第十四章 ---第三魔霊法大学--- (3)
パピリオが教えてくれた通り、理事長室の有るO棟の15階から
2人はエレベーターを4階で降りて、向かって左に歩いていた。
N棟と繋がる4階の空中回廊も、床以外は全て透明な強化ガラスでできている。
下を見ると、白っぽい石畳みでできた広大なパティオがあり、所々に
ポプラやカエデが植林され、ベンチやデスクが置かれ、野外に於いても
落ち着いた雰囲気の中で、研究や学問が出来るように施工されていた。
空中回廊の途中で、先を歩くマリアは足を止めて
(マリア)
「お姉さま、もう10時になります!」
「・・・そうね・・・もうセレモニーも終わりね。」
「・・・お腹、空きませんか。」
「マリアは、いつも食べる事ばかり考えて。」
「やった~!お姉さま、ここのレストランは幾つかあって、
まず、次のN棟の最上階12階にある、グリル倭蔵 は
どうかしら。」
(アリス)
「ほんとに困った子ね、もう調べてたのね。」
手持ちのタブレットでN棟の各階の平面図から12階層を選び、
グリル倭蔵を表示させる。
「あ~っ、朝11時からだったわ・・・お姉さま、ごめんなさい。」
「ではマリアに、ひとつ大切なことを言うわね・・・」
「あ~お姉さま、解ってます、次からはきちんと
落ち着いて、調べますぅ!」
「それもそうだけど、理事長室からあなた、「気」が駄々洩れよ。
また、訓練に戻る?私なら1パーセク離れても、今のあなたを
見つけられるわよ・・・」(1パーセク:3.24光年)
「パリピーが、いえ、彼女がなぁんか対抗心を持ってぇ、接して来たから、
少しだけ出ちゃったんだわ。・・・気を付けますぅ!」
少し上目使いにアリスを見る。直ぐにマリアの気配が嘘のように消える。
「アリス先生・・・、如何でしょうか?・・・」
「特にここでは、気を付けなさい。」
「解りました・・・それではお姉さま、11時まで色々、
見て周りましょうよ。」
マリアは、今までしゅんとなってたのに、切り替えが早い。
4階部分の廊下をしばらく歩き、М棟~K棟を通り過ぎて
J棟の廊下で、エレベータから男性二人が降りてきた。
鉢合わせ的なタイミングだったので、お互いに立ち止まって、
先にアリスとマリアは頭を下げた。
「レイナード・ダイモスだ。」
身長は190㎝を越え、ユニタリカ人と一目で判る容姿は、
ブラウンアイで、金色のショートの癖毛。
格闘技をしているのは、体格から誰が見ても明らかだ。
鼻は高く、外見だけで一定数の女性から、声がかかるのは間違いない。
ただ、巌のような印象を受ける。
顔にうっすらと朱がさす。
奥手であろう事は容易に想像できた。
「アレックス・モルトン 三回です。」
身長も190㎝位で、壁のように並ぶ二人に身長における
遜色はない。
ただモルトンは肌の色から、アフィー系ユニタリカ人の子孫で
有ることは明らかだった。
目の色や頭髪も黒く、髪型は、多くの三つ編みで作るブレイズヘアで、
上手く纏っている。
ダイモスに比べると体の線は細いが、耳がつぶれていたりする事から、
柔術の使い手あろうことが判断できた。
目や鼻も大きめで、愛嬌のある顔つきだ。
また、笑顔で名乗ってくれて、人柄も良さそうだ。
「鴨野まりあ、ジパングで~す。しくよろぉ。」
笑顔で、右の手の平を顔の横で振って、少し馴れ馴れしい。
「藤原です。新入の研究生です。」
もう一度、サラッと軽く礼をする。
ダイモスは怪訝な顔で、モルトンは笑顔のままでいる。
アリスは二人の横を通り抜け、マリアも続く。
少し歩いて、H棟の廊下まで来た時、
「お姉さま、二人とも学生の域を超えてましたね。」
「・・・そうね。二人とも多分、有名人でしょうね。」
「・・・えーっ、お姉さま、男のことは知ってるんだ。」
「こらっマリア!何ですって、人聞きの悪い。」
「でもでもぉ・・・あ・の・お姉さまが・・・」
小走りに逃げるマリアを、拳骨を作って、広い廊下を追いかける
アリスだった。
◇◇◇
有難うございました。
続きが読みたい。いい感じ。興味ある。仕方ないな。
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