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ノマと魔法使い  作者: 鬼桜 寛
第1章 落ちこぼれ魔法使いとわがまま王子
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第3話 眩しい彼女

 ウルマとアダが相談した結果、無事にリリアのシシカ村での修行が決まった。

 と言っても、村側としては初めから断る理由などなかった。それでもリリアはこちらが恐縮してしまうほどに、何度もお礼を言っていた。


 明日の朝一番で、ウルマが村のみんなにリリアのことを紹介するらしい。

 きっと明日からは慌ただしい日常が訪れるのだろう。


 シシカ村での修行の決定に伴い、リリアはノマの家で生活をすることとなった。

 ノマが家の周辺をリリアに案内していると、こちらに向かって小柄な少女が走ってきているのが見えた。


「おにいちゃあぁぁーーーん!」


 少女は遠くから声を張り上げている。そんな大声でなくても聞こえるのに。


「お兄ちゃん?」


 リリアが軽く首を傾げてノマを見る。


「僕の妹のソラです。いつも騒がしいやつで……」


 柵を軽々とジャンプして越えたソラは、食い気味でノマに詰め寄った。短く切り揃えられた髪の毛が勢いよく揺れる。


「とてつもなくカワイイの女の人と歩いてたってほんとうッ!?」


 言いながらソラはノマの隣にいたリリアを発見する。途端に、あぁっ! と声を上げた。


「ほ、本当だぁ……!」


 ソラは顔を両手で覆い、わざとらしく後ずさりした。


「眩しい……あたしには眩しすぎて直視できないよお兄ちゃん」

「え……! わ、わたし、今光ってますか?」


 リリアはくるくると不安げに自分の体を見まわした。


「真面目なところも更に眩しい」

「えっ!? それって、どういう……?」

「ソラ、リリアさんが困ってるから」


 このままだと変な方向に話が行きそうだったので、ノマが二人の間に入る。


「ひひ、ごめんねお兄ちゃん。お兄ちゃんにもついにカノジョが出来たんだと思うと、あたしは嬉しくて嬉しくて」


 ソラは無邪気に笑う。父さんと同じようなことを言うなぁ。ノマはため息をついた。


「違うよ。リリアさんは村のお客様だから」

「そうなの?」

「はい。わたしは──」


 リリアは恒例の自己紹介を終え、ソラと握手をした。


「魔法使いだって!? す、凄いや! そんなものすんごい人がこの村に来てくれるなんて!」


 そう言った後、ソラは残念そうにがっくりと肩を落とした。


「あぁーリリアさんの魔法、あたしも見たかったなぁ」

「そ、そんな、見せびらかすような大層な魔法でもないですので」


 リリアは恥ずかし気な様子で頬を染めた。


「でもさ、お兄ちゃんよかったね」

「何がだよ」

「ひひ」


 ソラはノマの質問には答えなかった。代わりに歯を出してにこやかに笑うと、リリアをソラお気に入りの場所に案内すると言い出した。

 今日はリリアも疲れているだろうし今度にしろと意見すれば、ソラは唇を尖らせた。


「ちぇー。リリアさんはどれくらい村にいる予定なの?」


 ソラが尋ねれば、リリアは指先を頬にあてた。


「王からの派遣期間は一ヶ月ほどです。だいたいの魔法使いは、一ヶ月で次の試験に合格するための魔法力マナエナジーが貯まるので」

「まなえなじー?」


 ノマとソラが同時に呟くと、リリアは微笑んだ。


「わたしたち魔法使いは、魔法力マナエナジーを得ることによって自身の魔法能力を上げることが出来るんです。魔法力マナエナジーとは、簡単に言えば人の喜びや感謝の気持ちです」


 するとリリアは錫杖の赤い宝石を指さした。


「魔法使いが人から得た魔法力マナエナジーは、ここに貯まります。一定量貯まると、それを元にして今より強い魔法が使うことが出来るんです。けれど、魔法団体リリックに所属する魔法使いは、国内で強力な魔法を使用するには昇級試験に合格しないといけません」


 試験に合格しないまま現在の階級以上の魔法を使えば、罰せられるらしい。

 ノマから見た魔法は、夢のような能力だ。しかしそれは同時にとても危険なものとも言える。だからこそ魔法団体は厳しく取り締まっているのだろう。


「じゃあ、リリアさんの修行ってすごく大事なものなんじゃん」


 ソラは真面目な顔で言った。

 見知らぬ土地で人と関りを持つと共に、人助けをして他者から感謝や喜びを得なければならない。

 そう簡単に出来ることではないということは、リリア自身もよくわかっているだろう。


「はい。ですがわたしは、試験に合格するためや魔法力マナエナジーを得るためにこの村へ来たわけではありません。魔法使いとして、みなさんの助けになれたらと思うのです」


 そしてリリアはノマに言った言葉を繰り返した。


「魔法で人助けをするのが、わたしの夢ですから」


「お兄ちゃん、リリアさんすっごくかわいい上にかっこいいよ……。お兄ちゃんにはもったいないよ」

「だから、そういうのはリリアさんに失礼だろ」

「ひひ、ごめんごめん」


 けれど、リリアのことを純粋にかっこいいと思ったのは事実だった。

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