第3話 これから、リリスと話します
ギリスさんとリリスの二人に出会ってから二時間。
俺は馬車に揺られながら、一緒に馬車の荷台にリリスと色々なことを話していた。
「レイジ君は、ウグランタ街に入ったら冒険者ギルドで冒険者登録とかするの?」
「うーん、はっきり言ってそこら辺のことはまだ迷ってるんだよね・・・。冒険者の方が稼ぎやすそうだけど、命を落としてしまう可能性があるし、商売の方は命を落とす可能性は低いけど、しっかりと稼げるかは分からないし・・・」
リリスがそんなことを聞いてきた。
俺は、ギリスさんとリリスと出会う前に歩きながらどうやってお金を稼げばいいのかを考えていた。
そしてその結果、二通りの答えが出た。
一つ目は、ファンタジー小説などでお馴染みの冒険者ギルドに冒険者登録をして冒険者になる。
二つ目は、露店などを大通りにいくつも出して様々な日常品などを売って商売をする。
だが、この二つとも大きなメリットとデメリットが存在した。
一つ目の冒険者は、命を懸けて依頼に挑むためお金は稼ぎやすいが、命を落としてしまう可能性がある。
二つ目の商売は、街の中で店を出すため命を落とす可能性は低いが、商売の才能次第ではお金を稼ぐことが出来ないかもしれない。
俺は、そんなことを考えながら「冒険者」か「商売をするか」で悩んでいるとリリスに答えた。
「わたし的には、商売をするよりも冒険者になることを勧めるかな・・・」
「その、理由は?」
「確かに、商売をすれば命を落とさずにお金を稼ぐことが出来るかもしれないけど、商売をするということ自体が難しいことなのよ・・・。その前に、商売をするに至っては自分の店を出さないといけないから必須的にお金を借りないといけないしね」
「そ・・・そんなに、商売って難しいのか?」
「うん、難しいよ。実際にレイジ君見たく冒険者か商売をするかで悩んで商売を選択する人は多いけど、失敗する人も同じぐらいに多いらしいよ」
「な・・・なるほど、それで失敗した人は何が原因で失敗したんだ?」
「うーん、主な原因として上げられるのは三つかな。一つ目は、元々商売の才能が無くって中々商品を売ることが出来ない。二つ目は、商売をするに至って大切な人脈を作ることが出来ない。三つ目は、人の関心を引く商品や使い道のある商品を手に入れることが出来ない。そして、商売を失敗してしまった人は、お店を出すために借りていた借金も払えないから、奴隷商人に売られるのがお決まりになっているね」
「な・・・なるほど、そうゆう事なら冒険者になる方が良さそうだな」
リリスは特に考えることも無く、「冒険者を勧める」と即答した。
俺は、余りにもリリスが答えるのが早かったため、リリスに「冒険者」を勧める理由を聞いた。
リリスは真面目な表情をしながら、商売とは如何に難しいものなのか俺に詳しく説明してくれた。
俺は最後の「奴隷商人に売られる」と言う言葉を聞き、商売をするのでは無く、冒険者になることを選ぶことにした。
「まぁ、こんな話を聞いたら冒険者を選ぶのが普通だよね」
「ま・・・まぁ、奴隷商人に売られる可能性があるなら、冒険者を選んだ方がマシだしな・・・」
「でも、冒険者でも気をつけないと行けないことは沢山あるからね」
「例えば、何があるんだ?」
「冒険者ギルドにはね、魔物討伐の依頼と同じぐらいに護衛の依頼も同じぐらいあるの。魔物討伐は失敗しても特に罰則とかは無いけど、護衛依頼を失敗して護衛対象を死なせてしまった場合は金貨十枚の罰則があって、更に護衛対象を見捨てて、自身の命を優先した場合は即刻冒険者登録が抹消されて指名手配されてしまうの」
「し・・・指名手配!?確かに、護衛対象を見捨てるのは良くないことだけど、そんな厳しくしなくってもいいんじゃないか?」
リリスはそう言い、俺に冒険者になるに至って気をつけることを話してくれた。
リリスが言うには、冒険者ギルドにはファンタジー小説では定番の魔物討伐の依頼と同じぐらいに護衛依頼もあるらしく、魔物討伐を失敗しても特に罰則は無いが、護衛依頼を失敗してしまった場合は罰則として金貨十枚を払わなければならないらしい。
更に、護衛対象よりも自分の命を優先し、護衛対象を見捨てて逃亡した場合は何と指名手配されてしまうらしい。
俺は、その事を聞くと思わず大声を上げて驚いてしまった。
「最初はみんなそう言うの。でも、冒険者ギルドは冒険者では無く市民の信頼で成り立っている部分が大きいの。だから、冒険者が護衛対象を見捨てて逃亡すると言うのは、冒険者ギルドの信頼を地に落とすのと同じことなの。だから、冒険者ギルドは出来るだけそうゆう事が起きないように護衛対象を見捨てて逃亡した冒険者には厳しい処罰をすることになったの」
「そ・・・そうなんだ。それで、過去に護衛対象を見捨てて逃亡して指名手配になった冒険者は居るのか?」
「んー。私が知っている限りでは三人指名手配になっているわ。」
「さ・・・三人も!?それで、その三人はもう捕まってるのか?」
「ううん。その三人は先月指名手配されたんだけど、それぞれ三人とも「剣術」 「魔術」 「弓術」のスキルを持っていて中々捕まえることが出来ていないらしいの。目撃例としては、魔物討伐の依頼を受けている最中や護衛依頼を受けている最中にその三人に襲撃されたっていう話しが多くあるみたいなの。だから、レイジ君も冒険者ギルドで冒険者登録をして依頼を受けることになったらその三人には気をつけてね」
俺は冒険者ギルドは冒険者たちによって成り立ってると思ったけど、どうやらそれは間違いだったらしい。
リリスが言うには、冒険者ギルドは市民の信頼で成り立っているため、そんなことがあったら冒険者ギルドの信頼を地に落とすことになってしまうから、そんなことが起きないように厳しく処罰することになったらしい。
更に、俺は興味本位で護衛対象を見捨てて逃亡し、指名手配された冒険者が居るのかが気になり、リリスに聞いてみると先月三人の冒険者が指名手配されたらしい。
「わ・・・分かったよ。それで、その三人の名前や特徴とかは分かるか?名前や特徴が分からないと警戒とかが出来なくって襲撃される可能性もあるし・・・」
「剣術のスキルを持っているのがワタルって言って、三人のリーダー格で体格が良くって右の頬に二本の傷があるのが特徴かな。魔術のスキルを持っているのがタルオって言って、三人の中では一番慎重で身体が細くって口元に傷があるのが特徴かな。弓術のスキルを持っているのがルルスって言って、三人の中では頭の回転が早くって右耳に傷があるのが特徴かな・・・。それで、三人とも冒険者ランクはDランクで三等級冒険者の中では上位に入るぐらいの実力者だから、もし出会しても直ぐに逃げてね」
「ワタル、タルオ、ルルスの三人だな・・・。リリスの言う通り、その三人に出会したら直ぐに逃げることにするよ」
俺は指名手配された三人の冒険者の名前と特徴についてリリスに聞いた。
リリスは丁寧に冒険者の名前とスキルと傷などの特徴について詳しく説明してくれた。
指名手配された三人の冒険者は「剣術」のスキルを持つワタルと「魔術」のスキルを持つタルオと「弓術」のスキルを持つルルスと言うらしい。
そして、三人の冒険者ランクはDランクであり三等級冒険者の中では上位に入るらしいけど、俺は冒険者ランクについてはよく知らないため、Dランクや三等級冒険者がどれぐらい強いのかと言うことははっきり言って分からない。
だが、リリスがあんな真面目な表情をして言うってことは、三人はそこそこ強い冒険者と言う認識をした方が良さそうだと思う。
「おーい、色々と盛り上がってるところ申し訳無いが、ウグランタ街の門が見えてきたぞ二人とも!!」
リリスとそんなことを話していると、馭者台に座り馬を操っているギリスさんが俺たちにそう声をかけてきた。
俺は、ギリスさんの声が聞こえると荷台から顔を出した。
すると、数メートル先に目的地であるウグランタ街の門が見えてきた。