秘めたる思い
シリアス回です。どうやらため口になっているようですよ?
これって進歩では? ご想像にお任せします.
大事な話ってのがあるらしい。
レイシャさんと30km先の洞窟までお出かけすることになった。
これはおめでたの報告なのか? レイシャさんに似たらきっとかわいい子になるよ。きっと。
おれに似たら・・・。普通になってしまうだろう。
頼む。神様! 伝われ~!
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シュリシュリシュリシュリ。
隣でレイ(体はレイシャ)が手の平をを胸元で合わせ、ひたすらこすっている。(?)
「どうした。寒いのか。」
「・・・。え?」
「ほれ。」
何か心配してくれているらしい。洞窟は確かに外気温に比べ冷えることは冷える。
何度かって? そんなん温度計がねえと分らんよ。
ありがたく上着を受け取っておく。
「ここが例の洞窟だ。」
ゴルディオン洞窟っていうらしい。
何か、秘密にしたい事を告白したり、人に打ち明けたりするのに人気のスポットなんだそうだ。
「その、非常に言いにくい事ではあるのだが。今伝えさせてくれ。」
「どうした。改まって。おれとレイシャさんの仲じゃないか。」
出会ってまだ3日目である。
「虫の良い話というのは、重々承知の上なのだが・・・。」
レイシャさんの願いとは、おれの身体を1ヶ月ほど貸してほしいとの事だった。
その間に、どうしても挑みたい試練があるのだそうだ。
「すごく、危険な任務もあり、無傷で返せる保証もできない。」
今しか挑むチャンスを得ることは難しい事とたどたどしくではあったが、真剣に話してくれた。
「いいよ。何ならもう少し時間をかけてくれても構わない。」
「どうして。どうして、私の事をそこまで信じてくれるんだ。」
なぜっておれの命を救ってくれたのだから。それくらいは当然だ。一生の恩はこの世にある。
「なぜって、言わなきゃ分からないかな。」
ウインクをして手でハートを作ってみせた。
レイシャは困ったように笑っていた。
帰り道、彼女が洞窟の壁に指文字で何か書いているのが見えた。
「レイシャ、帰ろう?」
「ああ。」
おれに見られている事には気付かなかったのだろう。あれは確かこの世界の文字で、”許して下さい”
そう見えた。
彼女はまだおれに心を開いてくれていないのかもしれない。
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せっかく遠出してきたんだ。美味いもんでも食っていこう。
「向こうの村の端に、おいしいトルキッシュ料理の店があるんだ。」
「お、マジで? 世界3大料理じゃん!」
「世界3大料理とは何だ? 大きいのか?」
「そっか。こっちではそんな言い方しないのか。」
おいしくて、世界中でも有名って事!
腹ペコの俺たちは、駆け出した。
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*飯テロです。夜間はご注意ください。
うめえ。なんだこのターキー。歯ごたえあって、あご疲れてきた。でもレイシャの歯つええ。
なんなくザクザクいける。
お隣のレイシャさんは、食べるのにそうとう苦労していらっしゃる。
元の世界の人はあごの力が弱いのだ。
ごめんね。レイシャさん。実は1年前から朝食のパン、フランスパンから食パンにしてました。
イーストたっぷりのフワッとしたやつ。
「ぐぬぬぬ。あれ、こんなに硬かったか?」
「今入れ替わり中だから・・・。」
「そうか。」
こんな所にも弊害はあるものだ。
帰り道、乗合馬車で揺られながら、レイシャさんに相談された内容が頭をよぎる。
帝都図書館の閲覧権を手に入れるため、”魔導暗殺者”になるということだった。
暗殺者とは何とも物騒だが、彼女はそれに賭けてみたいと言った。
レイシャさんは貴族令嬢ではいらっしゃるものの、地方の末端なので、王城に招待どころか、入城資格ももらえないそうなのだ。
いや、暗殺者は許可されるってどういう事?
もちろんおれも気になったさ。
神託で称号を授けられる際に、この国の王族に攻撃できなくなる、魔法をかけられるということなのだそうだ。
いや、何の呪いだよ。つまり国の飼い犬になるってことらしい。
そんな事を犠牲にしてでも、帝都図書館の文献や資料は、現状を打破する情報を隠し持っている可能性が有る以上、無視できない存在であるとの事だ。
しかし、先ほどのケパブを食べている時、青唐辛子を間違ってかじってしまった時の反応、
レイシャさん、すげえ可愛かったな。一瞬おれの顔がレイシャに見えたほどだ。
美女のオーラってしゅごい。好き。しかし、おめでたではなかったな。残念。
よし、今晩、いやいやいや、おれ抱くのは良いけど、抱かれるのは半端なく嫌だ。
生殺しってこんなにもツラい事だとは。
称号って魂に刻まれるそうなので、レイが自分の身体に戻れた時には、暗殺者の称号をレイシャさんが
持っていってくれるらしいですよ。前例がないからエビデンスは無いそうですが。
あ、すいません。ここって重要です。たぶん。
あれ。どうやら主人公、お母さん、自分になるって事すっかり忘れているようです。




