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第二十九章 ---早起きの午後--- ヨーコ・L・ミナミ(3)

挿絵(By みてみん)


警戒しながら地下25階のフロアに降りる。

先頭を千葉、そして私、最後にザーネが続く。


このフロアも、熱に強い黒曜石で出来ており

奥行き7メートルの通路が左に20m程続く。


突き当りに施設の操作室への入口のスライド

ドアが開いているのが見える。


床以外の壁と天井には[ライト]の基礎魔法

で黒曜石の表面をコーティングしているせい

で、黒い世界に淡く通路全体が輝いていて、

現実とは対照的にロマンティックで、

スタイリッシュな雰囲気を醸し出していた。


私たちのバックパックに入っている武器は、

DMATの規定により、サバイバル電磁ナイフ

とグロック20GEN7という、ゴム弾を

ガスで飛ばすピストルの2つだ。


但し、千葉は刀剣武器魔法、ザーネは総合

霊法の有段者で、それぞれが魔霊法の威力

を底上げする魔道具の携帯が許されていた。


「・・・ザーネ。」


「はっ、量子フィールド展開。」


千葉が立ち止まり、私の方へ一歩後退する。

私はザーネの横に並び、三角形の陣形をとる。


ザーネを中心とした半径、高さ3メートル程の

ドーム型のバリアが展開される。


倒れている隊員たちの怪我の程度を看たくて、

指示を出す。


「一番近い、シーバーフの隊員へ。

 ・・・ザーネ、そのまま移動して。」


ザーネは、霊法術式の中でも最高の強度を

誇る量子フィールドが使える。


次元断絶術には、唯一(ゆいいつ)劣るものの、

電磁気力、分子間力を無効化する、

地球上の生物(人間)には、到達不可能と

言われた霊力第4位階と呼ばれる、

軍にも数人しか存在しない、最上級霊法の

使い手だった。


具体的には熱も冷気も無効化し、分子振動に

影響を与える電磁波攻撃、いわゆるレンチン

攻撃までも無効化する、対魔法防壁だった。


私は、うつ伏せに倒れている隊員をバリアで

(おお)い、腕に巻かれたパネルを操作して、

防護服の設定を解除した。


白銀(しろがね)迷彩色(めいさいしょく)の防護服の背中が縦に割れて、

中に着ている黒い防弾スーツがむき出しになる。


その防弾スーツにも10㎝程の穴が開き、肉体を

貫いて床が覗く状態だった。血液は凝固していて

全く血は出ていない。


既に事切れており、高熱線による創傷(そうしょう)である事は

一目瞭然(いちもくりょうぜん)だった。


バリアの外は1000度以上あるので、防護服の

チャックを閉じて腕のパネルを操作してまた

背中を密閉(みっぺい)させた。後で回収してもらおう。


ドドドドーーーン!!!


お腹に響く、重低音の大きなバスドラムの様な

爆発音が核融合炉(かくゆうごうろ)の操作室内から聴こえた。


◇◇◇


千葉を先頭に三角の陣形で、開いたままの

スライドドアから慎重に入る。


目の前に黒曜石(こくようせき)の壁があり、小さめの黒曜石で

出来たスライド式の自動ドアがあった。


千葉とザーネに警戒するように手信号を出し、

二人は頷く。


解除コードは(もら)っていたので、腕のパネルを

ドアの横のパネルにかざした。


・・・ヴィィィwwwーーン


何か重く、つっかえた物を押しながら開く

ような感じでゆっくりと少しづつ開く。


ボォォォォーーーー!!!


開いた隙間からおそろしい勢いで、熱風が

吹き出し始めた。


ゴーグルに映る外気カウンターは6000度

を超えた。


量子フィールドバリアのお陰でまだ、

自分たちの防護服の周りは1000度

前後を保っていた。


(これは核融合炉が爆発した訳じゃ、

 ないわね・・・・

 ・・・ただ、この状態が続けばいずれ・・・)


3人は黒曜石の壁に隠れて、自動スライド

ドアがもう少し開くのを待つ。


2mは開いた。手信号で進む合図を出す。


(かれこれ15分は経つ、マクガイヤ医師の事だ

 他のDMAT(ディーマット)職員と共に、もうとっくに戻った

 事だろう・・・)


少し安心して、前を向く。


操作中枢室内は高温で白く輝き、80m程の

奥行きがあって、右側の壁に操作パネルなどが

並ぶ。


操作(そうさ)中枢室(ちゅうすうしつ)を三角陣形でゆっくり奥へと進む。

白い光と水蒸気で視界は10m程だ。


操作室の真ん中程に差し掛かったところで、

機械操作パネルのうち、いくつかのパネルで

[スチームエクスプロージョン]の赤い

文字が点滅していた。


(・・・水蒸気爆発だったんだわ!)


私は、このような状況でも、少し安堵(あんど)した。


・・・その刹那(せつな)!更に奥に何かの気配がした!

っと同時に、赤黒い槍の様なものが音速を

越える速度で伸びてきた。


ドシュ!


反射神経も神業と言われる、千葉の腹を一瞬で

突き破って、戻って行く。


千葉は膝から崩れ落ち、前に突っ伏した。


「熱光線じゃない!・・・アイアンシールド!」


私は声を出してアイアンシールドを前方に

半円形に展開して、千葉を仰向けに起こし、

ザーネを見る。


(物理防御も、とっておくべきだった・・・)


後悔してもしきれない・・・


「・・・アドバンスドヒール!!!」


ザーネが手をかざし、傷がみるみる塞がっていく。


・・・その刹那、アイアンシールドを穿(うが)って、

槍のような物がザーネの右胸を貫いた!


(何が起こったの?1万度の温度でも10分

 以上耐えることができるはず・・・)


千葉に重なるようにザーネも倒れた瞬間、

量子フィールドが消え、熱風が入り込み、

防護服がジリジリと音を立てる。


アイアンシールドに空いた穴から見えるのは、

人型で白く光り輝き、熱エネルギーを放つ

化け物。


(涙で目が(かす)む。大切な友人でもあった。

 あれが魔力暴走を起こした魔法師なの?

 まず、温度を下げて・・・見てなさい!)


ゴオンッ!!


アイアンシールドを突き破り、私を刺しに

きた攻撃をギリギリでかわして、戻るところ

に電磁ナイフを突き立てた。


ダイヤモンドすら切り裂く電磁振動ナイフに

よって触手は一部分だが、2枚に下ろされた。


「・・・アイシクルディザスター!」


矢継ぎ早に、上位冷気魔法を化け物めがけ

放った。


(これで、少しでも温度が下がれば・・・)


ギギギギギギギーーー!


聞いた事も無い、声? 音?


ボァーーーーー!


化け物は少し大きくなり、白い光が水色に

変化し、吹き荒れる熱風は1万度を超えた。


(・・・えぇ!どういう事!何が・・・)


ゴーグルに映し出される外気温度が1万度

を越えた。


そろそろ防護服の耐熱が限界を迎える

だろう・・・


右腕の光子バッテリー手術の後・・・

サイボーグ研究所での博士の話を思い出した。


(・・・成功確率は30%前後です・・・

 右手に収められた(かく)光合成(こうごうせい)バッテリーの

 エネルギーを最大限に使う蘇生(そせい)魔法です・・・

 ・・ただ、亡くなってまだ数時間程度で

 細胞に特に大きな損傷の無い、近くにいる

 人間であれば、ほぼ蘇生可能です・・・

 ・・・ただ触媒(しょくばい)は術者の命になります。)


右手、左手、腹部、3か所が独特の光を

放ち始めた。


(・・・懸けるわ!この命!・・・そして奴も倒す!

 ・・・三重霊法!)


「アイシクルコンポジ・リザレクション!!」


(・・・・・・・・・・・・・・・・)


ピキーーーーン!!


(すべての魔法が強制解除された!そんな・・・)


もう、立っていられる力も無かった。

世界が青く、暑く、全身が痛く、

手足の先から燃えているのが判った・・・


目を閉じると、あの時の光景が蘇った。


・・・時間の止まった世界・・・

綺麗な金色の長い髪、後ろ姿だけど

清廉(せいれん)な立ち姿・・・


(・・・・・大切になさい・・・・)


心に響き渡った声・・・・


(あれは、天界からの使者の声だったの?

 ・・・・・・・・・もう・・・・)


「・・・あんた、バカなの!?」


女性の大きな(けな)し声で、我に返る。

自分が練り上げた3種の霊法が解除され、

観た事も無い、楕円形の透明のカプセルに

入っていた。


透明な合成ゴムのような手触り。

少し宙に浮いている。


現状が見えてきた。目の前に口の悪い

黒髪の女性の後ろ姿があって、

その対面に、こちらを向いてあの化け物が

対峙していた。


青白く光り輝いている。

その中から何本もの触手が、

目で追えない速さで、彼女に向け

延びては引き、伸びては引きしている。


ピシィーパシィー・・・


音速を越えているからだろう、目で見るのに比べ

遅れて(むち)のしなるような音が聞こえる。


後ろ姿で見えないが、彼女は何事も無いような

感じだ。


「・・・アイスシャイニーレイ!」


彼女は普通に、食堂でデザートを頼むように

言い放った。


「貴女、そんな初級魔法!何を考え・・・」


その刹那(せつな)、数万度あった室内が一気に常温に戻る。


膨張した空気の代わりに、二酸化炭素が満た

され、圧縮されるはずの室内に、

酸素は戻ってこない。


化け物は完全に動きを止め、前のめりに

グシャ、っと音を立て倒れた。


そして、水を少し含んだ砂のように崩れた。


今まで、生きていたとは思えない。

本当に砂浜で造っていた人形が、

失敗して倒れ崩れたかのようだ。


私は以前、軍の機密資料室で観た、

「仮定上の仮定の理論上にある魔霊法」

という論文が好きで、読み漁っていた。

その中の一つを思い出す・・・


「パーティクル・ディレイ・・・でしょう?」


自然と言葉が出てしてしまっていた。


「セイントの超位魔法ね・・・

 私には無理に決まってるでしょ!!

 失礼ね!・・・友達は助けたわよ!

 ・・・貴女ね、前回、誰に助けて貰った

 か解ってる?!・・・んっ?!

 知ってるなら貴女が使えば良かったのよ。

 その、何とかキューティクル!」


ずけずけした物言いに、冷静に考えられずに

いたが、身体(からだ)に痛みがない事に気付く。


私の身体が完全回復していた。


ひりひりを通り越してギスギスして

気絶しそうな程の痛みに耐えていたのに。


手足も治っていた・・・


防護服の袖や足の所々は燃えて無くなって

いたが、黒焦げの内部防護スーツの上から

でも、手足が無事なのがハッキリと判った。


重なって倒れていた、下になった千葉が

頭を振って、ザーネを抱えて上体を起こす。


私が次に目線を戻すと、最初から居なかった

みたいに、口の悪い女の姿は消えていた。


・・・ホントに存在した?


(いや・・・あの時の事、今回の事!

 夢じゃなかったのね。・・・本当に

 ・・・ありがとうございました・・・)


とめどなく涙が止まらなかった。


☆☆☆彡


有難うございました。

続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。

関心を持って下さった皆様。

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とても励みになります。

ブックマークも出来る方は、

どうぞ宜しくお願い致します。(りん)

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