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転生神の異世界創造きっと  作者: 漆師諒
第1章 Gregorio Origin 編 〜グノシス暦千年
2/33

#1『異世界ミスリック創造』 ♬

 ユメリスというその少女天使と共に、俺は天空に浮かぶ巨城、《ノア》へとやって来た。


 そこは、外見からしても内装からしてもどう考えても俺一人で生活するには大きすぎるほどの規模を誇っている。

 俺はその中心にある謁見(えっけん)の間で玉座(ぎょくざ)に座っていた。


「――えっと、ユメリスだっけ。俺のこの格好、神様なのか……?」


「神様ですよもちろん。やっぱり『服が』良いと着ている人間も()えますねぇ」


「どういう意味だそれ」


 ユメリスが用意したという神様の服装。

 個人的にはかなり気に入っているが、ユメリスの態度が気に食わないのである。



挿絵(By みてみん)

 イラスト 『おにぎりゆかり』様

 ツイッター 《https://twitter.com/s6jrCtvGOt8wVkj》



「それはそうとして、この城、俺一人で使うにしてはなんかデカくない?」


「そうですかぁ? このお城は天神界(てんしんかい)が造った最新型の宮殿。とっても住みやすいと思いますよ。あと、もしグノシス様が創造した世界で気に入った人材がいたらこの城で飼う、なんてこともできちゃいます」


「『飼う』ってなんか人聞き悪いな。それは『雇用する』とかって言おうよ。なんか悪徳奴隷商人みたいになるじゃないか」


「これは失礼しまぁした。では早速ですが、世界の創造へレッツゴーしましょ」


 ユメリスは透明なガラスのようなものでできている大きな球体を取り出してきた。

 それは何も支えるものがないのに空中に浮いている不思議な玉。


 彼女はそれを俺の目の前まで持ってきて安定させると、手から光りを出して球体に当てる。

 魔法を見るのは見慣れないが、もうこんなところに連れて来られたらなんでもありな気がしてくる。


「グノシス様、『ザ・キー』を出して出して。それをこの球に向けると世界の創造が始まりますから!」


「お、おう。こうか?」


 ――《異世界創造キットを作動します》


 『異世界創造キット』とはまるでプラモデルでも作るみたいだが、その鍵から表示されるのはゲーム画面のようなホログラムの表示。


 気温や湿度、地表面積や海水面積、磁力や引力、近辺の惑星など色々なことが実に細かく設定できるようになっている。

 しかし、ここまで細かく小難しくなると、さすがの俺でも頭が参ってしまいそうになった。


「ごめん、なんか難しくてよくわかんないんだけど」


「えっと、じゃあ初期から繁栄させる種族を選んでみてください。それなら世界の在り様を『自動設定』できますよぉ」


『自動設定』なんていう機能が付いているなら初めからそう言って欲しいところだが、どうやら俺の頭が足りないことで世界創造が(つまづ)くことはなさそうだ。


 彼女がいう自動設定を選択してみると、今度は色々な種族名が登場する。


 ――――

 ヒューマン

 エルフ

 クーシー

 ケットシー

 ドワーフ

 ノーム

 リリパー

 デビル

 小人族

 フォクシー

 ハーピー

 サキュバス

 インキュバス

 リザードマン

 ジャイアント

 フェアリー

 オニ

 ヴァンパイヤ

 グール

 オーク

 オーガ

 その他

 ――――


「うわ、なんか色々出てきたな。どれどれ……、どの種族も捨てがたい気がするけどやっぱり初めは《ヒューマン》の方がいいよな」


「それじゃあ、初期種族、《ヒューマン》でボクがちゃちゃっと構成しますね」


 エルフやドワーフ、ヴァンパイアなど様々な現実に存在しないものが存在するので、別に人間(ヒューマン)(こだわ)らなくてもいいのだが、ここは無難(ぶなん)な方針で行くことにした。

 その方が何かしら不都合が出た時に人間の方が文化的にわかりやすい気がしたからだ。


「ヴァンパイアの世界ってどうなるんだ? 共食いとかあるのかな……」


 くだらないことを考えていると、ユメリスが『ザ・キー』、もとい金の鍵から放出される情報をその手を使って先ほどのガラス玉に注いでいく。


 それに合わせて、ガラス玉にはだんだんと中心が赤くなり始め、やがて赤く輝くマグマへと形成が行われた。

 その後、玉座に座ったまま傍観(ぼうかん)していると、そのマグマは内核となり、だんだんとそこに外核が作られる。

 そして、マントルと続き、黒色の地殻と土色の地表ができる。

 そこに注がれるように海水が運ばれると作業が完了した。


「終わったァァ! どうどう? いかかですかグノシス様ぁ」


「いかがですかって言われても色は地球、陸の形は別の星って感じの模型だな」


「これは模型なんかじゃないよぉ。実際にこれから生き物が生活して、繁殖することになる基盤。ボクと一緒で、くれぐれも丁重に扱ってね?」


「え!? こ、これがその世界なの!? さ、触れるのか!?」


「いや世界自体は別の場所にありますけど?」


「それじゃこれは模型じゃねえか!」


 丁重も何も、空中に浮いているそれは別の場所にある星を写しているだけだと言うので、ここからその星に石を当てたとしても何の影響もない。

 元より、乱暴に扱うつもりなどないのであるが。


「そーれじゃ、この出来上がった地表まで行ってみましょー! 種族を誕生させる前に色々準備しなければならないですし」


「準備しなければならないこと?」


「それは行ってみれば分かりますよぉ。ささ、立って立って。行きますよ!」


 俺は立ち上がると、目の前に浮かぶ地球風の球体の下を(くぐ)ってユメリスについて行った。


 このノアは実に広く、まだ内部構造を覚えるのに時間がかかりそう。

 どうやらこの先の生活も長くなりそうなので、じっくり覚えていくことにしよう。


 赤い絨毯(じゅうたん)に、廊下に(ほどこ)された豪華な装飾や大理石風のものでできた階段。

 どれもこれも新品のようでホコリひとつ付いていない。


 先ほど、ユメリスの言っていた下界から人材を連れて来るというのはここでの使用人を雇うという意味も含まれていたのか。

 この城には俺たち二人以外には誰一人として存在していなかった。


 城の外に出ると、そこは一面に広がる雲海。

 雲の上というだけあって、空は雲一つない晴天だ。

 当然鳥など飛んでおらず文字通り俺とユメリス以外は何もいない世界――。


 寂しさを感じなくもないが、今はユメリスがいてくれることで孤独感は感じていなかった。


「――それじゃ、下界へと転移しますよ。ボクの手を取って『ザ・キー』に『ミスリック』と念じてみてください」


「念じる? そんなことで移動できるのか、便利だな」


 俺はポケットに入っている鍵を取り出して手に持った。

 いつ見ても美しく金に輝くその鍵は手のひらサイズ。

 一般的な玄関の鍵などに用いられているそれと比べてみると、かなり大きめ鍵だ。


 鍵を片手に握ると、ユメリスの手を取る。

 その感触は、天使だというのに現実世界に生きていた時の人間と何ら変わらず、優しい温かみを持っていた。


 小さく白い手を不思議そうに見つめていると、ユメリスは冷めた眼差しをこちらに向けて(つぶや)く。


「グノシス様? いーくらボクが可愛くて、転生した時に性欲を消されていないからって、ボクに欲情するのはダメってものですよぉ〜〜?」


「――え? あっ、う、うるさいよ。欲情なんかしてないし」


「ほんとですかぁ〜? すーごくいやらしい目でしたけどぉ?」


「ち、ちがうから。ほら行くぞ」


 ユメリスに言われた通り『ミスリック』と念じた。


 ――俺とユメリスの体はその場から消え去り、下界である異世界『ミスリック』へと転移するのであった。


 ◇◆◇◆


 ――(きら)びやかな光が放たれ、創造神が地表に降臨(こうりん)する。

 俺たちはまるで誰かに見せつけるかのように空から光に包まれて下降し、海岸線と思われる地平線まで植物ひとつない地面に降り立った。


 所々に山や地形の起伏が存在し、海も絶えず波を寄せるその地にはまさに世界の出来たてを思わせる雰囲気。


「これがミスリック?」


「そですね。今はまだ火山活動が収まって、環境が安定期を迎えたって感じです。土地も海も栄養豊富だから世界の創造にはうってつけってカンジでしょ?」


「へぇ、あんまり地学は詳しくないからよくわからないけど、とりあえずキノコ生やすための苗木が完成したってことか」


「へーんな例えだにゃー……。それより『ザ・キー』を使ってグノシス様が望む生物環境を早速整えてみてください」


 そう言われて鍵にまた念を込めると、目の前に世界創造の際と同じようなウィンドウが表示される。


 しかし、またもそこには小難しい植物名や図式が大量に表示されている。植物学にももちろん詳しくない俺は再び『自動設定』に頼ることにした。


 冷静になって考えてみれば、この自動設定に頼らない神はいるものなのかと疑問が生じるほど、それが無いと何をしたらいいのかわからないくらい『ザ・キー』の創造操作は難しい。


『自動設定』で、ひとまずはヒューマンが生きていく環境に最適なものを作成することにした。

 すると、俺とユメリスの周囲を光の玉が包み、上空に浮かび上がる。

 時間の経過が加速し、みるみるうちに目の前の何もなかった土地には植物が多い茂る。

 惑星の地表は緑色へと変化。


 そして、俺の住んでいた地球と同じく緑と青が表面を覆う惑星へと『ミスリック』は生まれ変わるのであった。


「さーすが、グノシス様。『ザ・キー』を用いているとはいえこの星がここまで美しくなるとは思いませんでしたぁ!」


「いやそんなに褒められてもこれは自動でやってもらってるから俺は何もしていないんだけどな」


「そんなのわかってるにゃん。マニュアル通りの対応というやつですよ♡」


「お前絶妙な加減でムカつくな」


「他の天使にもよぉく言われます!」


「そうかい……。まあまぁでも一緒に居てくれるのはなんとなく孤独を感じないから嬉しいよ」


「そうですか? ではでは、これからはユメと呼んでください、仲良くやって行こうね」


「なんかツンデレの使い方がものすごく間違ってるような気がするけど……、まあいいか」


 そのままの状態で上空から地表を傍観していると、作業が完了したのか地表に再び降ろされた。

 もうそこは先ほどの寂しい土地の面影はどこにもなく、陸には木々が多い茂り、海の輝きも増しているように思える。

 そして、さっきまで土が海面ギリギリまであった俺たちの立つ場所は綺麗な砂浜へと変貌(へんぼう)()げている。


「これで、一応の土台はできたって感じ? 何かこの鍵使ってるからかここまで来るのが本当のチュートリアル並みの楽勝さだったよ」


「ここまでは簡単ですよ。これから先が問題。環境を整えるのはザ・キーでなんとかできますけど、種族の文明は違います。生物の心までは創造できないから、教育をすることになるんです、です」


 ユメリスは無表情のまま再び両手を広げる。

 この態度は神に対して不敬ではないかと内心思ったり。

 教育と言われても、具体的に何をすればいいのだろうか。

 文明の作り方などわからないが、おそらくこの鍵を使えば今までのように最低限は作り上げてくれるかもしれない。


「教育か……。それってこの鍵じゃできないのか?」


「いちおーできますけど、あんまりお勧めしませんよ? 『ザ・キー』の持つ能力は確かに絶大です。でもそれだけで、肝心な人の心は持ち合わせていません。頼り切りすぎると、生きるための組織を組んだり、生きていくための食料確保とかがわから無くて知能のない野生になっちゃいます」


「ま、マジかよ、そりゃまずいな。ひとまずどんな奴が作れるかわかんないけど最低限のことは教育しなきゃいけないってことか」


 こうして、俺の神様人生の1ページがスタートするのだった。

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