どうやら俺はタイムスリップ系の転生をしたようです。
なろうラジオ大賞用小説第二弾。
俺は転生者だ。
名前は、残念ながら忘れた。
おそらくこの世界に転生する直前、この世界の時空の壁を、魂だけの状態で突破した時に、俺の魂に異変が起きたのだろう。
おかげで前述した通り名前を……さらには、前世での家族や友人の顔まで忘れてしまった。
「やはり、この子達は可愛いのぅ」
そして現在、俺は……ある城の姫に可愛がられている。
それも、俺が生きていた時代より三百年以上昔の時代の姫に。
どうやら俺は、タイムスリップ系の転生をしたらしい。
姫の年齢は、五歳らしい。
だがその整った顔つきは、俺の時代における美少女子役にも引けを取らないほど可愛い。数年後には絶世の美女になるんじゃなかろうか。
そしてそんな美少女に可愛がられている俺はいわゆる勝ち組だろうが、それでも精神年齢的に、年下の子に可愛がられるのは恥ずかしい。
でも俺は、この時代に生まれてまだ数ヶ月。
子供扱いされても仕方がないと思うが、それでも――。
するとその時、俺は視線を感じた。
俺と同じ日に生まれた少女が。
短い褐色の毛が特徴的な彼女が。
俺をジト目で見ていた。
俺は転生系物語を詳しく知らない。
だがこれだけは分かる。彼女は俺の事が好きで、それで嫉妬しているのだと。
「お前の髪は気持ち良いのぅ。ふわふわで、まるで綿のようじゃ」
姫は俺の毛を触るだけに留まらず、頬ずりまでしてくる。
俺の精神年齢がアレだから、倫理的に引っかかりそうだ。
って、こんな事されてたら幼馴染の子になんて言われるかッ!
「んまぁ姫様!」
とその時、襖を開けて一人の女性が現れた。
姫の教育係である、三十代くらいの奥女中だ。
「そんな事したら汚れます!」
「いいじゃろうこれくらい!」
「いくらあの法があるとはいえ、彼らをここまで可愛がる理由にはなりません! さぁ、お父上がもうすぐ帰ってきますから、一度お体を洗いましょう」
「じゃあせめて、この子達も一緒に入れさせてくれ」
え、まさか姫は俺達と風呂に入る気なのか!?
さすがにそれは……いろいろ引っかかるぞ!?
というか……俺がここまで優遇されて、幼馴染は怒ってないだろうか?
俺はバッと幼馴染を見た。
すると彼女は、ハッと何かに気づいた顔になってから、
『あ、ごめん。ぼやけてよく見えないからジト目になってた』
『なんじゃそりゃ!?』
思わず犬な幼馴染に俺は叫んだが、よく考えれば仕方がない事だった。
なにせ俺は、転生したせいか人間と同じスペックの目を持ったチート〝犬〟なんだから。
犬の視力は0・3くらいで、見える色も限られているみたいですね。