ありふれた1年生、夢で精霊に出会う
12/18 1~3部を大幅に見直しました。
物語に変更ありませんが、展開が早くなるよう文字を減らし1部は削除しました。
―この世界の人間は魔力を持って生まれ、モンスターと共に生きる―
―モンスターは本来ダンジョンにのみ生息しているが、人は不思議と相性が良いモンスターと契約をする事が出来るので、
10歳になると、街中でも魔道具のスマートウォッチに入れれば3体まで連れ歩く事が許されるようになった―
未発見のモンスターの方が多いと言われる程、謎多き生き物だが、もう人間にとっては欠かせない大切なパートナーだ。
一緒に冒険をしたり、一緒に寝たり、時には仕事を手伝って貰ったり、人とモンスターの絆はとっても強い!
一般市民は、3年間の義務教育を終えると、子供のうちから冒険者として日銭を稼ぎながら、モンスターとの契約を目指し、各々の夢に向かって奮闘する。
…そして、ほとんどの人は数年で冒険者を引退し、それぞれの特性にあった仕事を探しだす。
冒険者として食べていけるのは一握りの実力者だけだ!
―こんな世界でベルは、海と山に囲まれた土地で皇族とは無縁の一般市民として生まれたごく普通の女の子だった―
―学校の裏山から転がり落ちるその日までは―
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「ベル、早くしなさい! 学校に遅刻するわよ!」
「ワンッ」
今お母さんの後ろから吠えているのは、犬型スライム お母さんのモンスター!
「いいなぁ、私も早くモンスターと契約したい~!」
「ベルはもうすぐテストでしょ?シャキッとしなさい」
「兄ちゃんは今年いっぱい頑張るぞ! 学校を卒業したら色んな所へ冒険にいくんだ」
「レオ! ダンジョンは危ないのよ?パーティーを組む人は今のうちに、ちゃんと見つけておきなさいね」
「ふっふーん、もう決まってんだ!」
「じゃあ、いってきまーす!」
「おい待て!兄ちゃんも行く!」
うちは、ごく普通の4人家族。
お父さんは仕事でほとんど家に帰ってこないけど、毎日が楽しい♪
私は入学したばかりで、レオ兄は今年いっぱいで卒業だ。
「おはよう!」
「今日こそ遅刻か?」
「今日もギリギリセーフですぅ~」
教室に入ると、ブレイがからかってきた。
ブレイの家とは家族ぐるみのつきあいで、物心ついた頃からの幼馴染。
「ベルさん、今日もギリギリですか?」
「あ、先生…と、先生のモンスターさん…」
いつ見ても先生のモンスターは、なんだか気持ちが悪い。
―6時間後
「終わったー!ブレイ今日は遊びに行かない?」
「いいぜ!いつもの裏山はどうだ?」
私達には秘密基地がある。…って言うか、まだ入学したばかりで他に友達も居ない。
「あれ?壊れてた屋根が治ってる~!」
「へっへーん!」
「ブレイが? 私も呼んでくれたらよかったのに~」
「屋根なんて上ったら危ないだろ?」
「ありがと♪ でも私、体力には自信あるのに」
「そういう問題じゃないんだよっ///」
「ところでさ、今日お母さんに『もうすぐテストだからシャキッとしなさい』って言われたんだけど、ブレイは勉強とかしてるの?」
「俺はバッチリだぞ!でも、はじめのテストは適正テストだろ?」
「そうなの? いいなぁブレイは魔法が使えそうで」
「俺だってまだほんのちょっとしか使えないんだぜ?」
うちの家族は皆魔法が殆ど使えないから、私はモヤモヤする。
「私、魔法使えるようになるのかなぁ」
「俺達まだ1年生になったばっかりだぞ?」
「そうだね、やっぱり実技がはじまらないとね!」
「ベルはいつも寝てるもんな~」
「たまに起きてるし!」
「俺は出来る事ならベルとパーティーを組みたい
卒業する頃には体術も魔法も強くなってみせる!」
「私と…組んでくれるの?」
「嫌か?」
「違う、嬉しい!」
「なら、寝てばっかいないで一緒に頑張ろうぜ!////」
「うん!」
ブレイが一緒に居るといつも安心する。
「今日はそろそろ帰るか」
「そうだね 日も暮れてきたしお母さんに怒られる前に帰ろう! ブレイもうちにおいでよ」
「おう!」
ブレイの親は共働きで帰ってこない日が多い。
うちの家族は皆事情を理解してて、お母さんに至っては本当の息子同然♪
私達はいつものように他愛無い話をしながら家路についた…はずだった。
「おい!…っ危ない!!」
「え!?」
ベルは何かにひっぱられるように斜面から転がり落ちてしまった。
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あれ?ここは夢の中?
何か、嫌なモノが頭に流れ込んでくるみたい。
…「キモヲタ!」…「痩せれば契約とれるんじゃない?」…「この資料、後はよろしくね」…
嫌だ聞きたくない! 何の話か全然わからない。
「私達の話を聞いて?」
「誰?」
「私達は…」
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「ベルッ! ベルッ!!」
ブレイが私を呼んでる?
「やっと目を覚ましたのね」
「ブレイと、お母さん…?」
私は、まさか病院のベッド? フラフラして上手く起き上がれない。
「まだ無理しちゃだめよ!」
「ずっとうなされてんだぞ?」
「なんか変な夢をみちゃって、それでかな?」
「おい、覚えてるか?
ベルはつまづいた勢いで、裏山の斜面を転がり落ちたんだ」
「うん ブレイもお母さんも迷惑をかけてごめんなさい」
「ベルが無事ならそれでいいのよ 先生を呼んでくるわね」
お母さんはそう言って病室がら出て行った。
「もう外が真っ暗!今までついていてくれたの?」
「あたりまえだろ?」
「ありがとう 普段はいじわるなのに時々優しいなぁ~」
「いじわるじゃねーしっ」
お母さんが先生を連れて戻ってきた。
「先生が来てくれたわよ」
「良かった~目を覚ましたんですね 具合はどうですか?」
「もう大丈夫です」
「ベル!さっきすぐ起き上がれなかったでしょ?」
「頭を打った衝撃で一時的に意識が飛んでいたのかもしれません 幸い目立った外傷はありませんし
今夜は一晩回復カプセルに入り、明日念のため検査を行いましょう」
「わかりました ありがとうございます」
お母さんは先生に頭を下げた。
「俺が一緒にいたのに本当にごめんなさい」
「ブレイ君は悪くないわ」
「悪いのは私だよ」
「もしベルに何かあったらと思うと本当に怖くて…」
「ブレイ君のお母さんには連絡しておいたから、今から家に送るわ」
「ありがとうございます」
ブレイはお母さんに押されるように、帰っていった。
「では、ベルさんはカプセルルームへ行きましょうか」
先生はそう言うと、スマートウォッチからモンスターを出し、魔法でフワッと私をモンスターに乗せてくれた。
「先生のモンスターとっても綺麗ですね」
「ありがとう いつも治療を手伝ってくれるんですよ」
モンスターはフワフワと浮いたまま、私を大きなカプセルがある部屋へ連れて行き、優しく寝かせてくれた。
「さぁ、朝までこの中で眠って下さいね」
「ありがとうございます」
先生は丁寧にカプセルのふたを閉め、魔力を込めてくれた。
「これで朝まではもつと思います おやすみなさい」
部屋の灯りを消し、先生は部屋から出て行った。
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あれ?また夢の中?
さっきと同じ感じがするけど今度は何もない…
すると真っ白な世界から、
二人の女性がふわっと目の前に現れた。
「私達が見える?」
「さっきの夢で話しかけてきた人?」
「ええ、いきなり嫌な気分にさせてしまったわよね?」
「私があなたとコンタクトをとろうとして失敗してしまったの」
「本来私達は、蓄積した魔力と相手の夢を利用しないとコンタクトをとる事が出来ないわ
ちょっとハンナが先走って、一言先に伝えようって…それで…」
「本当にごめんなさいです」
「まぁいいや 二人は何者?」
「私達は精霊と呼ばれている」
「精霊って…あの、神話に出てくる?」
「そう、私達は双子の精霊」
「改めて、私は姉のニコラあなたに"知恵"を与えたい」
「私は妹のハンナあなたに"恵"を与えたい」
「ごめんなさい 全然わからない」
「まずは、私の力を使ってあなたに前世の記憶を思い出して欲しいの」
「前世の記憶?」
「ええ、前世の知恵はきっとあなたの力になるわ」
「もしかしてさっきの嫌なモノ?」
「今ならさっきのように怖い想いはさせないわ」
「今ならちゃんと私達がいる」
「うーん 悩む…どうして私に?」
「あなたは前世で死ぬ間際に強い意志を残したの
“願わくば人に愛され、自由に生きたかった”と」
「それに私達は今、魂を共有している状態なの」
「魂を共有!? どうして?」
「私達にもわからないけれど憶測で良ければ話すわ」
「教えて!」
「私達も前世は、あなたと同じ別の世界の人間として生きていた」
「私は別の世界で生きていたの?」
「そうよ」
「魔法がなく、モンスターもいない世界」
「もう一つだけ共通点があって、私達も死ぬ間際に強い意志を残しているの」
「聞いてもいい?」
「ええ、話すわ」
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