第三十三章 ---ブル博士--- (1)
第三十三章 ---ブル博士--- (1)
2221年04月11日(水)21:00
ジパング州には3つの統合型リゾート
施設が存在する。
そのそれぞれにスポンサー国、
スポンサー企業も存在する。
ジパング州南西部、琉球列島郡(旧沖縄)
の本島にある、UBE(バドー首長国連邦)
のパームアイランドをリスペクトしたという
IRで、施設名を黄雅リゾートといった。
IR:統合型リゾート施設の事
勿論ここのスポンサーは黄雅大国である。
戦後処理の流れから、このIRから出る利益
の80%を取り、残り20%の内から
5%を地元の地方税、15%をユニタリカへの
国税として収めていた。
売上は二重帳簿が存在し、もちろん
表帳簿の話である事は言うまでも無い。
黄雅リゾートは長い河岸線を埋め立てし、
衛星画像で見るとUBAのパームアイランド
というより、ヒカゲヘゴと呼ばれる巨大な
シダの葉のような形に見える。
細かい繊維のような葉先の部分には、
2階建ての白いスイートコテージが
約600戸建設され、シダの中央の
茎の部分には、縦長の全長1200m
にも及ぶ、7階建ての商業施設があり、
地下の4階部分が大型のカジノ施設に
なっていた。
リゾートの敷地で、大きなシダの葉を模した
先端部分には、シックスシーズンズという
名の黄雅大国内では有名な、カジノホテル
があり、その地下にもカジノは存在した。
シックスシーズンズホテルは50階建て
で、通常の宿泊施設、3つのラウンジ、
2つの大型スパ、3つの室内プール、
ホテル専用レストランを除いても、
20軒を超える飲食店が入っていた。
このホテルの地下2階にある六季カジノも、
繁盛していて、200台余りのテーブルが
あり、ここだけで500台を超える各種スロット
マシンが置かれていた。
ドレスコードは厳しくなく、ただキャッシュ
カード関連以外の手荷物や、電子機器の
持ち込みは禁止されている。
また、カジノフロアー全体がマイクロ波
を遮断する構造となっているのと、勿論、
全てオフラインの為、電子脳や量子脳への
外部からの直接連絡は取れない仕組みに
なっていた。
ここではユニタリカドル、香港ドル、
黄雅元、ディルハム、ユーロ、の5種類
の貨幣をチップに換えることができる。
ジパング内のIRで円が使えないのは、
この黄雅リゾートだけだ。
旧倭の国は、敗戦国の扱いとなり、
円は大暴落を起こし、一時紙切れ同然
となった。
その後ユニタリカの55番目の州となった
事で為替レートにおいて、円は復活し、
固定レートで1ユニタリカドル500円
となった。
本日時点での他通貨との為替レートは、
1HK$(香港ドル)= 約40円
1黄雅元(黄雅通貨)= 約40円などだ。
カジノではテーブルによって、最低掛金が
設けられており、六季カジノは100黄雅元
(約4000円)が最低チップとなっていた。
◇◇◇
「本当にチーターでは無いのか・・・」
監視モニターを観る数人の警備員が
口々に異を唱える。
「マイクロ波ジャマーや、類する電磁波
は全く感知できません!」
200台を超えるモニターが並ぶ、都市の
緊急災害対策センターに匹敵する規模の
監視室に、強化魔法壁を破り転移により
一人の男が入口近くに現れた。
身長は2mを少し超える位か、山吹色の
ワンピースの胸の部分に金色の円形の龍の
紋様が施されている。
黒い太めのベルトの左右には、ホルスター
に収められた2丁の銃が覗く。
監視室全員が戦闘態勢に入るも、室長が
手を挙げ、中止のサインを出した。
監視室の入り口付近に転移して来た
彼の名は黄・沐辰、
黄雅大国の創始、黄一族の軍部の将軍の一人だ。
現在、黄雅大国は3人の指導者による
トロイカ体制での統治が成されている。
3人が軍務宰相、党総書記、国務主席、
それぞれが違う最高位の役職に就き、
牽制し合っていた。
また、それぞれに十数人の子供がおり、
男性を「王」女性を「公主」と呼んだ。
一般庶民は、彼ら彼女らの事を
【精英】と呼んだ。
「・・・ムーチェン王!」
室長が叫ぶと、監視員全員が両手を前に出し
膝馬づく。
「どうして王、自らいらっしゃったの
ですか?」
室長の言葉には答えず、正面の大型モニター
をジッと見つめている。
映画館の様に入口から下り坂で椅子やデスク
が配置され、どの席からも正面のモニターが
見やすいように設計されていた。
正面の大型量子モニターには、
例の白髪頭で白髭の高齢の男と、カードを
操るアンドロイドのディーラーが天井に
付いた監視カメラによって、映し出されていた。
このカジノ専用のアンドロイドは、
カジノロイドと呼ばれ、そのスペックは
人間の100倍の操作反応速度を持つ。
六季カジノ最高位のこのディーラーに、
交代してしばらく経つ。
◇◇◇
六季カジノ内は、フロア内に流れる
購買意欲をそそるシンセサイザーによる
軽やかな音楽が、賑やかなスロットマシンの
電子音により、ほぼ聞こえない。
このスロットマシンの音は、カジノを
出てからも耳に残り続ける程だ。
その中でもハッキリ聞こえる程の大きな
歓声が奥からあがった。
フロアー中ほどに位置する場所に、
スリーカードと呼ばれるポーカーゲーム
のテーブルがあった。
その客サイドに、人だかりが出来ており、
そこから大きな歓声があがっていた。
アンドロイドのディーラー相手に、
白髪の老人の手札はAのスリーカードを
出していたからだ。
多くのチップを受け取りながら、
「・・・私に客が来たようだ・・・
この辺で辞めるとしようか・・・」
そう言うと、徐に立ち上がり、天井の
監視カメラを見上げる。
後ろを取り囲む野次馬たちは、本当に
心からの賛辞を込め、拍手した。
そこに、恰幅の良いタキシードを着た、
黒服が現われた。
「・・・こちらにどうぞ・・・」
黒服に促されるように、裏口の方に
二人は消えていった。
周りでは、様々なひそひそ話が聞こえる。
やはり勝ち過ぎると、
奥へ連れて行かれるのだな・・・
ナンマンダブナンマンダブ・・・
無事に帰って来て欲しい・・・etc.
◇◇◇
白髪の老人は、20人規模の会議室に
通され奥に座らされた。
畏まった美人が茶を前のテーブルに置く。
黒服と美人が会議室を出ていくと、
無人になり、少しして、ファン・ムーチェン
が室長を連れ入ってきた。
座っていた老人も両手を前に出し、
一礼する。
するとファンムーチェンは片膝を付き、
「ブル博士に、ご挨拶を・・・」
いきなりのムーチェン王の行動に、
監視室室長も、大きく遅れて土下座した。
白髪の老人、ブル博士が手で立つように
促し、ムーチェン王はゆっくりと立ち
上がって、向かいの椅子に座る。
一呼吸おいて、ムーチェン王が話し出す。
「・・・博士、あれが超位魔法と呼ばれる
ものの一つですか?」
畏まってムーチェン王は虚栄心をくすぐる
質問をする。
「超物理魔法学において、超位魔法と
いわれる物は、もっともっと上位の物で
基本となる物理法則を書き換える事で
起きる事象と言われておる・・・
それに比べ、わしの使った霊法は、
ペテンに属する底辺の物よ。」
博士はニヤリと笑い、細い目の奥が光った。
「今回、父であるファン・テドロ軍務宰相
よりブル博士を歓待するように、仰せ
つかっております。」
ムーチェン王は丁寧に話す。そして、
監視室室長に会議室から出る様に促し、
直ぐに室長は立ち上がると、そそくさと
退室した。
博士は左手に持った湯呑を、ゆっくりと
テーブルに戻しながら、
「ムーチェン殿、お父上への相談は、
他でもない、魔法武器貸与の
お願いじゃ。」
少し間をおいて、ムーチェン王が話す。
「シャドウスカリー第五席、ブル博士
程のお方に、お渡し出来る程の武器は
わが国には存在しないと思いますが・・・」
身構える風なニュアンスになる。
それを察知してか、博士は釈明を込めて
「ムーチェン殿、例の超人たちを貸せと
言ってる訳ではないのだ。
・・・誤解の無きよう・・・」
つづけて博士が語気を弱めて話す。
「卿にだから話すが、実は古都にある
私の基地の一つが襲撃され、完全に
消滅したのじゃ・・・そこはエリア
唯一の武器庫であったが、それを
消されたのじゃ。」
ムーチェン王は身を乗り出し、興味津々
の様子。
「ほう。相手は誰です?
ユニタリカの即応部隊ですか?」
ブル博士は考え込み、
「実は、全く不明なのじゃよ・・・
まだ完全な現場検証は出来とらんが、
相当な魔法師である事は、間違いない
と睨んでおる。」
ムーチェン王は、また身構えて
「タイチーグァイラ!(おかし過ぎる!)
博士は、我が国の超人を、犯人と
お間違えになっては、おりませんか。」
ブル博士は、顔を左右に振り、
「私の方から、そなたらに連絡を取った
のだ・・・そなたらを疑うはず無かろう。
どちらかと言えば、当時ユニタリカの
特殊部隊が近隣を捜査しておったのだ。
しかし・・・証拠は何も無い・・・」
ムーチェン王は理解が早く
「解かりました。現場検証に役立つ
魔道具と魔法武器を提供しましょう。
当時の衛星画像もあれば、提供しま
しょう。」
◇◇◇
有難うございました。
続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。
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