し時間が掛かった次第です。」
小指程の100ペタバイトのデータが入る
小型メモリーを、音も無くテーブルの
上に置く。
出来る女だけが自然と出せる、プロテノール
の所作だった。
「パリピー、一緒に観る?」
「・・・いえ、復活させる際に、
膨大な量の記号データしか無い事が
判りました・・・
私は上位物理学に疎く、観ても判らない
でしょう・・・」
「じゃあ、遠慮なく持ち帰らせてもらう
わね。あとここのデータセンターの
後処理はやったの?」
「この図書館は私の名で借りてますので、
何かを調べた程度の事は、判明しますが
何を調べたかは、判らないはずです。」
マリアはアリスの方を見る。
アリスはゆっくり頷くと、テーブルに
置かれた光メモリーデバイスを手に取って
ゆっくり話す。
「鴨野様、私の知り合いの方にM理論の
識者がおります。
信用できる方なので、お調べして
頂いてよろしいでしょうか。」
「そう、た、頼むわね・・・
じゃあ帰るとしますか・・・」
マリアは少し、たどたどしくなる。
急にプロテノールが話し出す。
「昨日、ここでお別れしてから、直ぐ
下の階で、何か争うような物音が
しました。聞き耳を立ててましたが、
放置できないので、行ってみますと、
2階には、誰も居なかったんです。」
「パリピーは、量子意識体(幽霊)とか
怖がるタイプなんだぁ。」
「・・・いえ。あと今日ここに来ますと、
建物に何か結界のようなものが張って
ありまして、私は入ってから気付いた
のですが、大学は今週いっぱい休校
ですし、大学で無いとしたら・・・」
「パリピィ、私たちもさっき、入るまで
気付かなかったわ。
きっと建物の自動制御の類いよ・・・
睡眠不足で脅迫観念が出てるんじゃ
ないかしら。
今日はゆっくりと寝なさい。」
マリアの対応にも耳を貸さずに続ける・・
「・・・そして防犯カメラのセキュリティ
を解いて、昨日の物音の正体を探り
ました・・・」
アリスがマリアを少し怖い目で見る。
「・・・そこの時間だけ約7分間ほど、
映像がループしているんです!」
少し大きい声に、マリアはビクッとする。
「・・・パリピィ。
それ、本当にあった怖い話ね・・・
貴女、きっと講談師の才能あるわね。」
マリアはプロテノールの話を、必死で
躱そうとした。
「・・・鴨野様、このデータは復活させ
ない方が良かったのではないでしょうか。
何か、おかしな組織が関わっている気が
してなりません。」
プロテノールは真剣に話す。
それを被せ気味にマリアは、
「心配なら、理事長に話して護衛を付けて
もらいなさい。」
「・・・いえ、自分の身は自分で護れます。
私は、鴨野様のご心配をしているのです。」
マリアを手で制止して、アリスが一歩前に
出る。
「プロテノール様、私の方で家の者に伝えて
鴨野様に護衛を付けて頂きます。
どうか、ご心配なされませんように。」
プロテノールに無言の時間が流れた。
空かさずマリアは、
「パリピー、ここの電気消してね。
怖いし三人で帰りましょう。」
この話に取り敢えずの終止符を打った。
◇◇◇
2221年04月12日(木)21:00
シックスシーズンズホテルの50階には、一室
900平方メートルを超える超豪華スイートが
4室だけ存在する。
サウザンドペントハウスと呼ばれており、
縦30m横30mの区画が1スイートルームと
なり、50階フロアーの各角を4室が占めた。
部屋数は寝室2室、ゲストルーム4室、
大きなリビング1室、ダイニング2室、
キッチンも大小2ヶ所、サウナルーム、
大浴室兼プール、ジャグジー、5ヶ所の
シャワールームなど。
それぞれの室内には、贅沢な家具が
配置され、部屋に合わせた美しい照明、
シャンデリア、ふかふかの絨毯、
リビング、ダイニングは白い大理石の
床に高級食卓大型テーブル。
花瓶や絵画も含め、その部屋に合わせた
調度品が飾られている。
室内には少し濃いムスクの甘い香りが
漂っていた。
また部屋専用のコンシェルジュサービス
があり、1室に付き2名の男性給仕、
4名の侍女が仕えていた。
希望により、料理人が部屋で料理をしたり、
寿司を握ったりするルームサービスがあり、
ゲストの要望に迅速に対応できる体制が
整っていた。
この5000A号室を我が家のように、
長期滞在中なのが、通称、ブル博士と
呼ばれる人物だ。
彼の研究開発の為に、様々な企業や機関が
スポンサーとなっている為、ゴージャスな
暮らしが出来ている、との噂だった。
白髪頭が濡れ、赤いバスローブを着た彼は、
リビングのソファーにゆったりと腰掛け、
黒服の男、2名から報告を受けていた。
報告に来た彼らは黄雅大国の嫡男の一人、
ムーチェイン王に使える有能な男たちだ。
「ブル博士、詳細な部分の我々の
調査データです。」
光メモリーデバイスをローテーブルに置く。
ブル博士はロゼが三分の一程入った、
ワイングラスを左手に持ち替え、
「ご苦労だった・・・ムーチェイン王に
よろしくとお伝え下さい。」
◇◇◇
ブル博士は黒服2名が退室した後、
誰もいない食卓テーブルに向って、
「目新しい所見は無かったな・・・」
「・・・フフフ。
仕方ないんじゃなくて。」
大きな食卓テーブルの上から、淫靡な
女性の声が聞こえた。
ブル博士と同じ赤のバスローブでも、裾が
膝上までのものを着た女性が、現れた。
肩を越える栗色のストレートの髪は濡れ、
雫をテーブルの上に垂らしている。
鼻筋が通って、顎も人工的に尖った感じの
色白で小柄なジパング人に見える。
透明に成りえていたのは、光学迷彩と
言うより、霊法の類いだろうか。
食卓テーブルの上で、科を作り寝沿べ
っている。
彼女の両足は、ブル博士の方に向けていて、
ブル博士も好色な目を光らせている。
博士は、思い直したように
その女性に告げる。
「・・・死んだ十二号はマーダーでな、
個人的には好きには、なれなんだ。
しかし、奴を自爆させた奴を放置する
訳にはいかん・・・」
女性はテーブルから起き上がり、博士に
向かってテーブル上を滑るようにして、
端まで来て両足をだらりと揃えて下ろす。
博士の目が自分の足を追いかけるのが、
楽しいような淫靡な笑みを浮かべ、
話し出す。
「・・・博士。馬鹿な子ほど可愛いと
言うわ・・・十二号に最後に与えた
指令先に行った方が良い訳ね。」
「ああ。流石は梓よ。ではお主に任せる
とするか・・・」
「・・・急がなくてもいいでしょう・・・」
壁に映る二人の影が重なる・・・
◇◇◇
有難うございました。
続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。
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