モンスターが喋った!?
「ねぇ ここ立ち入り禁止じゃなかったの?」
「そう 本当はあなたのおてんばが治るまで立ち入り禁止にするつもりだったのよ」
そう言えば私もレオ兄も、身体強化魔法だけは使えるのでよく家の物を壊して叱られていた。
「ここに入る前に約束してほしいの」
「約束?」
「まず、物を壊さない事」
「はい」
「そして、読み終わったら元の位置に戻す事」
「わかった 約束する」
読み終わったらって事は本かな?
お母さんは屋根裏の倉庫の鍵をあけて、中に入れてくれた。
「ぇぇえ!? うちにこんな場所があったの!?」
倉庫の中はベルの想像をはるかに超えていた。
「驚いたでしょ?」
「すっごく驚いた~!」
沢山の本が並んでいるのは勿論の事、大きなひし形の水晶のような物や、パソコン?のような物まで置いてある。
「実はね、これお父さんとお母さんが結婚する前に二人で集めたのよ」
「どうしてこんなに?」
「私達は、魔力不足だからほとんどの魔法を上手く使いこなせなくて、モンスターともなかなか契約ができないの」
「おかあさんは"犬型スライム"とちゃんと契約してるよね?」
「ええ、もちろんとーっても可愛くって、大事なパートナーよ!
でもね?魔法の補助も出来なければ、就職にも向かないの
お父さんのパートナーも同じようなタイプだわぁ~
だから、お父さんと二人で、ここに魔法に関するものを色々集めて
私達でも魔法の補助をしてくれるようなモンスターと契約する方法がないかなって、一緒に研究してたってわけなの」
そう言うと、母はスマートウォッチからモンスターを出した。
「普段家では放し飼いだけど、こんな大事な部屋で出しちゃっても大丈夫なの?」
「大丈夫!この子はとーっても大人しいんだから♪」
負担ベルには一切寄り付かないのだが、今日は珍しくモンスターの方からしっぽをふって寄ってきた。
ベルが触れると、プルプルフワフワしたなんとも表現しがたい感触で、病みつきになりそうだった。
「可愛い!
このコーギーみたいな色と、何とも言えない感触~」
「あら、珍しいのね そう言えばベルが触るのは初めてじゃない? ところで、コーギーって何?」
思わず前世にしかない知識を口に出してしまった。
「コーヒーと言い間違えちゃった」
「そう?」
この世界には、前世にあったものも沢山存在する。
とにかくゴチャゴチャにならないようにしないと…
《ねぇねぇ、もっと触って!
それで僕にも名前を付けるようにお母さんに頼んで》
「んぬ!?」
もしかしてモンスターが喋ったぁぁぁぁ!?
「急に変な声出してどうしたの?」
「えっと、この犬型モンスターの名前 そう言えばなんて言うのかなぁって?思って」
「犬型スライムは犬型スライムでしょ?」
「そうじゃなくって、おかあさんが付けた名前だよ」
「そんなの考えたこともないわ
そうだ!あなたがさっき言い間違えたコーギーなんてどうかしら?」
少し安直すぎないかなぁ…
《ありがとう!僕の名前はコーギーかぁ》
すると急にモンスターは光り出し、プルプルフワフワした感触から、プルプルモサモサしたような感触に変わってしまった。
「あら、この子急に光っちゃってどうしたのかしら? 私の魔力も少し消費してしまったみたい」
「大丈夫?」
「私は大した事ないけど、コーギーちゃんは…あれ?前より元気そうねぇ
明日念のためファームへ連れて行ってみるわ」
「ファームって?」
「ファームって言うのはね、スマートウォッチに入りきらないモンスターを預けておく事が出来る施設の事よ
モンスターの病院や研究施設も兼ねているの ベルも学校が終わったら一緒に来る?」
「行ってみたい!」
「きっと色んなモンスターが居るわよ♪」
「そう言えば、私もこの部屋で研究していいの?」
「ええ、その為に連れてきたの
今は誰も使っていないから魔法に興味があるなら勉強の足しにしてみて?」
「ありがとう! あのモニターみたいなのは何?」
水晶も気になるけど、やっぱりネトゲヲタクだった私はパソコンのようなアレが一番気になる。
「あーあれは、パソコンよ」
パソコンがあるんかーい!思わず心の中でツッコミを入れてしまった。
「でも使い方がとても難しいから、もし使うなら近くにおいてある説明書を見てから使ってね」
近づいてみると、パソコン説明書と書かれたタブレットのようなものが置いてあった。
「この魔道具に触れながら、パソコンの使い方を聞くと説明が画面に表示されるの
ただ、魔力を消費するから使いすぎると疲れちゃうわ」
「もしかして…パソコンも!?」
「そうなの…買ったはいいけど、私達魔力が足りなくてほとんど使えないの
でも、本は沢山あるし! 勉強には困らないはずよ」
お母さんはドギマギしてるけど、私は目の前に宝物を見つけたも同然だ。
これで、この世界の事をもっと知る事が出来るかもしれない! ベルはこの先の希望に胸を膨らませた。
母と喋っているうちに、もうすぐご飯の時間になっていた。
「あら、もうこんな時間 ここの鍵はあなたに預けるわ」
「こんな大事なものを預かってもいいの?」
「ええ、私が持っていたって仕方ないもの
もうここは使わないって思ったときに返してくれればいいからね」
「わかった 大事に使うね!」
「でも、ここの事は暫く秘密にしておいてくれる?」
「どうして?」
「お兄ちゃんはヤンチャ盛りだし、ブレイ君といるとベルはいつも騒いじゃうでしょ?」
確かに…
「そういう事なら、秘密にしておくね」
この後こっそり倉庫から抜け出した母と私は、素早く解散した。