第2話 これから、馬車に乗ります
「・・・・・・ここは、草原か?」
次に、目を覚ますと雲ひとつ無い綺麗な青空が目に映った
そこから、更に視線を横に移して見ると、黄緑色の草原の上をバッタのようでバッタでは無い生き物がピョンピョン跳ねて飛んでいた。
俺は、そんな生物を横目で追いながら、身体を起こし念の為身体に異常が無いか調べて見たが、特に異常も痛みは無かった。
次に、俺は周囲の景色を確かめるために辺りを見渡してみたが、周囲には田舎でしか見たことの無い山々や草原が広く広がっており、道と言える道は無かった。
そして、そんな景色を見ながら俺は改めて「ここが、異世界」なのかと再認識した。
「取り敢えず、道に出てみるか。道にさえ出て、その道を歩いて行けばいつかは村や街に到着することはできるだろうし、もしかしたら人と会えるかも知れないし」
俺は、取り敢えずそう判断をし人が歩くことができる道を目指し草原の上を歩き出した。
しばらく、草原の上を景色を眺めながら歩いていると遠くの方に道らしきものが見えてきた。
道らしきものに近付いて行くと、その道らしきものは確かに俺が思った通り道だった。
「取り敢えず、道に出ることは出来たけど・・・。俺は、どっちを進めばいいんだ?」
俺はなんとか道に出ることは出来たが、その道は左右に別れており、どっちに進めば街や村に辿り着くことができるのかが分からず中々決断することが出来なかった。
俺は右、左どっちに進めばいいのかと数分間ずっと道を前にして悩んでいた。
俺が、ずっとそう悩んでいると頭の中に声が聞こえてきた。
『あーあー。聞こえますかー?』
「この声は、アイリス様ですか?」
頭の中に聞こえてきた声の主はアイリス様だった。
『はい、そうですよ。取り敢えず、無事に転生することが出来て良かったです』
「そ・・・それで、アイリス様これって何ですか?頭の中に声が聞こえるんですけど・・・」
『これは、貴方が転生するに至って特典として手に入れた転生特典の一つの「念話」というものですよ。この「念話」があれば私たち女神などと会話することも出来ますし、仲間とも隠れて会話することもできます。今回は貴方に一つアドバイスを送るために念話をして見ました』
俺は、頭の中に聞こえきた声は何なのかが気になり、直接アイリス様に聞いてみることにした。
すると、アイリス様いわくこれは俺が転生特典の一つとして手に入れた「念話」と言うものらしい。
確かに、言われて見れば「念話」と言う特典を手に入れた気がした。
そして、アイリス様は「念話」の説明をしながら、何故自分に「念話」をしたのかという理由を話してくれた。
「は・・・はい、ありがとうございますアイリス様」
『貴方はどうやらどっちに進めばいいのか悩んでいるようですね?』
「は・・・はい、その通りです」
『どっちに進めばいいのか悩んだり、道自体が分からなくなった場合は転生特典の一つ「マップ」を使用すれば直ぐにどっちに進めばいいのか分かったり、道に迷わずに済みますよ』
「えーと、「マップ」ですか?」
『はい、「マップ」ですよ。因みに、スキルの使い方は私がこれから言う言葉を繰り返せばスキルを使うことが出来ますよ』
「はい、分かりましたアイリス様」
『スキルを使いたい時は「スキル マップ」などと言えば、そのスキルを使うことが出来ます。是非、試しにやって見てください。それでは、何か分からないことがあったら何時でも「念話」を使って聞いてくださいね、では頑張ってくださいね』
「はい、ありがとうございましたアイリス様」
アイリス様は念話を使い、どっちに進めばいいのか分からない時や道に迷った時には転生特典の一つである「マップ」を使えば大丈夫だと教えてくれた。
そして、俺がスキルの使い方が分からないことを気付いていたのか、丁寧にスキルの使い方までも教えてくれた。
「【スキル マップ】」
俺はアイリス様の念話を終えた後、早速転生特典の一つである「マップ」を使ってみた。
すると、俺の目の前に地図が出現した。
地図の中心に何やら赤色の逆三角形のマークが表示されているのだが、恐らくそのマークは俺のことを表しているのだろう。
俺は、試しに地図を左側にスクロールしてみると八キロ先ぐらいにウグランタと言う街があり、今度は右側にスクロールしてみると十キロ先ぐらいにロアンタと言う街があるということが分かった。
俺は、八キロも十キロもそんなに変わらない気はしたが、今は早く街に着いた方がいいだろうと思いここから左に八キロ先にあるウグランタ街に向かうことにした。
ウグランタ街に向かうことを決め、しばらく歩いていると
俺はあることに気が付いた。
それは、ウグランタ街までは八キロあり、時間にして数時間以上かかる距離だと言うことと、手元に食糧や水が無いことだった。
ここが、地球だったら自動販売機を見つけて飲み物とかを買うことが出来たが、生憎ここは異世界でありそんな自動販売機と言うものがあるはずは無いだろう。
それに、お金も一応小銭が数枚あるが、こっちの世界で使えるかどうかは分からないだろうし・・・。とゆうか、普通は使えないだろうな・・・。
俺は、そんなことを考えながらも取り敢えずウグランタ街を目指して歩いていると、後ろから何か物音が聞こえてきた。
俺は、「何だ?」と思いながら後ろを振り返ってみると、何かがこっちに向かっていることに気が付いた。
その、何かはどんどん俺に近付いて来た。
そしてその、何かがどんどん近付くに連れ、その何かの正体が馬車と言うことに気が付いた。
馬車がどんどん俺に近付いてくると、馬車に乗っている人に「邪魔だ!!」などと言われないために、左側に寄り右側を開け馬車が通りやすくした。
馬車はそのまま俺が開けた右側を通過して行ったが、何故か数メートル先で停車してしまった。
「おーい、君!!」
俺は「何で馬車は停車したんだ?」と思いながら、再び歩き出そうとすると、数メートル先に止まっている馬車から一人の男性が降りて来て、俺に向かって手を振りながら走って来た。
「え・・・えーと、何でしょうか?」
「君は、一体ここで何をしているんだ?」
「何って、この先にあるウグランタ街に向かっているんですけど」
「ウグランタ街だと?ウグランタ街はここから七キロぐらいあるじゃないか!?」
「えぇ、まぁそうですね。まぁでも、歩いていたらいずれ着くと思うのでそんなに心配しなくっても大丈夫ですよ」
「いや、心配はするさ。ここから、歩いてウグランタ街に向かったら五時間以上かかるし魔物や盗賊などに襲われる可能性もあるんだぞ」
「えっ・・・、本当ですかそれって?」
「あぁ、本当だ。だから、ここを通る奴は冒険者を雇うか俺見たく剣などを武装している。君みたいな丸腰の子が歩いていたら盗賊などにとっては絶交な獲物だろう」
「・・・・・・・・・」
男性にウグランタ街に向かっていることを話すと、男性はとても驚いた様子を見せていた。
まぁ、確かに七キロぐらいある街に徒歩で向かっていると聞いたら誰って驚くのは無理は無いだろう。
だが、俺には馬車などの移動手段が無いため歩いて行くしか無かったのだ。
男性は驚くと同時に、何処か俺のことを心配している様子が伝わってきた。
更に、男性の話を詳しく聞いてみると、ここは草むらが生い茂っており身を隠しやすい場所ということもあってか盗賊や魔物などに襲撃されやすいということが分かった。
そして、男性は続けながら俺みたいな丸腰の人間が一番盗賊などに狙われやすいと言った。
俺はその男性の話を聞くと、言葉を失ってしまった。
「・・・・・・もし、君がいいのなら私の馬車に乗って行かないか?」
「えっ・・・、いいんですか?」
「あぁ、私たちもウグランタ街に向かっているし、君みたいな未来がある若者をここで見捨てる訳にも行かないしね」
「あ・・・ありがとうございます!!」
「はははっ、お礼何ていらないよ。取り敢えず、私の馬車に向かおうか」
「はい!!」
俺が言葉を失っていると、男性が「自分の馬車に乗って行かないか」と提案してくれた。
俺は思わず大声で男性にそう聞いてしまった。
男性は嫌な顔をせず、自分もウグランタ街に向かっているしと答えてくれた。
俺は男性にお礼を言った。そして男性と共に数メートル先に止まっている男性の馬車に向かって行った。
男性の馬車の前に到着すると、馬車の荷台から俺と同い歳ぐらいの少女が降りてきた。
少女は黒髪を三つ編みでまとめており、白色を基調としたワンピースを着ており「町娘」と言う言葉が似合う少女だった。
少女は男性と一緒に居る俺をチラッと見たあと、口を開いた。
「お父さん、この人は?」
「この子はさっきすれ違った子なんだけど、歩いてウグランタ街まで向かうと言っていたから、可哀想だと思って私たちの馬車に乗せることにしたんだ」
「なるほど。それで、名前は何っていうの?あっ、因みに私はリリスって言うの」
「確かに、まだ君の名前を聞いていなかったね。因みに、私はリリスの父親でギリスって言います」
「え・・・えーと」
男性は少女に俺を自分の馬車に乗せることになった経緯を一から全て説明した。
少女は特に反対することも無く、男性が自分の馬車に俺を乗せることを了承した。
俺が特に少女が反対しないことに驚いていると、少女が俺の名前を聞いてきた。そしてそれと同時に「リリス」と名乗った。
そしてリリスの父親である男性も「ギリス」と名乗った。
俺は二人から名前を聞かれとても焦ってしまった。ここが地球なら名前を聞かれても本名を言えばいいだけなのだが、この世界で本名を名乗ってしまえば名前から俺がこの世界の人間では無いことがバレてしまうだろう。
俺はとにかく本名以外の名前を名乗るために、名前を考え始めた。
「お・・・俺は、レイジって言います」
「レイジ君ね」
「レイジ君って言うのか」
「は・・・はい、よろしくお願いします」
「うん、よろしくねレイジ君!」
俺は考えた末、転生する前にずっと読んでいたライトノベルの主人公の名前を借りることにした。
俺が名前を名乗るとリリスとギリスさんの二人は俺に手を差し出した。
俺はその差し出された手を強く握り返した。
「それじゃ、レイジ君はリリスと一緒に荷台に乗ってくれ」
「はい、分かりました」
ギリスさんからそう言われ、俺はリリスと共に馬車の荷台に乗り込んだ。
ギリスさんは俺とリリスが荷台に乗り込んだことを確認すると馬に鞭を入れウグランタ街に向かって馬車を走らせた。