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転生神の異世界創造きっと  作者: 漆師諒
第1章 Gregorio Origin 編 〜グノシス暦千年
3/33

#2『失敗を重ねて』

他の失敗例は第1章が終わった時に幕間的な感じで掲載しますので、端折りました。

 いよいよ土台の形成が終わり、本格的な世界の創造が始まる。

 ユメリスは先ほどから色々説明をしているが、そんなに物知りなら彼女がやればいいじゃないかと伝えたところ。

『グノシス様しか権限を与えられていないんですにゃぁ』の一点張りだった。


「じゃあユメリス。どこから始めるんだ?」


「まずは、生命の基本『アダムとイヴ』の作成からです! 種族はその根源から歴史を作って、後世へと発展していくんです」


「『アダムとイヴ』? それってアダムが女でイヴが男だっけ?」


殿(との)。逆ですにゃ」


「殿って言ったいま?」


 昔どこかで聞いた話をうっすらであるが、覚えていた。

 人間の創造は二人の男女で構成されていたと。

 その辺の知識は特に豊富なわけでもないので、ボロを出さないように深くは突っ込まないようにしよう。


 生命の創造はそれしか方法がないのか、とユメリスに聞いてみたところ。

 実は無数に生命を創造する方法はあるらしい。

 だが、元人間の俺に一番わかりやすい方法を伝えてくれているだけなのだとか。

 不自然なところが親切な天使である。


「それで、どうやったらその『アダムとイヴ』を作ることができるんだ?」


「それは《ザ・キー》を用いればかーんたんです。容姿とかは自分の頭の中で創造すれば十分です。だけど、想像って言ってもムラが出るので、思い通りにいくかは保証しないですけどねぇ」


「ほうほう。それは面白い。俺の好きにしていいんだな」


 異世界ときたらまずは『ハーレム』という謎の定義が俺の中で完成していて、それをやれと心の中の黒い俺が(ささや)く。

 ひとまず創造神の(たわむ)れということで、男一人、女の子三人で形成しようと考えた。


 美男美女を取りそろえようとするのは、俺の(ひが)みがかなり含まれている。

 下界で生活するわけにもいかない俺からすると、アダムが実に羨ましくてしょうがない。


 《ザ・キー作動。生命の根源を作成致します》


 《ザ・キー》が作動し、生命の創造が開始する。

 俺の想像を読み取ったその鍵はまずアダムの作成を開始した。

 光り輝く元素たちが集合し、そこに健康体な男性が作成される。

 筋肉質すぎる、虚弱(きょじゃく)過ぎないその見た目はまさに十八歳くらいの標準男子。


 自分が望んで作ったにしてはあまりにイケメンすぎて少しムカッ腹が立ってくる。

 目の前に立って軽装を身につけているアダムは目を開ける。


「――はっ! わ、私は何をして……」


「はーい。アダムくん。私の世界へようこそいらっしゃいました。これから君はイヴとともに……。なあユメリス、このメモ全部読まなきゃダメか?」ははふ


「決まりになってるらしいから仕方ないですにゃ」


 ユメリスに先ほど渡されたメモには何やらメッセージが書いてあるが、あまりにもびっしり書き込まれていて読むのが億劫になる。

 彼女の言動と相反する勤勉さが働き過ぎたらしい。


「面倒臭いな……。とりあえずあれだ。アダムくん、君は子どもをたくさん作りなさい。そのためには、君だけではできない。大切な可愛い伴侶(はんりょ)たちと力を合わせて生活をするんだよ。自分だけが偉いと思ってはダメだ。女の子もおんなじ人間なんだからね」


 それを聞いて隣のユメリスはまるで別人を見るかのような驚き顔で俺のことを見ているのが目に入った。

 俺が男女差別をすると思っていたのか、それとも他の神様はみんなそうなのかはわからないが、かなり心外な反応である。

 これでもフェミニストのつもりだが、まあ何事も自由にやっていいのだから何の問題もないはず。


 次は、イヴの作成だ。

 かなり俺の個性が反映されてしまった気がするが、それは致しかなないところだ。


 一人目は、黒髪の標準的な女の子。

 性格も体格もごく標準。

 ノーマルイズベストというような十八歳の女の子だ。


 二人目は、お姉さんタイプ。

 性格は包容力があり、体格はザ・グラマラスな二十三歳美女。

 金髪美女をアダムが好めばいいのだが。


 三人目は、妹タイプ。

 性格は内向的で、体格は、これはロリっこかもしれない。

 アダムがどういう性格かわからないので、各方面を用意した感じだ。


「ユメリス! ユメリス! なあこれすごくないか? これ俺が作ったんだよね!? めっちゃいい出来なんだけど!」


「う、うるさいですよ。あんまりボクの耳元で大声出さないでください……」


「なんだよ。初めてでうまくいきすぎたから気に入らないのか〜?」


 ――ガンッ!


「いったいな! 何すんだよ。俺は神様なんだろ! 無礼極まり無いぞ!」


「天使として正当な行為をしただけですよ?」


 俺たちのやりとりを四人の初期住民は不思議そうな顔で見つめている。

 美男美女揃いでアダムくんは実に(うらや)ましい限りだが、これで成功間違いなしというところだろう。

 彼らが過ごすための一軒家を鍵で作り出し、彼らに与える。

 どのみち部屋を分ける必要性もないので、大きなワンルームというところか。


「アダムくんどうかね。この状況は最高だろう」


「は、はい! 本当に、ありがとうございます」


 すでに、アダムはイヴたちといちゃつき始めていて腹が立ってくるので、帰ることにした。

 ユメリスに作業を任せれば時間を飛ばすことができるらしいので、経過を見守ることにしよう。

 子孫たちがたくさんできれば、異世界作成も容易に進むというものだ。


「それじゃアダムくん。私は天に帰るから色々、そのー、あれだ、がんばりたまえ」


「ありがとうございます!」


「うむ。じゃユメリスくん。帰ろうか」


「りょーかいしました船長!」


「俺は神様だから……」


 ユメリスは浮遊する小さい雲を作ると、それに俺たちは乗って天空に飛んだ。

 眼下に広がる世界は広く、これからどのような進み方をするのか実に楽しみになってくる。

 ひとまず、最初のチュートリアルは終了と言ったところか。


 村と呼ぶにはあまりにも小さい状態だが、数十年もすればもっとたくさんの人や家が増えてやがては理想の世界になるはずさ。

 そうに決まっている。



 ◇◆◇◆◇◆



 その後、天界に戻り、ノアの中を歩くのは後回しにしてベッドで寝転んでいた。

 ふかふかの超キングサイズのベッドだが、やはり一人だと心細い。

 ユメリスはさっきの世界を時間を進めると言って作業に入ったまま戻って来ないし、おそらく近くにいても隣に寝てくれるはずもない。


「やっぱり、誰かお手伝いで連れてきた方がいいのかね……。イヴの一人を使わせるべきだったか?」


 そんなことを考えていると、少し疲れが出たのか眠くなってきた。

 神になったというのに、食欲、睡眠欲、性欲の三大欲求は相変わらず残っている。


 これは不便なようにも感じるが、これくらいの欲が残っていないと、世界創造にも全くハリが生まれない。

 なので残してくれたユメリスたちには感謝すべきというところだろうか。

 物事の創造や想像には欲が無いと何も始まらない。


「――グノシス様」


 その時、突然ユメリスが部屋に入ってきた。

 彼女は天使だからなのか足音が全くしないので近くにいてもたまにどこかに行ってしまったのか、と不安になることがある。


「う、うわぁ! い、いきなり入って来るなよ。男の子には大事な一人の時間だって必要なんだぞ」


「? なに訳のわからないこと言ってるんですにゃ? それより、報告です。こちらに来てください」


 このたまに出る不敬極まりない発言は看過(かんか)しがたいが、彼女の様子を見ているといつものような余裕さが少しだけ無いように感じた。

 報告と言っていたけど、何かあったのだろうか。

 先ほどあれだけ準備万端な状態にして帰ってきたので、何か起きるとも思えないが。


「報告? 何かあったのか」


「はい。重大事件です。まぁそれは玉座の間で話すからこっちに来て来てください」


「重大事件? 何があったっていうんだよ」


 ユメリスの案内で、再び玉座の間に戻ると、そこには先ほどと同じく大きな地球儀が浮いている。

 パッと見は何も違和感は無いように感じるが、これのどこが重大事件だというのか。

 もしかしてさっきのアダムが思ったより元気すぎて繁殖がよく進んだとかだったら願ったり叶ったりなのだが、そんな様子には思えない。


「それで、これのどこが重大事件なの?」


「大変申し上げにくいんですけど――世界が『滅亡』しちゃいましたにゃ♡」


「へ?」


 ――世界の滅亡?

 それはまるでSF映画の題名みたいな返答だったが、その意味がよくわからず返答に困った。

 世界が滅亡したと言っても今目の前には地球儀がしっかりと浮いている。

 これのどこが滅亡したというのか。


「滅亡って言っても地球儀残ってるぞ? これのどこが滅亡しているっていうんだよ」


「うーんと、環境的には滅亡してないんですけど、生物的に滅亡いたっていうか何というか」


「それってどういう……」


「取り敢えず経緯を説明しますね」


 そういって、ユメリスは俺にわかりやすく説明するためにモニターを表示した。

 そこには、一人の男性と三人の女性が映されている。

 おそらく先ほど俺が作り出したアダムとイヴたちだろう。

 四人は中よさそうにモニターの中で行動しているが、実に羨ましい限りである。


「まーず、初めの三日間は問題ありませんでした、これホント。彼らはそれはそれはあまーくて濃密な毎日を過ごし……」


「ああ、ごめんその辺はカットしよう色々問題があるから」


「了解です。それではどんどん端折(はしょ)っていきますよぉ。アダムは他のイヴちゃんたちと仲良く過ごしました」


「うん。実に羨ましい話じゃないか」


「そこまでは良かったんですよねぇ。その後アダムは他のイヴちゃんたちの取り合いに巻き込まれてーー『死亡』しました」


「『アダム――――!!』 おいマジかよ……、あの子たちアダム殺ったのか。つか取り合いってなんだよ……、やっぱり女性ナメてると痛い目に遭うってことなのか? それはそれで勉強になるか……。イヤイヤ、そんなんじゃ問題解決になってねえ」


 モニターではおぞましい映像が繰り広げられているが、それは見なかったことにしよう。

 それにしても、ハーレムが自然消滅するとは思っていなかっただけに、この挫折は中々驚いた。

 アダムがきっと欲張りすぎた、そう考えることにして次の手を考えなければならない。

 取り合いもおそらく偶然発生した事象に過ぎないのだろう。

 ハーレム状態が問題とも言い切れないな。


「やっぱり浮気はいけないということですねぇ。実に勉強になりますにゃぁ〜。それより、ハーレム状態は良いんですけど、それを初めからやるのは少し創作難易度が高いかもしれないですよ?」


「ごめんそれ早く言おうかユメリス君。君仕事できるけど、色々抜けてるぞ」


「天神界でもよく言われます、てへ♡」


 とびきりの笑顔で答えるユメリス。

 この状況のその笑顔は俺をおちょくっているとしか思えない。


「いやそこでぶりっ子してどうすんだよ。まぁいいや次だ、次やろう。でもやっぱりハーレムは外せないよな。次はもうちょっと美男美女じゃ無いのにすれば良いのか?」


 その後、試行錯誤を繰り返した。

 中々うまくいかず何度も世界を滅亡させて、再生を繰り返し、

 もうアダムとイヴだけでコレクションが作れそうなほどだ。


 失敗を重ねる中で、一つ気づいたことがあるとすれば、俺が手を貸しすぎると、つまり全体に関わるような干渉をすると世界は滅びるということ。


『早熟』と言うのか。

 まだ熟していない世界に高度な技術を与えると崩壊を迎える。

 種族の成長度に合わせて世界のレベルを上げていくのが良いらしい。


 もう少し歴史を重ねられるようにならなければいけないな。


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