第十八章 ---ペタルズ御前会議--- (1)
大きな会議場には 1時間以上、前だというのに
既にオブザーバーを含め、約100人全員が集まっていた。
巨大な白の大理石のテーブルの縦の左右それぞれに、
9席づつ合計18席、用意されている。
白いレザーの椅子の全てに、ひじ掛け、
リクライニング機能が付いている。
またその椅子の後ろに、それぞれ4人卓と椅子が設置され
責任者を補助する者が、3人~4人控えている。
会議場を慌ただしく出たり入ったりする者もいる。
前面ディスプレイ以外、
会議場内がオフラインなのと禁煙のせいだ。
飲み物の持ち込みのみ、許されている為、
参加者の多くは大理石の机上にペットボトルを置いて、
40V程の画面のタブレットを見ながら、
それぞれが連れてきたスタッフたちと
打ち合わせをしていた。
会議場には教室で言う黒板の位置に、
横8メートル縦3メートルの
新構造の量子パネルが有り、
急にそのパネルが発光して
パネル中央にお伊勢様が映し出された。
カーキ色のレザータイトで足を組み、
少し斜め前方からの画は、観るもの全てを引き付けた。
急な事もあり、デモ画面かCМと勘違いして
気づいた者は、ざわついて「うぉー!」「ワァー!」
歓声に近い声をほぼ半数の男性、女性が揚げた。
拍手をする者もいる。
そこに、外から慌ただしく、
九条氏から連絡を受けたPPSのスタッフが、
遅れて前のドアから入ってきた。
「・・・控え!控え!お控え下さい~
お伊勢様、お出ましにございます~・・・」
PPSのスタッフが声を張った。
場内が一瞬で凍り付き、沈黙が流れ、
ガタガタと全員が膝馬づく、
手や服を引っ張られ膝馬づく者もいた。
副大統領とその側近以外、全て。
「・・・お集りの皆さま緊急連絡です!
前方のメインモニターをご覧ください!」
100名近い人間が全員が膝馬づき、
会議場内は緊張と静寂に変わる・・・
「・・・・この腑抜け共めが・・・・・
力の有る者が、雁首揃えて何をしているか!」
量子脳の手術を受けた者は、
直接脳内に響き渡る音波の波長のせいで、
バタバタと二割近くが気絶して倒れ、
また、頭を押さえた。
「ユニタリカ軍から派遣されておる者は、
おられるか・・・・」
お伊勢様が静かに尋ねる・・・
「・・・なかなかご大層な物言いだな・・・
私が陸軍総合指令本部、上級大将
アルベルト・ダイモスだ。」
横柄な物言いをされ、少しの血圧の上昇が
見られる。
「・・・ああ、許したもれ。
身内に対して、激励したまで・・・
・・・直ぐにペンタゴンやNASAからも
そなたの所に連絡が入るじゃろ。
成層圏外からの攻撃を受けたからな。」
落ち着いた物腰で、お伊勢様が話す。
ダイモス上級大将の、後ろに立つ一人が、
彼に耳打ちする。
「・・・なんだと・・・
あなたのヘリは、我々の偵察ドローンより
高性能だとの噂・・・何処の誰が、そのような
所業を達っせられるというのだ。」
「それらを、調べるのが国家や属する者の役目でしょうが。
我ら民間側に、非があると言うのかえ。」
少し緊迫した空気が流れる・・・
そこへ、会議室入口のドアがノックされ、慌ただしく
黒ドレスと黒スーツの、二人の女性が入ってきた。
副大統領の次席補佐官と、通信ディレクターだ。
一番奥の議長の位置に、ダイモス副大統領
(上級大将)を見つけ、二人が走り寄る。
ダイモスは彼女らに、正面のディスプレイを見るよう
手で促した。
二人は同時に、はっ!とした表情で、まず黒ドレスの
似合う、金髪ショートのユニタリカ女性が口を開いた。
「副大統領次席補佐官のエミリー・ダグラスです。」
次いで黒スーツの似合う、スポーティな女性は、
黒髪でアーフィ系ユニタリア人だろうか、
ショートなソバージュで、カジュアルな髪形だ。
「副大統領執務室、通信ディレクター、
ソフィア・モルトンです・・・副大統領に、
緊急の報告が有り、入らせて頂きました・・・」
画面内のお伊勢様はゆっくりと頷き、左手でグラスを取り、
右手でどうぞ、と無言のまま合図を出す。
「・・・ここで、報告せよ。」
重く苦しい声で、ダイモスは指示を出す。
周りに聞かれても良いという事だ。
まず、次席補佐官のダグラス女史が話し出す。
「NSAから大統領執務室と同時秘匿回線で、
ジパング州の高度約600kmに突如、未確認の
人工衛星のようなものが現われ、地表に電磁波を放つと、
直ぐに消えたとの緊急連絡が入りました。
あと、DHSの特殊部隊がこちら(ジパング州)
へ移動中です。」
( NSA:ユニタリカ国家安全保障局の略)
( DHS:ユニタリカ国土安全保障省の略)
次いで、通信ディレクターのモルトン女史が話す。
「ヘキサゴンの統合参謀本部で、議会が招集されました。
それから、ジオステーショナリーアーミー
サテライト(静止軍事衛星)の映像を、
宇宙軍が解析中との事です。
判明次第、再度 ご報告致します。」
「・・・判った・・・」
また重苦しく、ダイモス副大統領が答える。
全てネイティブでの報告だが、
この会場に居る ほぼ全員が、
量子脳、又は電子脳のため、地球上の500以上の
言語の翻訳を脳内で自動で行い、通常会話として
成り立たせる事が出来るのだ。
「ダイモス殿よ、少しよいか。」
お伊勢様がグラスを置きながら、報告に割って入る。
気絶していた20名程が、頭を振りながら起き始め、
直ぐにテーブルに付きタブレットの記録を見る。
「・・・我々ペタルズが把握している事象も、
求めに応じて開示して差し上げましょう。
民間が出来る、基本的な協力は惜しみません・・・
我もユニタリカ合州国がEBEについて、
これらの大学や研究施設を使って、
対策を講じている事も、存じ上げている・・・」
ダイモス副大統領が、割って入る、
「では、何故 貴女のヘリだけが狙われたのか、
教えてはくれないか…EBEだと言うのであれば!」
(Extraterrestrial Biological Entityの略、
地球外生命:EBE)
・・・少しの沈黙が会議場全体に流れる・・・
◇◇◇
お伊勢様は徐に口を開いた・・・
「あなた方ユニタリカは約300年程前に異星人を捕え、
墜落炎上した小型船と共に極秘に研究を重ねた。
カルダシェフ・スケールをご存じだとは思うんだけど、
彼らの文明レベルの予測は如何ほどと?」
有難うございました。
続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。
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