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序章 転生創造神の誕生 ♬

閲覧ありがとうございます。

本作はかなり気軽な気持ちで作成しているので、登場する思想や行いに特にメッセージ性を込めているわけでは御座いません。あくまで読み物としてお楽しみいただければ幸いです。

また、失敗バージョンや天界での生活を幕間として書く予定です。


主人公が神様設定なので、御都合主義なところもありますが、この先世界の成り行きを共に見守っていただけたらと思います。


挿絵(By みてみん)

 暗闇に包まれていた双眼を開く。


 眼前に広がるのは何もない暗黒のみ。

 俺に優しく笑いかける誰かの表情も叱責する誰かの表情も感じ取ることはできなかった。


 俺は座っているのか、それとも立っているのか。

 それすらも明確にならない不思議な感覚に襲われいる。


「――は?」


 なぜこんな場所に俺がいるのだろうか。


 その理由は即座に得られる(はず)もなく、無気力感に襲われている頭脳を必死に働かせた。

 つい先程まで何処かの道を歩いていた気がするが、今は記憶が曖昧で明瞭な具合には思い出せない。

 そうだとしても、こんな寂寥感(せきりょうかん)のある場所に来た覚えが全くないのは確かである。


「ようこそ新しい世界へ! ボクはあなたの降臨をずーっと、待ち()びていたのです!」


 女の子の声。

 柔らかくトーンの高い声。

 少し『テンション』が高いような気がした。


 声がしたかと思うと次は白い翼を持った『誰か』が目の前で光り出す。

 暗闇の中で突如強い閃光を目の当たりにしたので思わず目を塞いだ。

 俺は質問への解答をすっかり忘れたまま沈黙。


「ーーちょいちょい……、ボクの話聴いてますか?」


 少女の気怠そうな声が響く。

 『こんなこと面倒臭くてやってられない』と言うようなやる気の無さが発言の要所要所に包含(ほうがん)されている。


「え? ああ、えっと、眩しいからもうちょっとその光、抑えてくれないかな」


「あっ、ボクとしたことがこれは失敬(しっけい)しました」


 彼女は小さく咳払(せきばらい)いし、神々しく光るバックライトの度合いを緩める。

 俺が目を開けられる程度の光量に調整された。

 こう眩しくては話しかけられてもまともに会話など出来やしない。

 初対面の相手に強い光を照射するなど何事か。


「これでどう……ですか?」


挿絵(By みてみん)

 イラスト 『おにぎりゆかり』様

 ツイッター 《https://twitter.com/s6jrCtvGOt8wVkj》


「ありがとう。ってええ!? 天使!?」


「今さらですか!? さっき完全に見てたよねぇ!」


 こちらが驚くと同じように動揺する少女。


「いやさっきはよく見えなかったんだよ。というかなんで俺の前に天使がいるわけ。まさか夢の中とか?」


 俺は寝ていてこんな明瞭感のある夢を見たことない。

 視界も良好、感触もリアルだ。


 それでも彼女の背中には間違いなく白くフサフサした羽が生えている。

 とても夢とは思えない。

 綺麗なボブヘアの金髪を揺らし、黄色の瞳が相まって、「まるで」どころか「明らかに」その姿は『天使』そのもの。

 話し方は天使と程遠いものを感じさせるが、そこは置いておこう。


「残念ながらこれは夢じゃない、現実です。そぉして、さらに残念なことですけど、貴方様はついさっきお亡くなりになりました」


「亡くなった!? まさか死んだのか!?」


「そう、死んじゃったの。貴方様は踏切内で貧血によって倒れた女の子を助けようとして、通過する列車に轢かれ死んじゃった。ああなんて悲しいことなんだぁ!」


 若干ふざけ気味にジェスチャーを取る天使。

 人の命を懸けた功績をバカにしているのか。


「嘘だろ……。でも全然覚えてないぞ」


 ――記憶を辿るが、何一つ思い出せない。

 気分全体が不明瞭に混濁(こんだく)している。


 普段から自分なりに善行を積んで来たつもりだが、まさか人助けをして死ぬとは予想だにしなかった事態。

 『人助けをすればきっと自分に返ってくる』なんて聞こえの良いことを言いながら、結局は自分よがりな単純発想で行動しているんだよなと卑屈なことを考える俺。

 まぁそれも返済される前に俺は死んでしまったということか。


「死亡時の記憶は物事のリスタートに当たって邪魔になるから消しちゃいました。ちなみに貴方様の助けた女の子は無傷で救出されたので安心してください。なので、なので。これからは貴方様のリスタートが始まるのです!」


 目の前の天使は両手を広げてまるで俺の死亡結果を歓迎するかのような姿勢を見せる。

 少し腹立たしく感じたが、今は放っておこう。


「リスタートって何をさせるつもりだよ。まさか赤ちゃんとして一からやり直すとか?」


「いや、一から始めるのは『世界の創造』ですにゃぁ」


 ――世界創造?

 創造って、『想像』じゃなくて、ツクルツクルの『創造』だよな。

 この天使は死んだ俺をからかっているのかわからない。

 顔だけ見れば大真面目な表情で、いやかなりなドヤ顔でそう豪語する。

 ひとまず話を詳しく聞いてみないことには何も始まらない。

 この様子だと元の世界に帰ることは叶わないらしい。


「世界の創造……ってどういうことだ?」


「文字通りの意味ですよ? 異世界を一から作るのです。そして、ボクは『ミスリック』という世界の創造をするに当たって、創造神である貴方様、《グノシス》様の側近として補助をする天使の《ユメリス》。いやぁヨロシクです、ヨロシクです」


 今、この子は俺のことを《グノシス》と呼んだが、自分はそんな名前ではなかったはず。

 しかし自分の名前が思い出せない。

 苗字も名前も年齢も、何もかもの自己情報が上手く思い出せないのだ。

 思い出そうとすればする程遠くの方へと遠ざかって行く。

 つまりはどういうことか。


 そう、ーー彼女が先ほど死亡時の記憶を消したと言っていた。

 だがそれは自己に関する情報も消されていたのだ。


「まさか、俺の名前まで消したのか?」


「ご名答。ですけど、これは天神界からの命令だから、ボクに責任はないのです。それにボクが消した分けじゃないですし。だから恨まないでね♡」


「理由を聞いてもいいかな。理由もなく記憶を消されるなんてなんか釈然としないじゃないか」


「それは……、グノシス様には創造神として再生(リスタート)することになるから、不必要な情報は消す……らしいです」


 天国はもっと死者に優しい場所かと思っていたが、どうやらそうではないらしい。

 こんなわけのわからない場所に連れて来られて記憶まで削除するとは随分と乱暴な扱いをするものだ。


「俺はその創造って何をすることになるんだ?」


「それは単純にして最難の課題、『より良い世界』を作り出すのがグノシス様に与えられた使命です!」


「ごめんちょっとまだよくわからんな。とりあえず『チュートリアル』とかないの? 話はそっからにしよう」


「承知しましたぁ。じゃあ、これを受け取ってください!」


 少女は手を動かして魔法陣を書き、その場に光り輝く金色の鍵を取り出して俺に手渡した。

 同時に、金の鍵は俺の体と共鳴しただでさえ眩しい光りを増す。

 身体の感覚としては、末端までエネルギーが満ち溢れ、実に居心地が良い感じだ。


 ――《《ザ・キー》を入手しました。》


 ゲームチックなモニターが正面に表示されてそう告知される。


「グノシス様の創造を助ける鍵『ザ・キー』。これから始まる神生活をきっとより良いものにしてくれますよぉ。肝心なのは創造のための想像力です! グノシス様の想像力でガンガン世界創造に励みましょう!」


「随分なチート道具渡されたようだけど、これって何に使えるんだ?」


「文字通り『何でも』、です。ありとあらゆるものを想像から作り出したり、神殿の玄関を開けたり、車のドアを開けたり、と何でもできます!」


「いや最後の方は完全に普通の鍵として使われてるよ……」


「まぁまぁ使ってみればわかりますよっ。それでは行きましょう! ボクたちの新たな新居、天界神殿ノアへ!」


「――え!? い、いきなり飛ぶのぉぉぉ!?」


 光が強くなり、目を開けていられなくなる。

 こうして俺の第二の人生、いや神生が始まった。

 これから何が始まるのかは俺にはわからない。


 ひとまずこの天使を信用していいのだろうかーー。

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