湖畔の愚者
メルヘン回です。
これは皆さんご存じ、あの有名作品のオマージュです。
*お魚さん目線
澄み渡る空。底まで突き抜けるかのように見渡せる、透明な湧き水。
豊富なごはん。今日も今日とて平和だった。
やつが来るまでは。
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どや。この華麗なる着地を!美しくすらりと伸びる四肢で天使の降臨のポーズを作って、あと1mで地面って時に、おれは気づいちゃった。
地面の上で何か光ったのだ。青いエフェクトの光・・・。蝶のようだ。うん? 蝶?
よっとっと。あぶねえ。おれはアクロバットしながら、華麗に一寸の虫の命を救っていく。
だが、一つ失念していたことが彼にはあった。自身の身の安全である。
盛大な水しぶきを上げ、パラグライダーは大破した。
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「がばっごぼ、げぼ。死ぬかと思った・・・。」
取りあえず、岸に上がって、ここまで安全におれを連れてきて下さったパラグライダーに敬礼をし、どうやってレイシャさんにお詫びをすれば良いか悩んでいた。
この罪深き乙女が悔い改めるには・・・。
う~ん。
「ぶわくしょい。」
恨めしげに湖をみていると、突然水面が光り輝き、ニンフさんが出てきた。
「あなたの落としたのは金の斧ですか。それともこちらの銀の斧ですか。それともぶっ壊れたこの機械ですか。」
な、なるほど。確かに原型をとどめていなさ過ぎてもはや分らん。
「ぶっ壊れているその機械です。」
「あなたは正直ものですね。ご褒美にこの金の斧をあげましょう。」
「・・・。」
いったん、金の斧についてはスルーをし、流れるような仕草で土下座をさせて頂いた。
「静寂なる時に、私のような物がご迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ございません。環境破壊に器物破損。弁明の余地がございません。いかようにもお裁き下さいませ。」
謝り方が分からなかったので、取りあえず、レイシャさんの貴族教育の賜物を利用させていただいたのだが、お門違いである。その身体は自己判断で、罪と罰の対価に充てて良いものではないのだから。
だが、どうやらそれも杞憂に終わったようだ。
「金の斧いらないんですか? じゃあ、銀の斧もセットであげます。」
「・・・。」
別に、無視したかったわけじゃない。
あまりに彼女との認識に差がありすぎて言葉がでなかったんだよ。
おれにかわいそうだなって思われたと誤解した彼女の暴走が始まった。
「い、いまなら、このティッシュも何と6点セットでついてきますよ?」
「・・・。」
なにか、答えないと!気の利いた一言が出てこねえええ!
「クッ。じゃあ、とっておきの、ニンフの魔力が込められた、高級洗剤もあげましゅ・・・。」
「・・・。」
ほうら、彼女もう、半べそかいているぞ!至急、フォローを!神速で!
「じゃ、じゃあ、私の命を捧げますわ。心はすぐには無理ですけれど。いずれあなたを愛して見せますから。ひっく。」(本泣き)
何が、彼女をそこまで言わせるんだ。ニンフの洗剤! 最高!そこで手をうっとくべきだった。
なんておれは気が利かないんだ。
この子きっとアホの子だけど、たぶんめちゃくちゃ純粋で、いい子だよきっと。多分だけど。
すまん。おれのせいだ・・・。
唇を嚙みしめ、拳を握った。
ツウウ。一筋の水滴がおれの頬を伝った。
「ご、ごめんなさい。私もう帰ります。」
彼女は湖に溶け込んでいった。
更なる地雷を踏みぬいたことを今さらになって気づく。もうおれは、彼女に謝る事さえ出来ない。
全身の力が抜け、崩れるように膝を着く。
湖の底から泡が立ち始め、突如大きな水柱が10本たった。
「うちの子が世話になったな。」
それはもう美しい、ニンフのお姉さん方がいらっしゃったのだった。
ジェンダーフリーのこの作品で、自己評価最底辺のニンフの登場回。
もうちょいロマンスっぽくしたかった。(涙)作者の力量不足です。どうか嫌わないであげて下さい。
登場回こんなでしたが、ホントは良い娘なんですよ。




