第二十一章 ---ヘキサゴン--- 国家安全保障会議 (2)
ワトソン女史が力を入れる。
「ここです!」
赤いヘリがクワットロータータイプである事が、
辛うじて判る鮮明度にはなったが、大きさは
やはり手前の画面では1センチほどのままだ。
コマ送りで少し映像を流す。
「ヘリは、透明な卵型のシールドのようなものに
覆われています。そのヘリの上をご覧ください。
球形の透明な、シャボン玉のようなシールドが、
並んで2個あります・・・
皆様、正面の量子大型パネルをご覧ください。
もう一度、ヘリを含めこのシャボン玉を、
拡大します!・・・な、な、なんと、
この向かって右側の、シャボン内に黒髪の人型
のようなものが、入って立っているように
見えませんか。」
(アケミ ワトソン)
コマ送りで6コマ目に、このシャボンとヘリの
シールドが同時に消える。通常わずか0.2秒。
海軍のオリバー・ウィリアムス大将が口を挟む。
「・・・それがどうした、民間企業のヘリだし、
コンピュータバリアのバグだろう・・・
性能が低く、バリアの張り間違いではないか・・・
本当にヒューマノイド型のテロ兵器と言えるか?
被害状況は?
解析ソフトのバグもあるのではないか・・・
空気中のデブリか何かが
映り込んだとも考えられる・・・その両方か。」
次に禿散らかしたNSA局長が口を開く。
( NSA:ユニタリカ国家安全保障局の略)
「・・・以前、フライングヒューマノイドという
のが話題になってな。内々で調べたところ、
空気で膨らます女人型の人形に、ヘリウムガスを
入れて飛ばしていた、という事件がありましたな。」
NSA局長、ロック・ヘドバンが、舐める様に
ワトソン女史を見て、いやらしげな笑みを浮かべる。
ワトソン女史は鳥肌が立つのを覚え、
「現在における、報告は以上です!」
そそくさと、マーシャル国防長官の陰に隠れる。
次にオットハイマー司令長官(空軍大将)が
大声で命令する。
「ユニタリカ・スペース・フォース(USF:宇宙軍)
現状の報告をせよ。」
オットハイマーの後ろに立つ、3人の内の一人、
30代半ばに見える茶髪の角刈り男性で、
軍服を着用している。細マッチョ系だ。
「戦略軍中将ジェフリー・シャトナーです。
インテルサットから、提供のあった映像です。」
(インテルサット:地球全体をカバーする衛星
システム)
先ほどのジパング州のライブ映像と同じように、
手元のディスプレイと、前面の大型パネルには、
画面の下、三分の一に地球が映り、三分の二は
黒い宇宙空間が映し出されている。
シャトナー中将が口を開く。
「北緯34.709639、東経135.416336
海抜上空604324メートルの外気圏に、
突如 黒い物体が現れます。」
映像が一時停止する。
「ほぉー・・・」
「なんだぁ・・・あれは!」
「光学迷彩なのか!」
「宇宙と同じ色だ。発見が遅れたのだろう!」
その場のほぼ全員が口々に声を上げる。
画像がスローモーションで動き出す・・・
「軍事衛星かと思われますが、直径約20メートル、
楕円形の球体です。
下部より収束指向性の電磁波を放ったようです。
瞬間、機体が爆発して消えたように見えます。」
「・・・自爆したのか・・・被害状況は・・・
シャトナー中将、スペースフォースとしては
これは、他国からのテロという判断かね。」
マーシャル国防長官が独り言のように言うと、
シャトナー中将は畏まって、
「まだ、国籍も不明で現在も調査中であります!
現在のところ、被害は確認されておりません。
テロというより衛星の故障事故の可能性も・・・
本日、スペシャルコマンドの宇宙船が現場空域の
部品回収に当たります。
地上は明日になりますが、DHSの
サイエンスコンマンドが。」
(DHS:ユニタリカ国土安全保障省の略)
(USF:ユニタリカ・スペース・フォースの略)
「これ以上、本日は進展が無さそうだな・・・
DHS、USFなどの報告を待って、必要なら、
また集まるとするか・・・」
マーシャル国防長官が〆る。
半数以上の人間が、がやがやと会議場を出た後、
円卓でピコンピコンピコンと急にアラームが鳴り、
空席の一つに、人の形が像を結ぶ。
「マーシャル長官、遅れて済まない。」
アルベルト・ダイモス副大統領の登場だ。
「これはこれは、ダイモス閣下。外遊中に、
お呼び立てして申し訳なかった・・・
本日の会議は得るものも無く、終了しました。
会議の内容等は、空軍の方からお願いします。
それではまた後日、集まるかもしれませんが、
っという事で・・・それでは。」
少し迷惑そうに言葉を切って、マーシャルは会議場を後にした・・・
「何の会議だ・・・もう終わったのか・・・
オットハイマーも帰ったのか・・・
私は遊んでたわけではないぞ・・・
くそぉ、カルト企業のせいだ。」
ダイモス副大統領は、少し不貞腐れたように呟く。
オットハイマーの三人の腹心は残っており、
ダイモスと目が合い、三人が敬礼する。
三人はまたITSOへ注意を促す事や、
ジパング州に通信障害、電気障害が起きてないか
確認する事など、忙しく申し合わせをしている。
(ITSO:インテルサットなどを監督する
国際機構)
こうして、実際にジパング州の地上やペタルズの
ヘリからの被害報告も無く、ヘキサゴンも
ホワイトハウスも、左程 緊急性や波及性を
見せず、事態は他国軍事衛星の故障から起こった
事故として推移していくのだった。
☆☆☆彡
有難うございました。
続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。
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