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学園とスマホの力その1

アルシェンド王立学園。それはここブケンド王国最大の学問機関であり研究機関。


王侯貴族の子息、令嬢は義務教育で入れられるが、一部裕福な平民と優秀で奨学金を得て通う平民も通う事が出来た。

しかし身分格差で同じ空間を共有する事は、多くの問題を引き起こし、主に平民が侮蔑の対象になっていた。


これを苦慮した学園長ピカリン・アルシェンド三世は生徒間の問題を解決すべき機関として生徒会を発足させた。


現世の生徒会とほぼ同じような活動で、生徒間の問題解決から、様々な行事の実行委員の総括など、その活動範囲は広い。


ただ、問題はその構成。トップに当たる会長もしくは副会長には必ず筆頭聖女候補を選ぶ事だ。


学園には3年生から聖女クラスがあり、主にそこで毎年選ぶ事は容易だったが、今年は違う。


そう、平民出身であるディリラ・ミューラートの入学だ。


ディリラ・ミューラートは数々の戦地で若干8歳の頃から従軍させられた聖女であり、今回16歳になり、王国の特別待遇により入学が許される。これを平民は期待を持って歓迎した。平民から出た偉大な聖女の誕生であると……。


3年目で筆頭聖女候補として選任予定だった聖女クラスの令嬢はこれに戦々恐々としていた。


そして、その令嬢は、王国第一王子アディランの婚約者であり、この問題をより複雑にする…。



『サムソーニア、着いたから、ここで降りるのだ。』

『お兄様……送っていただきありがとうございます。』


私は頭に浮かぶ記憶にあった情報に意識が飛んでいたが、現実に引き戻された。


学園の門の前で馬車は止まった。広大な敷地面積を誇る学園の正門から校舎までは歩いて10分ほどの距離があるが、ここからは学園関係者以外は徒歩のみしか交通手段はない。

でも、シェルダンテール家から門までの道のりは馬車でショートカット。大した距離もないので護衛を付けて歩くと思っていた私にとっては少しでも楽が出来て良かった。

お父様なら、甘えるなと言いかねないと思っていたが、私と行くと言うお兄様を特に止めなかった。

お母様もこれに対して嫌味な態度を取らない。不思議だ……。

お兄様も今日から通う予定の王宮はこちらとは反対方向なのに?


『ん?どうした?』


私は、宮廷騎士の制服を着ている義兄をジッと見つめた。


ああ、見惚れてしまう。


戦闘用の鎧はまだ付けていないが、鞘に納められたまま腰につけられた剣と赤を基調としたオールインワンの高級衣服は、この美貌の青年をより美しく見せていた。

黒髪も美しいが、肩まで伸びた銀髪姿も制服に映えて、素敵だ。


『……何でもありませんわ。』


今までのサムソーニアの記憶が簡単に義兄を褒めることを躊躇させる。


『……魔道具はやたら人に見せない方がいいぞ。風紀を乱すと取り上げる教師もいるからな。』

『そうですか…… ご親切にありがとうございます。』

『……家族なのだから、当たり前だ。夕刻にはここに馬車で待機する。遠慮はするな。』


憮然な表情のままお兄様は従者にドアを閉めさせ、馬車はスピードを上げて去っていく。



門番に学園の入園証明書を見せると、入るように促した。私以外も数人の生徒達が入っていく。


『ご機嫌よう』


『ご機嫌よう、皆様』


記憶にある令嬢、令息達がいたので、名前までは記憶にないが、取り敢えず挨拶しておく。

貼り付けたような笑顔で対応。

何があるかわからないので、一応愛想を良くしておこう。


ただ、声をあまりかけられてボロが出ると面倒なので、下品にならない程度に早歩きした。挨拶はするがお話は避ける。話しかけようとした瞬間には移動するのだ。


だって、(わたくし)はアラサー……この世界では16歳だけれども。


とても気が合うとは思えないし。無理無理。





###########





のんびりと空いている席に座れた。


クラス分けの掲示板を見てから、予定のクラスの教室に入る。

クラスは星、月、太陽、光、風、火の6つに分けられた。一年目は奨学金の一般受験で入った平民以外は実力がわからないので、特にどのクラスも差がないが、二年目、三年目になればより細かくクラス編成されるらしい。

私は太陽組で主任教授は元宮廷騎士で評判の良い人物とか。


……まあ、どうでも良いけど。


鞄から、スマホを出して眺める。


やっぱり、黒い画面のままだ。


電波は届かないから、しょうがないにしても、せめて充電は満タンにしてきたから、電源はついて欲しかった。


私が、膝をつきながらだるそうにスマホを見ていると、荒い息遣いで2人のお供と共にやってきた少年が私の目の前に立った。


『おい、お前、不敬だぞ。』


少年の脇に立つ、もう大人と言っても差し支えない青年が、バンと机を叩く。


『謝れ、先に行くとは……世が世ならその場で斬られてもおかしくないのだ。』


反対側に立つ太めの青年が自分の腰につけてる剣に、手をかける。


『スケラン、カクナン、今日は初日ゆえ興奮して、作法を忘れたに違いない。狭量な男ではない。拠って、許そう。』


『『おお、流石です。』』


私は、ぼんやりそのやりとりを眺める。


コントかな?


私は、さらに爆弾を投下した。


『失礼な事をいたしまして?』


少年は、顳顬の血管をピクリと動かした。







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