思い出した記憶
「私達はそれぞれ人に尽くしていたけど、死ぬ間際まで報われなかったの」
「ニコラは"願わくば貧しい人々に人権を与えられますように"と」
「ハンナは"願わくば村の人々が飢えずに済みますように"と」
「それぞれ強い意志を残したの」
「そして気づいたら、この世界で双子になっていたわ」
「あなたが産まれると同時にね」
「二人は凄く頑張って生きたんだね 辛い過去が残ったままなの?」
「全て覚えてる 互いの過去も手に取るようにわかるわ」
「わかった 二人の言う通りにする どうすればいいの?」
「ニコラが私達の魂ごと記憶を蘇らせる」
「少し衝撃があるかもしれないけど、すぐに終わるわ」
「ちょっと怖いけど二人を信じるよ」
「ニコラ私達の記憶まで入らないように気をつけて?」
「わかってる いくわよ~!」
――ッ!!頭の中に記憶だけが流れ込んできてガツンッと殴られたような気分だ…
「な…なんじゃこれ!?」
「成功したわ~!」
「私の元の世界の生活、酷すぎない?」
「でも、この世界で役立つ情報も沢山あるでしょ?」
「確かに…ゲームヲタクだった頃の記憶は、この世界の魔法に使えるかも?」
「それだけじゃないわよ
義務教育では習わない数学の知識 それに不動産会社で働いていた時の知識」
「そっか、私まだこの世界じゃ7歳だから、この先どの知識が役にたつのかまだわからないんだ!」
「そういう事 恋愛の経験はなさそうだけどね~」
「にしても…私の記憶は二人とも知ってるのに、二人の記憶を私が全然知らないのは不公平じゃない?」
「一気に3人分の記憶を植え付けるのは人間の脳によくないわ」
「それに知らない方がいいと思うよ」
「一つだけ私の事で、わかるなら教えて欲しい事がある」
「何かしら?」
「私は家事で死んだよね?
あの後、母親がどうなったかわかる?」
「…捕まったわ」
「アハハ♪ やっぱり火をつけたのは母親だったんだ!」
「落ち込むよりはいいけど、楽観的すぎないかしら?」
「だってあのまま生きてても一生独身だったと思うし、
前世の死因くらいは知っておきたいな~って思っただけだよ?」
「ニコラ、さっきから気になってるの
記憶が戻って精神年齢が7歳と30代で混ざってない?」
「そう言えば少し人格も混ざってるわねぇ
…暫くすれば自然と7歳の方に馴染むはずだわ!」
「あなたはベルなの 起きてから注意して」
「わかりました」
「次は私の番、恵を与える」
「ハンナが与える恵は、記憶よりもっと人生の役に立つわ」
「本当に?」
「私の恵を受け取るのは簡単 気持ちを楽にして」
「わかった」
―なんだかとても不思議なモノが身体い~っぱいに流れ込んでくるみたい とっても気持ちいい~…
「終わったよ」
「起きたら少しづつ理解できると思うけど、きっと驚くわ」
「ありがとう!」
「そう言えば、どうして今まで出てこなかったの?」
「蓄積した魔力がないとコンタクトがとれないからよ」
「さっきもそう言ってたけど、もしかして7年に一度しか会えないって事?」
「これも憶測だけど、ハンナの恵で次はもう少し早く蓄積できると思うわ」
「ここからは私達からのお願い」
「あなたにはこの世界で希望を叶えて貰いたい 自由に生きる人生を私達にも見せて欲しいの」
「つまり、私が前世では叶えられなかった事?」
「そうよ」
「嘘みたいな話だけど、現実だね…
なら 私、"世界一自由なリア充になる!"」
「それはいいわね!」
「是非見せて欲しい」
「今日はもう時間切れみたい」
「…え?待って?まだ聞きたい事が沢山あるのに!」
「私はあなたに知恵を与えた」
「私はあなたに恵を与えた」
「「これが私達と繋がっている証になる」」
「それにまた逢えるわ」
「さぁ、男の子が待ってる」
「早く起きてあげて?」
二人の姿は笑顔で消えていった。
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ーさっきまで感じていた感覚はなくなってしまったけど、前世の記憶…ニコラとハンナに会った事…。
全て現実だったとわかる。それに何か得体の知れないチカラを感じる気がする。
「おい!大丈夫か?ベル!」
ブレイがギュッと手を握ってくれてる♪私も手を握り返した。
「もうー!朝からどうしたの?」
「決まってんだろう?
ベルが心配で、学校へ行く前にここに寄ったんだ!」
「ブレイ、ありがとう!」
「お…おい!////」
思わず抱きついちゃった…
「ごめん」
体の痛みは嘘のように消えてる
「もう大丈夫だよ 身体もこのとおり♪」
「よかったけど、まだ安静にしてろ」
立ち上がって、おもいっきりくるりとまわってみせると、
ブレイがそっと、椅子に座るよう促してくれた。
「ありがとう ブレイは心配性だなぁ
そういえば、昨日ドロドロになってまで私をここに運んでくれたよね?」
「まぁ大した事じゃないぞ?////」
そこに先生・お母さん・レオ兄の3人が入ってきた。
「今日はレオ兄も来てくれたの?」
「入院したって聞いて母さんにくっついてきたんだ
兄ちゃんとしてはほっとけないだろ?」
「おはようございます 身体の調子はいかがですか?」
「すっかり良くなりました!」
「母さん、ベルのやつ全然元気そうじゃないかぁ~!」
「本当に人騒がせなんだからぁ、ブレイ君も来てくれてたの?」
「俺は様子が気になって…」
「あら大変、学校に遅刻しちゃうわよ 二人は学校に行ってらっしゃい!」
「わかりました」
「またいつでもきてね~ 家族みたいなものなんだから遠慮なんてしちゃだめよ」
「いってきまーす」
「「いってらっしゃい」」
ブレイとレオ兄は病室から出て行った。
「さぁ、念の為検査をしましょうか」
「よろしくお願いします」
ーその日の午前中は、検査であっと言う間に過ぎていった。
「先生ありがとうございました」
「いえ、何も異常がなくてよかったです
にしても娘さん、魔法の才能に恵まれていて羨ましい」
「あの…私、魔法は使えないんですけど、何かの勘違いじゃないですか?」
「そうですよ!うちの家系は皆魔力不足で苦労しています」
「驚かせてしまったようなら申し訳ございません
実は私、触診をするだけでおおまかな魔力量がわかる固有スキルを持ってるんです」
「そんな固有スキルがあるんですね」
「確かにお母様の言う通り遺伝性は非常に高いと言われていますが、これは絶対ではありません」
「そうなんですか?」
「それに環境によれば、まだ使えなくても全然おかしくない歳頃ですよ?」
「ベル、良かったじゃない!お父さんに話すときっと喜ぶわ」
「そうかな?」
―お母さんはもう一度先生にお礼を言い、二人で病院を後にした。
帰り道、私は考え事をしていた。
この魔力がハンナの言っていた恵?
私もこれからは、世界一自由なリア充になる為に魔法の知識は絶対に必要だよね?
「お母さん、私!魔法の事をもっと知りたい」
「あら、先生の言葉でやる気がでたの~?
だったらお母さんもベルの為にひと肌脱いじゃおうかしら♪」
お母さんはまるで自分の事のようにうれしそう。
家につくと、
「こっちこっち♪」
と、言いながら お母さんがいつもなら
『絶対に大きくなるまでは立ち入り禁止』と言っていた、屋根裏の倉庫の前へと連れてきてくれた。