第二十三章 ---暗殺者の影--- (1)
時を遡ること、5時間程前、
4月9日(月)-AM2:00-
古都西方に位置する大枝山の幾つもある
山道の頂上付近の小径から少し外れた場所。
真っ暗なその木々の隙間に、
月明りだけが時々射すことで地面が見える。
幹の直径が1メートルを超える杉の木の
8メートル程の高さの大きめの枝に、
気配を消して、その男は佇んでいた。
黒尽くめのステルスボディスーツを纏い、
背中に背負った、大型ライフルを音も無く
スッと構える。
大きめのその枝に、ゆっくりとした動きで、
うつ伏せになる。
現在付けている暗視ゴーグルを上にずらして、
銃に付いた大きなサーマルスコープを覗きこむ。
現在では軍でも競技用でしか見ない、遠距離に
鉄鋼弾を飛ばすタイプのライフル銃だ。
近接で使う通常のゴム弾丸を飛ばす銃は、
今だに警察や警備会社で広く利用されているが、
遠距離の射撃は、GPS補助のビーム兵器などに
うって変わっていた。
黒尽くめの者の持つ銃は、
外見上、マクラミンTAC100Kと酷似しており、
12.7×99mmという大型の弾丸を発射する。
ユニタリカなどのデモクラシー側の軍で昔、
使用されていた狙撃銃だ。
最長射撃距離4500メートル。
この距離になると、風速、大気の摩擦係数、
弾丸の自由落下計算だけでなく、
地球の自転からくるコリオリの力も
計算する必要がある。
現在、競技用における実弾長距離射撃は、
ビーム兵器同様に人工衛星からの補助が
連動しており、震えない限り、的を外す
ことは無い。
射撃競技は、構えてから打つまでの時間と、
弾丸が的に当たる位置において競われるのだ。
現在、個人用の暗視ゴーグルは第六世代
と言われており、無機物から各種有機物の出す
波長を捕え、形を具現化し昼のように映す。
具体的には一部のマイクロ波から、
衛星紫外線までを映し出す事に成功していた。
人間の裸眼にはこれらの波長の中間に位置する、
可視光という一部分しか判別できない。
黒尽くめの者は、大きな枝の上に
うつ伏せで暗視ゴーグルをずらしたまま、
それと同じ性能の、ライフルの上部に付いた
大きなサーマルスコープを覗き込んだ。
雲間の月明りに黒光りする
銃身が照らし出される。
マクラミンTAC100Kの銃身には、
梵字のような文字が隙間なく彫られていた。
ライフルの手前の、肩に当てるストックと
呼ばれる部分には、円形の魔法陣が
削り出されている。
黒尽くめの者が覗く、第六世代の
サーマルスコープから見えるのは、
ビルの中に居る一人の人間。
遮蔽物が有ろうが無かろうが、関係なく
距離を合わせると、セピア色に映し出された。
さらに、白っぽいスーツを着ている事や、
赤っぽいシャツに黒のネクタイ、
頭はオールバックにして髪は短く黒いなど、
ある程度までなら、外見も色も判別できる。
黒尽くめの者は呼吸を整え、
「・・・ふぅぅぅ」と静かに息を吐くと、
息を止め引き金を絞った。
銃身内を通過する弾丸にも紋様が彫られており、
その紋様が輝きを増す。
・・・・パシュ!
消音器により、静かに銃口から
青白い閃光と共に、放たれた弾丸は、
魔術の練り込まれたものだった。
速度も通常の弾丸より早く、初速900メートル
を越え、正確に神秘的な輝きを放ちながら、
空気を切り裂き、目標に向かって飛んだ。
約1.5秒後に高分子結晶のバリヤを貫通し、
ビルの外壁も貫通して、的を捕えた。
ボンッ!・・・
・・・ドサッ!
室内で首から上の無い一人の男が、
仰向けに倒れ痙攣する。
通常バリアを貫通するような攻撃が行われた場合、
大学の量子コンピューターが警報を発し、
PSGから
PPS本社、
関西州警本部、古都疾病災害対策センターにまで
一気に連絡が行き渡る手筈だ。
さらに今回、不思議な事に的に至るまでの、
建物の外壁や窓に一切の貫通痕が無かったのである。
誰にも気付かれない中、そうして夜が明け、
朝を迎える事となった・・・
◇◇◇
有難うございました。
続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。
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