適正テスト1日目(2/2)
ベルはグラウンドの奥にある大きな体育館のような所へ連れてこられてしまった。
「あのー先生、他の子達はほっといても大丈夫なんですか?」
「ああ ベルさんのように初っ端から上手く魔力を込められる一年生などそうは居ない
念のためモンスターにも見張るよう指示してある」
「そうですか…」
「ところで、よくあんな特殊な武器の使い方が分かったなぁ?」
「な…なんとなく使ってみたら、あんな事になっちゃいました」
「ふぅん、なんとなくねぇ?」
先生の目が怖い…
「ちなみに、他に気になる武器はあったか?」
「はい!実は、銃と、刀と、杖が気になってます!」
同種類の物はいくつかあったのでベルはちゃっかり、拝借してきていた。
「まぁ、他の物は普通だな
ベルさんの場合、チェーンであれだけの切れ味があるんだ 刀は多分必要ないだろう
ここであの的を使って他の武器を一通り試してみろ」
「あれ?さっきの木の人形と違ってなんだか強そう~?」
「ここは一部の学生が使う場所だ 既に防御魔法もかかっている」
「じゃぁ銃から試しますね」
早速銃を握り使い方を確かめてみる。
打つだけじゃなくて、縄をだして捕まえたりも出来るんだ。便利だなぁ~
今は先生もいるし、普通に打とう。
まずはサイレンサーを発動させて、魔力をちょっとだけギュッと固めて弾を込めるイメージで引き金を引くっと…
「先生~当たった~♪」
「何!? 貫通した!?」
「え?」
「その性能の銃で普通あの的は貫通しない! それに今サイレンサーを使わなかったか?」
「大きな音が出たら嫌だなぁ~って…思いながら打っただけですよ~?」
なんだか嫌な予感がする。
「まさかとは思うが、ベルさんは何かの鑑定スキルを持っているかもしれん 何か予兆を感じた事はないか?」
「いえ、何もありませんよ?」
なんとか話題を変えなきゃ…っ!
「あ、次試してもいいですか?」
「好きにしろ」
先生は空中に避難した。
この刀には、風属性が付与されてる。
当然直接切った方が効果的だけど、魔力を込めるだけで適正があれば思い通りの風が出せる…
風属性があるかはわからないけど、これなら素振りにしか見えないはず…
よし、あの的を狙って刃物の風を出すイメージで素振りっ!
「ベルさん、刀で的を狙うならもっと近づかないと」
「えへへ♪ 刀を扱うのは初めてだから素振りしてみたくなっちゃっ…て!?」
先生と喋っていると、ものすごい音がした。
的をわずかにかすり、上にずれた風が奥の壁を切り裂いてしまった。
私、風属性の適正あったのかなぁ~…?
「今のはなんだ?」
「わかりません…」
「もう何でもアリだな、防御魔法がきれてるのか?
それにしても、明日の魔力測定も楽しみだ」
私の魔力って一体どうなってるの?
ニコラの恵ってもしかして、チートレベルなのでは…
ベルはくるっと後ろを向いて冷や汗を拭った。
「さぁ、最後は杖いってみよ~♪」
もうヤケクソだ。杖を掴んで使い方を確認する。
下級の杖 魔力を込めイメージすると属性にあわせて何かがおこる としか頭に浮かんでこない。
一番小さいのを拝借してきたからかな?
「先生 この杖、どうやって使うんですか?」
「あぁその杖は本当にポンコツでな とにかく魔力を込めて何かイメージしてみろ」
「わかりました」
さっき壊した所が元にもどりますように…っと願いを込めて杖に少し多めの魔力を流し込んでみた。
すると杖は金色に光り、壊してしまった的や壁が嘘のように元通りになった。
「ベルさん 何をしたんだ?」
「さっき壊しちゃった所が元に戻りますようにって思いながら魔力を込めただけですよ?」
「素晴らしい!
ベルさんは光の魔力を持っているな 将来有望だ」
そういうと、先生はベルの背中をバンバンと叩き、大笑いした。
「今持ってきた武器は全て適正ありだ ご家族と相談して今後の武器を決めるといい
今日は帰っていいぞ と言いたい所だが、他の生徒が終わるまでは帰れないからな?」
先生と話していると、いきなり地響きと爆発音がして先生の鳥型モンスターが慌てて飛んできた。
「何かあったのか?」
《ブレイとグランジュが大変です とにかく来て下さい》
先生にはモンスターの声は聞こえていないようだけど、尋常でない雰囲気に私達は慌ててグラウンドへ向かった。
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グランジュは大きな杖を使い、炎で木の人形諸共グラウンドの4分の1を焼き尽くし、
一方ブレイは剣だけでグラウンドを真っ二つに割っていた。
二人は睨みあい、何かを競っている様子だ。
サニーはお構いなしに
「これだ!」と言いながら大剣を振り回している。
その光景を見てあわあわと慌てているソリエ。
「ねぇソリエ、何があったの?」
ベルはソリエの肩にそっと手を当て、とにかく落ち着くように促す。
「は..はじめは、皆で和気あいあいと..馴染む武器を探していたんです」
「うん」
「次第に皆、自分にあう武器がなんと..なく..わかってきて、木の人形をめがけて色々と試しはじめました」
ソリエの両手にはクナイが握られていた。
「ブレイ..さんは始め双剣を使っていましたが、次に細い剣を2本使いはじめた頃、グランジュ..さんが何かを耳打ちした..ように..見えました」
「それで?」
「グランジュ..さんは炎と風を操れるそうで、木の人形を焼き払い、ブレイ..さんは競うように木をバラバラにしてしまって…
そこからは二人が暴走?..してしまってこのように」
「話してくれて、ありがとう」
二人の会話が気になるなぁ。さっきの先生の鳥さんに聞いてみよう!
《ねぇ鳥さん、グランジュはブレイと何を話したの?》
《ベトベトが珍しく不思議がっていましたが、私の声が聞こえるんですね》
《うん 固有スキルでモンスターとお話しが出来るの》
《珍しいスキルをお持ちのようで 今度ゆっくりお話をして頂けるなら教えて差し上げます》
《もちろんだよ!》
《二人の会話は確かこうでした
『ベルと付き合ってるの?』『付き合ってねぇよ』『なら僕にもまだ、可能性はあるね』
等と話していましたよ…クククッ》
《私と、ブレイが付き合ってるって誤解されたのがそんなに嫌だったのかなぁ》
《いえ…恐らくそういう意味では…》
《鳥さん!話してくれてありがとう♪ またお喋りしようね》
そう言うと、ベルは手をふりながら、走って行ってしまった。
《最近の子なのに、鈍感にも程がありますよ…》
鳥型モンスターは一人ため息をつき、グラウンドの端から様子を見守る。
「はい、そこまで!」
気が付くと炎は消え、先生が空中から大声で叫んでいる。
先生は地面に降りたつと、ブレイとグランジュの手を折れんばかりに強く握り、恐ろしい笑顔で
「二人の実力はよーくわかった このままではグラウンドが壊れてしまうだろう?
今日は適正武器を選ぶ日だ 気になる武器があるなら個人面談をはじめようか」
先生…めちゃくちゃ怖い!
「あ、遅くなったが他の皆は各々昼食をとってくれ」
と言い、ブレイはそのままグラウンドの奥へひきづられていった。
残った4人はグラウンドで自然と輪になり、ランチタイムとなった
こんなの初めてだから少し緊張する~
「そういえば、さっきのベルは凄かったよな!」
先に口を開いたのはサニーだ。
「そうだね、チェーン武器を使いこなす人なんて僕は初めてみたよ」
「アハハ…ありがとう♪ グランジュはどこかで魔法を習っているの?」
「グランジュ..さんも、凄かったです…」
「僕の事はグランジュでいいよ」
「私もベルって呼んで欲しい!」
「俺様の事はサニーと呼んでもいいぜ」
「が、頑張ります///」
「僕の父親は冒険者なんだ お陰で小さい頃からスパルタ教育だよ」
「すごーい!大人になっても冒険者をやってるんだ」
「今度、僕とも一緒に魔法の訓練やってみない?」
「やる!ソリエもやるよね?」
「いいの?」
「5人しかいないんだから仲良くやろうぜ!」
「サニーは誘ってないんだけど?」
「なぁ、俺様が居ないと心細いだろぉ?」
サニーがグランジュに泣きつく素振りを見て皆で笑った。
お弁当を食べ終わった頃、ブレイが帰ってきた。
「おかえり~♪」
「ただいま
グランジュ、先生が奥で呼んでるぞ さっきはその…」
「僕が悪かったよ お互い頑張ろう」
ポンッとブレイの肩に手を置き、グランジュは先生の元へ向かった。
ブレイも輪に入り、一人遅れてお弁当を食べはじめた。
「ブレイ武器は決まった?」
「まぁ大体な」
「やっぱり刀?」
「まだ秘密だ」
「二人は仲がいいなぁ~」
「ま、まぁ幼馴染だし////」
「そういえば、サニーとソリエは武器を決めたの?」
「俺様は斧と大剣で迷ってるから、先生に相談しようと思ってる ソリエは?」
「わ..私は、クナイと短剣と杖で迷ってて…」
「全部持ってけって」
「先生のアドバイスは的確だった 俺も気になる武器は全部持っていった方がいいと思う」
そうこうしてるうちに早々とグランジュが帰ってきた。
「早かったね」
「僕はもう、決まっていたも同然だからね 次はソリエだって」
「い..いってきます」
グランジュが帰ってきてからは冒険者の父親の話で盛り上がり、ブレイとグランジュもすっかり意気投合した。
残りの二人も先生との面談が無事に終わり、なんとかいつもの時間に帰路につくことが出来た。
「ばいばーい!」
「また明日」
いつものようにブレイと帰りかけたベルだったが、昨日のお母さんとの約束を思い出した。
「あ!そうだ! 今日はお母さんと一緒にファームへ行く約束をしてたんだった 急ぐから先に帰るね」
「そっか、足元には気をつけろよ!」
「わかった~♪」
「早っ!」
ブレイはベルのあまりのスピードに少し立ち尽くすが、当の本人は全く気付かずに行ってしまった。
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