第十五章 ---第三魔霊法大学--- (4)
J棟の4-1と書いた研究室にダイモスとモルトンは居た。
5列の長机に薄いディスプレイが並び、前方の広い空間には、
直径4メートほどの球体が、台座から浮き上がって、ゆっくり
回転している。
20人程が定員の研究室だ。
前方の球体は、よく観ると惑星のようだが、地球ではない事が
その色で判る。惑星シュミュレーターと呼ばれるものだ。
その球体の横に二人は立って観ていたが、モルトンが口を開く。
「・・・二人とも可憐でしたね。
ダイモス殿はどちらの子がタイプです?」
更に怪訝な顔をするダイモスは、
「・・・申し訳ないが、ジパンガーに興味は無い。」
特に、まじめで若いユニタリカ人に、
ジパングの若い女性は印象が良くない。
ジパングがユニタリカに取り込まれてからも、ジパングの
若い女性の他の州への渡航は、10年に渡り、禁止されていた。
現在からすれば、大昔の話ではあるが、
ジパングのほんの超一部の悪徳シンジケートが
若い女性を募り、ユニタリカ各州で犯した印象は、
消えるものではない。
現在に於いても、他の州への移動には、LGBTQ問わず、
疾病検査証明書が必要であり、
それも、その名残でもある。
「・・・ダイモス殿、お考えが古くないですか。・・・
・・・今では大和撫子と呼ばれ大人気ですよ。」
ダイモスは真面目な顔で話始める・・・
「・・・ジパング州に於いても、今ではLGBTQの婚姻が
法律で認められている。
一夫多妻、一妻多夫、グループ婚も、制限はあっても
認められているのは知っている・・・
もちろん差別する訳ではない。が、私はそれらに属すつもりはない。
だが、尻軽なジパンガーだけは、第三、第四夫人であっても、
嫌なものは嫌なのだ。」
LGBTQに断りを入れたのは、モルトンがゲイだからだ。
ただ、彼に告白をうけたわけではない・・・・
自動精神感応・・・これもダイモスの能力の一つだからだ。
「・・・ジパングの純血種の女性は、もう1000万人もいない
と言われています。先ほどの御仁は、ジパングを御名乗り
でしたが、混血種に見えましたよ。
本当にジパンガーでしょうか。」
モルトンは仕方ないという顔つきで、屁理屈を言う。
「・・・あの二人からは通常脳波動が感じられなかった・・・」
険しい顔のまま、ダイモスは呟いた。
「ダイモス殿、しっかりチェックなされてるではないですか。」
ダイモスの顔に少し朱が差した。
「・・・いや、そういう訳ではないからな、モルトン。
非常識な、あんな挨拶は初めてだからだ。」
「赤目の黒髪の子が、やはり気になりますか。」
「・・・何を言う、失敬だぞ、お前であっても許さんぞ。」
「はいはい。申し訳ありません。ただダイモス殿に浮いた話が、
一つ位はないと・・・誰も近寄って来ませんから。」
モルトンは思っていた・・・
ダイモスは人間不信に陥っているだろう・・・
副大統領で上級大将の父を持つダイモスには、陰謀、
打算、金儲け、詐欺師、父親の知人からの娘の紹介等は別にして、
普通の友、ましてや異性など、誰も近寄る事は無かった。
こんな、軽口をたたけるのも自分をおいて、他にいない。
また、彼が全てにおいて潔癖であろうとする姿勢も、
拍車をかけて、近寄り難い雰囲気を醸し出していた。
彼と知り合ってもう13年になるが、自分から女性に
話しかけた事など、これまでに一度もない。
そんな、彼が自らフルネームを名乗るなど!
「モルトン、与太話はその位にして、圧力、温度
窒素化合物の割合はどうだ・・・」
3回生の春季自由課題に話を戻す、ダイモスだったが・・・・
緊急連絡が直接、電脳に入る。父親の政策秘書からだ。
(・・・・お父上が、お呼びです・・・・
出来るだけ、早くビジネスエリアのホテルへ
お越し下さい。)
(・・・・判った。)
「モルトン、国際ホテルへ行かねばならなくなった・・・」
「はい、はい、私めも同行させて下さい。」
「判った・・・・」
既に二人は歩き出していた。J棟のエレベータに乗り、
タッチパネルにB4を入力する。
アラームが鳴ると、ダイモスがタッチパネルに左の手の平を
広げてかざす。
アラームが鳴りやみ、「チェック、アイデンティティ」
「ネクスト、プリーズ」
電子音が女性声でネイティブに言う。
続けて、モルトンが左手を差し出す。
「チェック、コンプリート!」
電子音の女性が言う。
扉が閉まり、下層へ動き出す。
電子音声は大昔からなぜ女性の声なのか。
モルトンは電子音も男性の声があっても良かったと思う。
B4からの下層はペタルズ本社フロアーだ。
「ダイモス殿、朝の閃光の事でしょう・・・」
「・・・あの距離で強力な放射線エネルギーを感じた。
ただ事ではないと思ってはいたが・・・」
ダイモスは更に怪訝な顔つきになる。
「上級大将のお立場で、お呼びでしょうかね。」
「・・・さあな、多分違うだろう・・・」
「じゃあ、副大統領としてですか!」
◇◇◇
有難うございました。
続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。
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