学園とスマホの力その3
教授は、私のこの身振り手振りが不審に思えたらしく、睨むようにこちらを見た。
いけない、色々検証するのは後だな。スマホを取り上げられる危険性もあるし……。
机の上にあるスマホを鞄の中に仕舞い込み、一応真剣そうな顔をして見せる。
いや……本当はかなり、やる気がない。
現実的ではない状況に、頭がついて行かない。
二度目の学生を経験するとはね。
これからの予定を教授から細かく説明を受ける。
今日は軽い説明会だけで、午前中には帰れるのだそうだ。
ヨーロッパナイズされた世界だと思っていたが、何気に、日本のような感じだわ。
生徒会があるとか……海外にもあったかな?
そういえば、私が婚約破棄される原因になるディリラ・ミューラートは、違うクラスだった。
朝、掲示板で確認済み。
クラスは火組で、王子とは一緒ではない。
聖女のイメージだと光だけれども、クラスの名称と授業内容に関連性がないから問題はないのか?
それに、うーん、近づくのは正解じゃないのかな?私、彼女をいじめるのだよね?
神だか、作者だかわからないけど、もっと情報が欲しいところ。
あれから、コンタクトはない。私が、傲慢、横柄になるイベント?もどきはあるけど。(主にメイドのパレット)
なるように、なるしかないのかな。婚約破棄されても、即、破滅かはわからないし。
などと考えていると、隣りからメモが回ってくる。隣りにいる見た感じ裕福そうな貴族の令嬢からだ。
髪が銀髪であり、それはおそらく鬘で間違いないだろう。
まあ、このクラスには数人しか平民はいないし、鬘を被らないのは、王族以外は大抵は平民なので判り易くもあるが。
『参加しますか?私は、午後まで従者が門に迎えが来ないので参加予定ですのよ。』
メモの内容。
ー新入生の諸君。我が学園に入学するにあたり数々の不安も多い事と存知ます。これから先の学園での過ごし方を生徒会主催で学びましょう。尚、解散後に交流会も致します。
生徒会長 サフィール・モル・リンスト
場所・アルシェンド記念講堂ー
『生徒会主催の入学式なのかしら?それともサークルの勧誘的な……いえ、何でもありません。でも、どうしましょう?これは強制ではないのですね?殆どの方が参加するのでしょうか?』
『……大きな声では言えませんけれど、平民の方は不参加ですわね。2年に姉がいるのですが、生徒会主催の行事は参加した方が良いらしいですわ。見たところ、貴方は子爵以上でしょう?』
『階級が低いと何かあるのですか?』
『んんん、……私からは言えませんわ。』
むうーー、差別的な何かがあるのかもしれない。嫌だな?悪影響あるかも。
『考えておきますわ。今日は緊張したので、早目に帰りたい気持ちもあり、迷っていますの。』
『出来たら参加していただきたいわ。そうだ、是非一緒に行きませんか?生徒会長もそれは素敵な方ですのよ。彼を目当てに参加する方も多いの。この私も入学前から噂で聞いていたので、会える日を指折り数えていたので、今、とても嬉しくて、愛好会にも入ろうかと……』
手を掴みながら、興奮した様子で喋り出す令嬢。
いかにも十代の女の子。
アイドルの追っかけのようだな。
『はぁ……まぁ……いいですけど。短い間でしたら……』
『ええ、行きましょう。私はキャストリン・デラ・ビゲンディーナ。』
『サムソーニア・モル・シェルダンテールです。侯爵令嬢ですわね、これはとんだ失礼を……』
侯爵家は名前の後に貴族の前置詞デラがつき、伯爵家はモルがつく。爵位はこの女の子の方が1つ上だ。
『同じ組ですし、気にする事はなくってよ。』
ケラケラと笑う様はあまり貴族階級っぽくなく、非常に明るい。
若い子は眩しいな。
私、ついて行けるかなー?
いざとなったら逃げるかもしれないけど。
『そこの人達、騒がないように!』
まだ、教授の話は終わってないので注意された。
あーあ、怒られたじゃないか。目立ちたくないのに。
『教授も綺麗ですわよね。』
叱られても、彼女は嬉しそうだった。
こうゆう時代が私にもあったなぁ。