エイリアン・アブダクション
「あ、あれ……?」
ここ、どこ? え、待って。この光……手術台?
じゃあ、体が動かないのは、麻酔? なんで? 怪我? 事故?
でも痛みもない、麻酔されているからかな。いや、でもそんな感じは
それに事故なんて……どうだったかな。
私は確か……そうだ、マロンを連れて夜の散歩に……河原を歩いて……
それで……そうだ、上から光が……え、待って、あれってまさかUFOだったの!?
じゃあ、動けないのは……やっぱりそうだ、拘束されてる!
て、ことはこれから私、宇宙人にあれこれ体をいじられてそれで……
「ん、起きたな」
「よし、台を起こせ」
「ほな、いくで、せーのっ」
「ショートコント、コンビニ!」
「ウィーン。おう、こら、あんちゃん金出せ金! レジの金全部や!」
「……スゥー」
「なんや黙り腐って。このナイフが見えへんのか? おう? 玩具やないんねんぞコラ!」
「スゥー……」
「なんやあんちゃん。ちょっとビビらせすぎたか? すまんな。
貰うもんもろたら出ていくから命の心配せんでええで。ほら、だからはよ金を――」
「お前の奥さんと不倫した」
「……は? 何? え、は?」
「ご、強盗!?」
「いや、何をコントに戻ってるねん! 不倫ってなんや!?
ワシの奥さん、プテポニーマシューチェにお前、手ぇ出したんか!」
「しっ! 今コント中だぞ! 後にしろ!」
「こっちのセリフや! お前が出した爆弾やねんぞ!
きちっと処理してから進まんかい! 何をスッキリした顔しとるんや!
『やっと言えたー』やないんねんぞオイ!」
「一体何の騒ぎ……ご、強盗!? バ、バイトくん!
早くお金出して! マニュアル通りに! 命を大事に!」
「いや、今それどころじゃないねん! こいつコラ! 殺したる!」
「お、お客様、じゃなかった! 強盗様! どうか落ち着いて!」
「落ち着けるかこんなもん! お前も黙ってないで何とか言うてみい!」
「……店長」
「う、うん? 早くレジを開けて! ほら!」
「あなたの奥さんとも不倫しました」
「お前、ドクズやないか! ほら見てみい!
店長固まってしまったやないか! ん、なんや?」
「……アドリブ? いいねっ」
「ちゃうちゃうちゃうねん。コイツマジやねん」
「……え、私の奥さんってブラブスカトゥ・ササカニリーナ・ライトムムチ・
ポポポンタス・ピピリオムシェーカス・ジュジュクボムボラ・
スカリークガンム・トトノパウリヒウムのこと!? 不倫!?」
「長いわ! 寿限無か! で、どう落とし前つける気やお前」
「じゃあこれで」
「レジの金なんていらんわ!」
「どうもありがとーございましたー!」
……は? な、なに? なんなのこれ? 私、今、何を見せられたの?
「……なんや、反応ないな」
「またか駄目か……」
「やっぱりメタネタが良くなかったんじゃないのか?」
「なんや! わかりやすいのはこの前ウケへんかったから変えたんやないか!
ワシなんてウケやすいように、わざわざ翻訳機をいじったんやぞ!」
「それが浮いてるんじゃない? 彼らの我々に対するイメージは
もっとカタコトの言葉じゃないか『ワレワレワウチュウジンダ』って具合に」
「そんなの聞き取りにくいやん! 笑えるか!
それになんや、浮いてるって。浮くのはワシらの宇宙船だけにしときってか?」
いや、チラッとこっちを見られても……。何なのこの宇宙人たち……怖。
「……まーたスベッたわ。ほんま死にたいわ」
「帰る時間も考慮して、そろそろ仕上げないと大会に間に合わないぞ」
「わかっとるわ! しかしなぁ、大会の歴代優勝者が
この星の住人相手に大ウケしたっていうやないか。
ワシらもここでウケをとって勢いつけんとなぁ」
「じゃあ、場所変えてまた攫おうか。
と、その前にいつも通り、彼女の記憶を消して帰してからね」
「ワシも自分がスベッた記憶を消したいわ……。
あ、腹いせにこいつの肛門と犬の肛門入れ替えたれ」
え、じゃあUFOに攫われた人の記憶がないのってこういう……。
てか、え、待って、肛門って冗談よね、ね? あはは、面白い! あ……