第十七章 ---古都大学食堂--- (2)
・・・自動ドアが開き、新しく女性3人が入ってきた。
(赤河・キャロライン・偲)
先頭に立って、入って来たのは、黒毛を赤茶髪に染めて
巻き髪でセミロング、アリスたちと同じ制服を着ている。
顔は、よく観ると人工美人で、ハーフのパターンだ。
美容整形のパンフ等でよく観る顔のアレンジだ。
名前は、赤河・キャロライン・偲。
赤河グループ会長、赤河太朗の三番目の子供だ。
兄妹、上二人は男で、末っ子で甘やかされて育って来たため、
基本、世間知らずで 超が付く程の、我がままだ。
後から入って来た二人も茶髪で、同じような髪形をしていた。
(とりまき)
絵に描いたような取り巻きの二人は、辺りを見回して、
「何!臭~い!この臭い匂いは何なの!」
「キャロライン様、匂いが制服に付きますよぉ!」
その二人をおいて、キャロラインはマリアの方へ
一人 歩を進める。
マリアの傍まで来て、
「・・・何を食べているの?それは何?」
礼儀を弁えないキャロラインを
無視して、マリアはズ、ズ、っと少し音をたてて
食べ続けてみる。
入口の近くで文句を言ってた二人も、づかづか
やって来て、静かに食べるアリスの後ろに立って、
「キャロライン様がお尋ねになってるのよ!」
もう一人が、
「だから、こんな貧乏食堂は嫌なのよ!
食べてる人間の底が知れるわ!」
前の一人が、
「・・・言葉が通じないみたいね!」
「・・・キャロライン様、もう行きましょう!」
するとマリアが、おもむろに箸を置き話し出す。
「あなた達、バカァ?古都で最高の食べ物も
知らないの?
それより、誰の後ろに立たせてもらってるか、
判ってる?ん?」
キャロラインが口を開く。
「誰だか知らないけど、私に楯突くなら退学にするわよ!」
アリスは顔を伏せたまま、マリアに無言に手の平で、
押さえて、押さえて、のポーズをする。
そこにⅮJの様な、いい声の男性が割って入る。
奥の椅子に座っていたグループの一人だ。
「お嬢様方、ここは言い争いをする場では、
ないのですよ。」
身長は180㎝代、眉が太めだが切れ長に揃えられ、
目はの色は茶色で少し奥目。
口ひげ顎ひげ共に、綺麗に揃えられ、ファッショナブルに
巻かれた白地に金色の混じったクーフィーヤの
横から覗くもみ上げから、多分、頭髪は黒で癖毛のショートで
あろう事が、予想できた。
キャロラインが更に素養の無い口を開く
「・・・もしかして、マクアール王子殿下殿様・・・
・・・キャー!赤河・キャロライン・偲と申します。
思い偲 のしのぶ・・・
今後、Shinobuとお呼び下さい!キャ。」
意に介さず彼は、
「解りましたから、皆さん、ここで食事されないのであれば、
外に出た方が良いのですよ。」
「キャー、大学の五本指の一人に、早速お会いできる
なんてぇ~!」
「ねぇ、奥様はあと何人娶られるのかしら?」
後ろの二人の女性も節操がない。
もうマリアの事など眼中にないようだ。
上手く三人を店外に誘い出してくれた彼が、
戻って来た。
(あの赤目の女!今度会ったら承知しないから!)
廊下からの声が聞こえてくる。
「お兄さん、ありがとねぇ。」
レンゲを持つ右手を挙げて、マリアは馴れ馴れしい。
「 ムハンマド・ビン・マクアール2回生なのです。」
彼は、バドー首長国連邦の首長家の一つマクアール家の
3人息子の次男で、次期、皇太子に指名されると言われており、
噂に違わぬ人物だった。
ただ彼の話すジパング語には、少し違和感があった。
世界、指折りの大富豪である事に間違いは無いが。
「鴨野まりあ、新入生でーす。」
レンゲを持つ右手を挙げたまま答えるマリア。
「・・・マリア、さぁ行くわよ。」
「お姉さま、少し待ってよぉ~。」
「スープは半分以上残しなさい!、美容の敵なのよ。」
マリアは、残念そうに丼ぶりの半分にまで減った
スープを見つめる。
「・・・・判りましたぁ。
ご馳走様でした。」
やっとレンゲをおいて、コップの水を一気に
飲み干し、丼ぶりから目を離さずに立ち上がった。
アリスは振り返り、マクアールに一礼して、
また厨房の方に振り返り、
「おじさま、ご馳走様、又来るわね。」
「お嬢ちゃん、もっと美味しくなるように、
きちんと仕上げとくからな。待ってるぜ。」
マリアは、何やらぶつぶつ言いながらも、
アリスについて店を出た。
マクアールはアリスを見るなり、目が離せなく
なっていた。
アリスの後ろ姿を追いかける。
「なんと・・・天使か・・・・」
マクアールの頭の中では、アリスが振り返る場面が、
何度もリピートする・・・
金色の髪が振り返るたびに、キラキラとたなびく。
リピートするうちに、だんだん誇張されていく。
(・・・マクアール王子・・・ご馳走様・・・
ご馳走様・・・また誘ってね・・・また誘ってね・・・)
立ったまま、その場で動けず、今や誰もいない店の入り口を、
含み笑いで見ているだけのマクアールだった。
☆☆☆☆☆彡
巨大な会議場には、1時間以上、前だというのに
既にオブザーバーを含め約100人全員が集まっていた。
有難うございました。
続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。
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