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異世界その4

んんん……同じようなディフェンスでは、拉致があかないのなら……


(わたくし)はお茶を含むと吐きたいのを抑えて飲み込む。メイドを手招きして、近くに呼ぶ。


『今日は特別な日だから、好みのお茶を出すようにね。もう時間がないから良いけど。』


ティーカップを持ってない左手でメイドの額に軽くデコピンをした。


『ア、イタ……す、すいません。』


メイドは額を手で押さえた。ちょっと驚いた様子で。罰を与えたから、もうイベント?起きないでしょう。何となく大丈夫な気がする。しかし、ドジなメイドね。名前、なんていう子だったかしら……可愛い子、本人に直接聞くのは失礼だから後でクラフトに聞いておきましょう。


テーブルの向こうの3人は(わたくし)のデコピンを驚愕の眼差しで見ていた。


まあ、こんな感じくらいならいいわ。それほどひどくないでしょう。

それにしても、サムソーニアは愛されてない設定なのですね。寂しいな……元の世界に帰れないとするとちょっと嫌だわ。 


執事のクラフトがお父様の近くに駆け寄り、何やら話す。当然、ここからでは声が聞こえないが……馬車の準備が出来たとかだろう……あ、ヤバイ、悠長に朝食食べてる場合じゃないわ。断罪イベント始まる、回避しなきゃ。



3人は立ち上がり、歩き出し、(わたくし)もそれに続く。ゆっくりと離れて歩く。

3人とも美しい黒髪であることが余計疎外感を感じる。私は緑の髪だから。

彼らも、屋敷外から出る直前に鬘を被る。


本当にこの鬘すごいな。まず瞬時に地毛が全て収納されてしまうのがすごい。そして繋ぎ目が全くわからない。この世界の魔道具という認識があるのでこの状況をごく当たり前に受け止めてしまっているが。これが現代にあれば、隠したい人にとっては最強だわ。まず、鬘とは思えないだろう。まるで重さも感じない。


あ……今は鬘の事はさておき、どう回避するかだよ。


鬘はいいんだ鬘は!あー、ヤバイ、焦る。





###########





馬車に乗り込むが、どうしようーーーーっと思いつつも結局は話しの流れに合わせるしかない。


4人を乗せて出発すれば、美しい風景が車窓から流れて見える。

豊かそうに()()()ブケンド王国の王都。

ああ、いいな。


何度か行ったヨーロッパの古い街並みを思い浮かべる美しい建築物の数々。

こんな状況でなければ楽しめるのに。


屋敷はこの国の王都中心、貴族街の一等地にあり、本日約束された指定の場所へ向かう。それは郊外にある王家の別荘地ヘルムタールだ。

ヘルムタールは幼い頃に何度か行った事がある。王国の王子はお会いした事がある……かな?どのような方だったかしら?んんんん?


『サムソーニア!』


『ひゃぃっ』


考え事をしてると、向かい側にいたお父様に突然声をかけられ、変な声出してしまった。


『……一連の流れはわかっているだろうが、粗相のないようにな。決定事項の形式的なものだが、万が一という事もある。我が国、いや、王家の不穏な動向についてはお前も認識済みだろうから、今更言うまでもないが。公爵でもないお前が王家に嫁ぐというのは、余程財政が逼迫していない限りはあり得ない栄誉だからな。』


『火の車財政。まあ、当然のことですよね。これだけ他諸国との争い、貴族内(みうち)の軋轢。蛮族の襲来。特に先の戦争は思い出したくもないですね。』


隣に気怠そうに座る義兄は腕を摩りながら言った。


『まあ、マーブル。まだ、傷が疼くのね。お可哀想に。でも、大丈夫よ。サムソーニアがリーヴィ王子との婚約で門外不出の治癒草ジャカルターナが手に入れられるわ。あー、良かったわ。我がシェルダンテールの唯一の汚点も同時に片付けられるし、宮廷預言者様に感謝しないとですわね。』


斜め真向かいの義母は、扇を口に当てながら上機嫌で話す。


ジャカルターナ……最上級レベルの宮廷魔道士が育成する伝説級の治療草。ほぼどんな症状でも治療することが出来、一説には蘇生術にも使用されるという噂のものだ。ああ、義兄は……そうだ、先の戦争……隣国ボウリとの戦争で受けた傷が元で宮廷騎士をやめていた。そういえば、それから性格がますます捻くれていったな。


『唯一の汚点……蛮族に多くいる緑の髪。鬘を被り続けるのだぞ。預言者の戯言と糺弾される可能性がないとは言い切れないのだからな。』



『理解しておりますわ、お父様。(わたくし)は本来なら選ばられることはないことを』


今回の婚約劇は王家の預言者による占いという名の政治駆け引きだ。隠すとは言っても、王家ではこの髪のことは把握してないわけはないのだが……。預言者の言葉は王よりも絶対となっているらしい。本来ならそう思うだけでも不敬であるのだが。


この髪は(わたくし)の不幸の象徴。


妖精の取り替え子(チェンジリング)と揶揄され、両親の愛に恵まれずに傲慢で我儘になった元凶。


王家に 蛮族の血脈を入れる可能性を引いても、財政難、待ったなしという所であり、王位継承権が今のところ5番目のリーヴィ王子だからこそ容認される運びとなった。

対外的に隠された婚約はしてもあくまで仮のという程度で、無事婚姻出来ても離婚してから他の貴族へ下賜される可能性すらあるわけで……これって婚約破棄される前に、どっちみち駄目じゃない?


……もっとふわっとした設定にしてよ。



『お前は今朝から、なんというか、様子がおかしい。心配だ。』


怪訝そうな表情で、額に手を当てながら話すお父様。当然、私の身を心配ではないのは丸わかり。


『お前の一挙一動を国の重鎮達が注視し、王家に相応しいか否か見極めようとするだろう。心していけ。もし……不測の事態を引き起こせば、その時はわかっているだろうな。』


脅しの言葉を吐くお父様。

その時は、家を追い出されるんですね。わかります。


『わかりましたわ。』



溜息まじりに返事をした。


婚約不成立も即破滅で間違いないのですか。そうですか。


あ、そういえば……今日婚約の儀式ということは、今日すぐ断罪イベント始まるということではないのかな。


と、いうことはそもそも婚約しなければいいということだよね。


でも、婚約しないとお父様から断罪されるのか……



なんとかいい方法はないかな。







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