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タイムマシーンと不思議な体験 中編


--- タイムマシーンと不思議な体験 中編 ---


そして来るべき、その不思議体験、連続の職場に向かう日が来た。

朝早くというか、ねてないのだから、朝早くにおきたのではなく、

ずっと寝てないだけなのだが、それにしても、初めてで、その仕事がうまくやれるかどうか

心配になり、ドキドキしていたため、朝早くに、仕事場に向かい、むこうで、人材派遣会社の管理職の方をお待ちするという

形に至った。ドキドキの理由には、もちろんほかに、どんな訓練をするのだろうという。そういう不安でもあったのは

ここまで読んでくださった皆さんには、伝わっているものと思う。

あのレポーターの事件以来、彼は、自分が何か特別なものであるという認識をいきなりもたされたのであるから、

それも無理もない。うだつのあがらない。いくら勉強しても成績ものびない。それでいて、受験、受験と必死で、くらいついては

センター試験で打ち砕かれ続け、就職活動をしては、面接で落とされ続け、あげく、就職できても、職場で、いじめにあい、

とても仕事どころではなく、すぐやめることになる。そして何度もそれを繰り返すうちに、その結果が、ハローワークなどにも知られてしまい、

まともに仕事にもありつけない状態だったのだ。そして自殺するかどうか毎日悩んでいては、アルバイトで食いつなぎながら、

自分で起業するという夢にかけていた。他人に受け入れてもらえないなら、自分でどうにかするしかないと考えたのである。

起業するという夢も他人から否定され続け、自分でもそれが無理なことは十分承知であった。でもそれ以外に、彼を救う方法などないのだ。

それくらい絶望的だったのである。彼は努力するから、余計その絶望は高まるのだ。まるで首を真綿で絞められるように、

そこからはいあがろうとすればするほど、その努力の報われなさが余計、彼をみじめにさせる。そういうものだった。


このへんについては、最終解の章以降に、彼のオリジナルコードを記述する手前で、

それらが彼のオリジナルであるということを、はっきりさせるためにも、より詳しくどのようないじめがあったのか

どのような人生を歩んできたのか。それらを書くことになるが、そこを読んでもらえばわかるとおり、

とても人に自慢できるような人生ではない。

むしろあわれだから、もうあきらめて死になさい。それ以上がんばってもなにもいいことなどないのだと、そういってあげたくなる。

ここで、おこったこともやはり例外なく同じようなことなのだが、それでも彼は乗り切った。

死ぬ気で乗り切ったのだ。いや、とっくに彼は、このとき精神的には壊れていた。そう表現するほうが、正しいだろう。


だからこのとき、彼の中には、3人いた。彼は、すでに、先に書いた、狂気状態と呼ばれる状態であった。

つまり、仕事どころではないような精神状態であるということだ。医者に通え。そういわれるような体と精神を

おして、彼は、この仕事に挑んだのである。


正直に書けば、彼は、いつ死んでもよかった。そのほうがずっとらくだから。

けれど引かない。意地があるからだ。ここをあきらめたら、もう後はない。

だから引けない。そっちのほうが正しいのかもしれない。

だからこそ、この考えられない逃げ出したくなるような状況でも彼は、引けなかったのである。


今思い出しても、本当に考えられない経験なのだ。


朝、派遣先の職場に到着し、お世話になる上司の方を、最初に、人材派遣会社の管理職の方から、紹介していただいた。

まず作業を覚えるために、上司の方が、教育係の方を、彼につけてくださった。わからないことは、教育係に質問するようにということだった。

基本的に上司のかた、以下Aさんとする。は、忙しくて、なかなか質問もできない。これはどこのアルバイトなどでも大体事情は同じである。

といっても、今回は、派遣であるが。やはり事情は同じである。

ただ、教育係の方が、以下Bさんとするが、彼と同じような趣味であり、何事も話しやすい方だったのは救いだった。

まず、Bさんから、仕事場の状況を説明された。


仕事の内容は、ある機械を組み立てるライン作業というものだった。

4工程に分かれており、彼が任されたのは、最初の工程である。つまりは1工程。

1工程では、機械のパーツを、そろえて、細かい部分を組み立て、時間内にできるだけ

各パーツを、本体となる部分に取り付けていくというものだった。

基本的には、ねじを締めること。パテのようなものを隙間に埋める作業。部品を正確に取り付けること。

どこになにを取り付けるかを正確に覚えることができて、確実で、すばやくできれば、評価がよくなる作業だった。

普通に考えれば、時間をかけて覚えれば、できるようになるとおもわれる。どっちかというと

作るのが好きな彼にとってわりと楽しい作業内容であった。


ただしかし、それは普通の人であるならという前置きがつく。


彼がその工場で見た風景は、子供の頃、あるいは、大学院在学中に書いたオリジナルコードに、非常に似通っていた。


そのコードができた経過を書かねばならない。先のコード群、同様、テレビでこのように質問された。

派遣会社の構造ができて以後ということになる。だが、もちろん彼はよくわかっていない。

テレビになされる一つ一つの質問に答えていっただけである。


まず、一つ目。

効率を上げるためにはどうすればいい?


彼の答え、

必要のない部品や工具を管理して、無駄をなくし、清掃や安全に心がける。

あと、できる人は、よい評価を与え、給料に付加していく。

効率の上がった分、利益があがるからそれでまかなう。


次に、二つ目。

人から人に、作業の内容を教える際、その内容がところどころ違い、正確な結果が期待できない。どうすればいい?


彼の答え、

教える人を、きめておき、その人たちで、作業内容について、かならず同期を取っておく。

また、誰が新人か、誰が派遣か、あるいは社員かといったことを明らかにするために、

記章などをつけ、誰がみてもわかるようにする。

新人さんが、現場で、仕事をしていて、教育されたことと、

ちがうことを要求された際、おしえてもらったことと違うというむねをつたえるために

教えてもらった内容と違うので、できませんという。


最後、三つ目。

細かい手作業の必要な職場で、技術の担い手が、団塊の世代の退職により、大量に失われ、

それが、次の世代にうけつぐことができないでいる。どうしたらいい?


彼の答え、

映像や書物でできる限り、その手作業を詳細に、のこし、新しく入ってきた人が、

わからない作業のポイントをすぐに検索できるようなシステムを構築する。


これを発想したのは、新旧含めてずい分前のことだから、最初ピントこなかった。

上から時代的に、小中学生、大学院生、アルバイト時代であると思う。

しかし、徐々に思い出したのだ。この職場の環境は、どこかで見たことがあると。


一つ目の発想が、職場で実際にはどのように実現されていたか?

これは、まず効率を上げるのがなぜなのか?そこに現実と彼の発想の間にずれがある。

彼は、効率が上がれば、利益があがると考えているが、実際は、

会社の利益がさがることを前提としているため、評価を与えることで、

給料に差をつけてというのは、単に現在の給料から下げる評価であることになる。

上げる評価ではないのだから、誰もやる気はおきないのは当然である。

だから、どの職場にいっても、彼はつまはじきにされたのだ。

しかし、彼がこれを最初に発想したのは、子供のときであり、まだ日本経済は上昇していた。

効率があがるなら、利益もあがるであろう。そう発想するはずなのだ。

けれど実際に、このコードが発動するのが、人材派遣が導入された後で、社会も不景気になりだしたころだと

思われる。


二つ目は、実際に、現場の人間関係は複雑であり、そのように答えるのは難しいということである。

というよりも、現場は、正確な結果を期待しているのではなく、ひとつひとつの作業に対して、臨機応変な対応をこそ重視していた。

いいかえれば、そういうことが要求される職場であるということ。2個目の質問自体が、職場をよくするための

質問になりえていないのである。なぜこんな質問の仕方なのだろうか?

簡単である。そう答えさせたかったからである。


三つ目は、ほかにどうすることもできないほど、人員がさけないということだったので、だったら資料にのこすしかない

そう判断したにほかならない。ところが、これも派遣人材を伴う入れ替わりのあわただしい職場で、実作業も本当に忙しい中、

資料化の仕事もあわせて、行っていた。いくらなんでも時間的には無理がある。別の人材を用意するかどうかしないと

もともと無理とおもわれる内容である。といっても、忙しくない時期におこなっていたというのであれば、話は別なのであるが、

これも、忙しい時期だけ通い、首になったので、しるよしもない。


すべて無理そうなら違う方法を聞くはずなのだが、それがそうしないのは、

そう答えてほしかったからだと思われる。つまり、最初からそう答えるように誘導されていたのだ。

しかも、その責任を、何も知らない彼に押し付けていたというのが真実である。


こうなると、ピリピリしているのは、当然である。彼は、職場でかなりやっかいなものでも見られるような扱いなのである。

しかし、実際は、かなりいわれのないことばかりといえる。


しかし、記憶力の悪い彼にとって、このように、作業を、資料化しておいてくれたのは、本当にありがたいことである。

資料には、写真と、手書きの印まで、丁寧に書き込まれており、本当に、作業を理解しやすかった。

こまったときにはそれを見れば、なんとかなる。そういったものだった。

作ってくださった方には、非常に感謝である。

また実際に、新人さんがはいっても、資料があれば、質問なども正確に自己解決でき、上司の方の時間をわずらわせることも少ないと思われる。

管理についても非常に細かいところまで行き届いており、次世代の職場という感じさへした。

たしかに、上司の方が、時間をはかってまで、仕事の効率を見るのは、どうも緊張したが、

それでも、あれで、給料があがったりするのであれば、悪くはないかもしれない。

ちょっと職場の仲間うちで、優劣がつくため、心情的に複雑でもあるが、多少はしょうがないかなとも思う。

しかし、給料を下げられたり、首にされたりという理由になるということであれば、これも事情はぜんぜん違う。

要は、その発想を、どのような状況で、何の目的で使うかである。


話をもどす。


ライン工場というのを経験されたことがあるだろうか?

ないという方のために、説明しておく。

まず、ラインとは、作業工程順に、部署のようなものが決まっており、といっても、その部署は、歩いていけるほどすぐ近くに

隣接しているのだが、各工程ごとに作業を、順番に行い、最後の工程まで進むと、ひとつの製品が完成する仕組みになっている。

もちろんその後、製品が正確に動作するか、検査をしている工程が別に何層かにわかれて存在する。

つまり、チェックは入念にやっているということである。製品に問題があれば、会社の責任問題になるし、

損害請求まで考えられる。価格の高い製品ほど、よりおおきな損害が予想される。

その工場で作られる商品の製品価格は、安いものでも100万近くして、高いものだと数百万する。かなりチェックするほうも

真剣になるのは当然である。

もちろん仕事なのだから当たり前だが、数百万ともなると、その真剣度合いも緊張を含むほどである。


とにかく、ピリピリしているのは、彼の発想のせいだけではなく、あわただしく、責任が発生する作業なのであるということ。

このピリピリした雰囲気の中で、仕事を覚えるのは、大変である。しかし、彼の場合は、さらにその上、もうひとつ

訓練という意味合いも絡む。その訓練の話に入る前に、訓練のルールを説明する。


一台の製品につき、チェックまで含めて、最終工程をすべて終えると、作業場全体から見えるところにある、電光掲示板に表示された

数字が変化するようにできている。製品が、一台完成するごとに、今日の生産台数がカウントされるのである。当然というか、

その数字の上には、今日の生産予定台数が、表示されている。つまりは、ノルマである。

そして、一番下には、生産予定台数からの遅れ分つまり、昨日からのやりきれなかったノルマ台数が表示されている。


最初に、教育係のBさんから説明を受けたときは、たまに、この表示が間違っているからあまりこだわらないようにと説明を受けていた。


しかし、彼は、この言葉の意味を、逆に取っていた。つまり、この数字が重要で、このノルマをあげることができないと

非常に、まずいことになるという意味である。

彼は、なぜそんな風にとるのか?

実は、指示で、いわれたことのある部分を逆に取れ。そういわれていただけである。この情報をどのように、彼が知りえたのかは、ちょっと説明できない。

というのもこの小説は、誰でも読める分、彼にとっても危険であるからだ。過去の彼の行動を、見られ、そこから指示そのものを

読み取られる可能性があるというわけである。

ここで、スタッフからの指示の読み方そのものを見られた場合、その情報を、敵の過去へと伝えられたら、そこにウソが書き込まれる可能性があり、

正確な行動ができなくなるからである。そして、正確に彼が、過去において行動したからこそ、今があるのであり、

この現在では、私の選択肢はそれを書かないしかありえないのである。もちろん書いたとしても、問題はないが、できる限り

過去のそのときの状態を安全にしておきたいということである。なぜなら、この派遣のとき、もし彼が、その状況に屈していたら、

今はぜんぜん違う状況になるからである。つまりは敵に利用されるだけ利用されて、とんでもない未来を書いていたことになる。


以後、彼が、どのようにそのキーとなる情報などを知らされていたか、そのキーとなる情報を

どこにあてれば、正確な文章がでてくるかなどはここには、書けない。

だから、どうして、指示で、そういわれているのに、それとは相反するような行動をするのか疑問に思われるかもしれないが、

その行動で本当はあっているのであるとおもってほしい。


とにかく、電光掲示板の数字が重要なのである。

遅れが多く出ると、普通に考えれば、土日出勤なのであるが、

つまり、生産台数的に、遅れを解消する必要があり、休みがなくなるのである。

しかし、遅れは出すほうがよいということが、彼に指示として伝わっていたのである。

土日も仕事に出る。そういう意味である。実際、このときの彼は、日曜日以外、朝6時くらいから、出かけ、家に、かえってくるのは、

夜11時ごろという毎日を送っていた。土曜日は、遅れだけおわらせれば、早く帰れたからだ。

問題は、彼のせいで、仕事場の状況が変化して、彼のせいで、周りの人間も巻き込まれるということである。

だからこのとき、参加していた派遣の方々は、彼と同じように、一日中働いた。

だから、最初に彼は、お願いした。周りの人間を早く帰してやってほしいと。

その願いはかない、彼がのこってもみんなは、交代で休みをもらうような構図に、だんだんとではあるが、近づいていった。

では、その遅れは、どのようにすれば出せるか?であるが、

彼が仕事をできる限り早く行えばよい。つまり、彼の次の工程である、第2工程のかたが、本来はじめるべき点よりも、先のほうまで、

彼が、作業をすすめることで、遅れが出るという仕組みである。彼は、最初の工程であるから、

本来作業を早くすれば、するほど、全体として、遅くなるはずがないのだが、遅くなるのである。これがおかしい。

それは、先の方の4工程のかた、この方は、教育係のBさんなのだが、この方が、彼が進めた分以上に、遅れるという仕組みである。

そして、おこられるのは、Bさんなのだ。

だから、遅れを出すためには、つまり願いをかなえるためには、願いをコールしてから、

Bさんが、怒られるのも気にせずに、作業を早くする必要があった。

これは、ひどい。Bさんは、教育係の方で、したしみのある方なのだ。

そして、それでも、願いを心の中でコールしたら、突き進むしかなくなる。

土日に出勤させることになっても、遅く帰らせることになっても、Bさんが怒られることになっても、

突き進むしか選択肢はないのである。


当然このように書いた以上、ここを彼の敵に、読まれたのであろう。しっかり、過去の私は、このとき、この電光掲示板にだまされることになる。

だが、それはすでに乗り越えた過去であり、説明のためにも必要なので、とりあえず、先に進むことにする。


ヤフーのニュース欄に、トピックスの欄で、派遣村のことが出ていると思う。私も1月4日に見つけたのであるが、

これを、みなさんが読む頃には、ちょうど消えているかもしれない。

上の話と絡んでいてちょうどよいので、このニュースの読み方だけ説明しておく。

この情報の読み方は、彼の敵に知られても何の害もないからだ。

というより、彼の敵も同じように行動しているため、とっくにばれている。だから隠しても無駄という意味でもある。


この情報というよりは、これらの情報は、すべて、応援のような意味合いを持つ。

彼のマーキングをいれた文章で、自分を主張することで、私たちは、応援しています。という意味なのである。


たとえば、派遣村 廃校などに全員収容へとあるが、派遣村というのは、主語。つまり、ここにかかわる人たちは、という意味。

廃校。これは、ちょっと説明が必要になるが、1月4日付近で、彼が、オリジナルコードを考えようとして、発想していた内容に

廃校があったのである。映画などのコンテンツで使えるなと考えていたのだが、

家で、アニメ、かんなぎ3話を見ていて、思ったことである。アニメ中に、廃校というか廃校舎がでてくるのだが、これを見ていて、

やはり廃校舎は、人の注意を引ける。どこかのコンテンツでも使えないかと考えていたのである。

つまりは、彼が、家の中で、それを考えた時、それを聞いていました。という意思表示なのである。

こうなるとほかの人からは、家の中で、彼が何をやっているのかなんてわかるはずがないので、誰にも知られずに、彼を応援していることを

伝えることができるというわけである。逆に言えば、彼らは、彼が何をやっているか、見えるはずもない状態なのに、見ているという

ことになる。


加えていうと、この文章の内容は、それほど気にしなくてよいということが言える。これについては、彼を応援していることを

彼に伝えるために、彼らの身近で、実際に、ありそうなことを起こしていると考えたほうがよい。


彼の発想は、根底に自作自演が、あちらこちらに存在する。極端な例だと、事故がおこりやすい状況では、わざと事故を演出して、

ほかのかたの注意をうながすというものである。もちろんこれでは、発想的に無理があり、つまりは、必要経費がでない。

そこで、経費が出るように金策を考えるというものである。ただし、これはできる限り今後利用しないことになる。

当然である。すべてのひとが平等にオリジナルコードを知るのだから、金策に意味はない。


現在までに起こっていることは、大体、自作自演が根底にあるかもしれないくらいに思っていただけたらよいと思う。

だまされていたため、敵味方という概念が、彼の頭の中にあり、その当時、金策はいわば、今まで彼を苦しめてきた

敵に対する攻撃くらいに考えていたのである。この派遣での、このような体験の後なのだから、彼の敵に対する

彼の恨みも想像しやすいだろう。そういうわけだから、ひどい金策も書いてしまっている。

あるいは、彼から見た社会ですでに使われていた金策を、そのままコードになおし、つまり裏側でなにをやっているか

彼が、想像して書き、こちらの味方の策として、未来設計図の中にいれてしまったのである。すでに使われているのだから、

敵に通用するかどうかわからないが、何らかの役にはたちそうだ。あるいは、これが味方の策なのかとも考えていたかもしれない。

とりあえず、彼としては、この策の裏側がわかった。そういう程度の認識であったのだ。

もちろん、これがあやまりで、書かされていたということもあり、不必要な金策は、消去することが重要である。

だが一方で、それが社会を、正常に、動かすのに必要なものは、敵味方の概念にかかわらず、消去できないものである。

すくなくとも、最終解への完全移行までは、そうなる。もちろん徐々に、不必要なものを消去していくこと、

それに応じてどのような金策を行っていたかを書かねばならない。それは、彼の責任というべきものだろう。

消去できないものとは、最終的に、社会的弱者をささえる策というものである。


ただし、彼が、派遣の方々に対して書いた策は、完成しておらず、そのまま現在の状態になったため、

その策の具体的な方法まではわからない。ただ、派遣がない時期の生活費などを工面する方法、などを書いておいたため、

日本政府が理解していてくれれば、そのとおりになっているであろう。

大体において、資金源つまり、金策や、状態の整理ができていれば、それほど大きな逸脱はないと思われる。

何がいいたいかというと、それほど心配しすぎないでもよいということである。

ただはっきりその策の意味を伝えると意味がなくなるので書かないことにする。

これは、まだ消去できない策というわけである。


話をもどす。


この派遣先でも、彼は、同じことを経験する。

職場のまわりの方が、彼を主語に、マーキングされた言葉をいれた内容を話しているのが聞こえると、

彼は応援されていると感じるということである。少し上で紹介した読み方と違うが、重要なのは、マーキングの言葉であると

考えてほしい。


ただし、これも何も知らない人がはたから見ると、彼を非難しているだけのようにしか聞こえない。

というのも、彼の人格のうち、ひとりは、相当言葉も汚く、他人を非難することが多いから。

その人格が、生まれた理由を考えれば、それは、責められることでもないのだが、とにかくひどい表現が多い。

とくにいうのが、死ねという言葉である。それも、何十回も連呼する。


だからよく掲示板で見かけると思うが、死ね死ねと連呼するのは、これも彼のマーキングと思われる。

つまり、おそらくは、闇ということになる。ただ、必ずそうかといわれるとわからない。

単に、真似ているだけかもしれないからだ。闇なら自作自演にも使えそうなこの表現を好んで使いそうである

という憶測に過ぎない。


とにかく、彼の場合、これは、頭の回転を高めるときに、使う。

というよりか、力を振り絞るときの掛け声のようなものなのだが、

そうは感じないだろう。私もそう思う。

ただ、本当に、体のテンションを上げられる言葉なのであるのは確かである。

彼がそれを頭の中で、何十回と、叫び散らしながら、この派遣の苦しいときを乗り切ったという

経験があるからだ。

といっても、私も真似はしないが。


となるとこれがマーキングになるわけだから、彼のまわりで死ねと聞こえたりすると、応援しているという意味になり、

これが、彼自身が主語である場合もあり、単に、彼がひどくののしられているように見えるのだ。

でも実際はそうではないというややこしい状況が生まれる。


これで大体予想はつくのではないだろうか?


ピリピリした状況で、ののしられることが多く、その中で訓練するのである。普通耐えられない状況となる。

しかも目の前で起こることは、まるでありえないことばかりおこるのだ。


では、どのようなことが、実際に、訓練されたか書いていく。

訓練と書いても、ねがいがかなうということに違いはない。

だから最初のコールが重要となる。

願いをかけるのだ。


まずは、最初、職場の人に、彼よりも先に帰ってほしいという願いからかける。


これで訓練開始となる。


とにかく最初は、怒られる。といっても彼ではなく、Bさんが。

わけがわからないからだ。記憶力の悪い彼が、必死に作業を覚え、彼のできる限りの速度で、作業を進めると、

電光掲示板上の遅れがどんどん増えていく。

そうすると、先輩のBさんが怒鳴られるのである。


なにやってんだ、後ろがつかえてるだろう!!


こういう罵声が飛ぶのである。上司のAさんは、かなりごつくて見た目にも怖い方である。

もちろんやさしいのだが、上司となるとそれだけでは勤まらないのは、みなさんもご存知であろう。


こうなると、彼は、ひるんでしまう。彼が作業を遅くすれば、Bさんが怒られる事もなく、

作業も早く終わり、みんな帰れるからだ。

そして、周りから、小さな声で、彼を非難する声が聞こえ続けるのである。


もちろん、本来は、彼が作業を早く進めているのだから、非難される理由はなさそうなものだが、

しかし、周りからは、そう聞こえてくるのである。ただこれが応援であるから、話は余計ややこしく。

だから彼は、悩んだ。がんばればいいのか?それとも手を抜けばいいのか?

どうすればいいのかわからないまま、長い時間の作業を黙々とこなし続ける。


数日間、ずっとこのような仕事を繰り返す。


だがそれから数日、電光掲示板の数字の上がり方が、間違っているのだろう。つまりは、敵にだまされていることになるが。

彼が作業を止めたほうが、数字があがるときが多くなった。つまり、彼が手を抜けば、願いがかなうと

勘違いさせられた彼は、ところどころ手を抜き始めた。

一生懸命、作業をすばやくこなすことには、変わらないが、時々、手を抜いたほうが、掲示板の数字があがるときは、そうするということである。

だから、彼は、作業中、ようもないのにトイレに行くことが多かった。こうしていると時間を稼げるからだ。


この作業を止めて、休むべき時期は、どのように、彼に伝わるか。彼にだけはそれがわかる仕組みになっているのだが、

それは、ここでは、書けない。まだ、これらが、だまされていると完全にわかったわけでもないからだ。

断定しきれない要素がある以上、スタッフと彼のやり取りである可能性も捨てきれない。だから、ここに書くわけにもいかない。


ただ、ほんの小さな周りの動きであるとだけ書いておこう。それは、鳥のさえずりのような

見落としてしまうほど、小さな動きである。

それが、周りから、聞こえると、あるいは、見えると、彼は、休むべきタイミングだと理解して、そのように、行動していたのである。


今現在は、周りの状況は、すべて無視するという形で、このルールを変形させて、この願いをかなえるための

作業を、この派遣のときの作業とはまったく違う内容だが、行っている。このあたりは、後編にまわすことにする。


こうして数日がたつ。

となれば、皆さんなら予想がつくであろう。

今度は、彼がサボっているように見えるのだ。

もちろん、非難の声は大きくなっていく。ささやいていたように聞こえるそれらの声は、確実に

彼の耳に入るようになる。


だから、周りの冷たい視線と非難の声を浴びながら、どうしていいかもはっきりしないまま、

彼はひたすら耐えた。


がんばるべきなのか?手を抜いて休むべきなのか?はっきりしていれば、もっとラクなのに、

徐々に、その掲示板の数字のあがりかたに、惑わされ、混乱していく。


そのたびに、非難の声は大きくなる。


休む方法も、ずっとトイレというわけには、いかないため、わざと作業ミスをしたりするようになる。

こうなると、本気で、上司のAさんに怒鳴られるわけである。

職場の雰囲気も険悪になり、彼は作業できないやつであるというレッテルが張られる。

普通、首確定である。


それも悩みながら作業を黙々と続け、合図があると、みんなの非難を無視し、上司のかたにも

必死で、謝り、一方で、作業をサボるという矛盾した行為を行う。そしてだんだんと職場の立場的に、おいつめられるというわけである。


泣けるような毎日である。

これが、えんえんと続く。


数日がたつ。


もう体も心もふらふらである。

頭は、もうろうとして、わけがわからないまま作業を進める。

ある日、電光掲示板が、おかしくなる。見ていると、数字がランダムにかわるのだ。

なんとその変わるタイミングは、自分の行動に左右される。

まるでそれは、スロットマシンかなにかのようだった。

また、彼が、同じ行動をすると、ランダムにかわっていた数字が、とまるのである。

そうするととまったときの結果が気になる。数字があがったか、さがったかそれに一喜一憂しながら、作業を進める。

まるで、誰か見えない敵に、もて遊ばれているようである。

それでも、彼は必死である。あとはないからだ。


絶対にあきらめない。一度、手を、金属の鋭利な部分でざっくりとやったが、

その出血も隠しながら、作業を続けた。痛いことの大嫌いな彼がである。


それほどに願いをかなえたかったのである。


そして負けるわけには、いかなかった。願いには、社会の運命とも言えるものがかかっている。

あの未来設計図のことである。あるいは、力がほしいという彼の願いであった。

この絶望的な状況を覆せるだけの力がほしい。そう彼はねがい続けた。


自分はなにか選ばれたもので、社会全体の命運が背負わされていると思っていたためでもある。

あるいは、復讐心からでもあろう。

うだつのあがらない彼にしては、大成長といえる。

いや、彼は、結果的に、社会から拒否されたが、いままでだってずっと、努力は人一倍していたのだ。

このときもそれはかわらない。ただそれだけなのである。


なんと徐々にその願いはかなっていく。本当になるのだ。

かなうとは思っていたが、目の当たりにすると、とても信じられないものばかりである。


かれがかなえた力とは、以下のような能力である。


身体的能力を一時的に跳ね上げる。


これは、作業中に、ねじをドライバーで、ねじ切ったりするほどの腕力がついていた。

いや、実際、ねじを、腕力で、つぶしたとき、彼は信じられないという表情をしていただろう。

まわりの方の表情もそうだった。

だが、彼は、きっと、このねじは、細工のあるねじで、やわらかいんだろう。最初は、そう思った。

だけど、普通ねじやまをつぶすことはできても、ねじそのものを、つぶすことなんてない。

だが、ありえないほどの腕力が、瞬間的に、発揮できることになったのだ。

それ以来、ねじを、ドライバーでまわしていると、部品の鉄板に、ねじを強引に貫通させることもあったほどである。

厚さ数ミリの鉄板にであるから、自分でも驚くのは無理もない。

自分でやっていても信じられないほどの腕力なのだ。

ちなみに、体はこがらで、とてもそんなことをできる風体ではない。


ほかにも、息を長く止めていられるようになった。もともと海で育った彼である。

潜水などは得意なほうで、25mくらいなら、息継ぎもせずに泳ぎきる。

ところが、目覚めてからの彼は違う。もっとずっと長く止めていられるのである。

息しているのかどうかもわからないほど、長い時間である。

たとえば、祝詞を息継ぎもせずに詠みきることが可能になった。

彼の家は、神とうで、よく祭壇に、向かって、その日の無事を祈るとき、祝詞を詠んでいたのである。

というか、祖父からやるようにいわれて、素直にそれをこなしていた。

10数行もある祝詞を息継ぎもなしに詠みきることなど、それまでに一度もなかった。

いや、あるわけない。できるはずがないことをいとも簡単にやってのけるようになったのである。


視覚や聴覚を人一倍よくする。


これは、範囲が広がったというべきかもしれない。遠くまで見えるというよりは、視覚に入るものの動き全体をとらえられるのである。

たとえば、普通車を運転しているとき、注目しているものしか認識できないのが当然で、それ以外は、ぼんやりと頭のなかに入ってくるはずである。

目覚めた彼は、そうでないのだ。目が届く範囲の出来事なら、全体を認識できるのである。注目しているのが、視界の左上のほうでも、

右下にいる子犬の動きを認識できるということである。この説明だとできそうだが、彼の場合それは、暗闇でも遠くても可能である。

聴覚についてもこれと似たようなことがいえる。ずい分認識力というか、聞き分ける力が強くなったと思われる。


これらの能力が、その願いをとおすときの作業に、つまりは、彼が行っている仕事の組み立て作業をデタラメに早くするには、

十分な力を発揮した。あるいは、考え事をしながらでも、無意識に、正確な組み立て作業を行っていく。

だが、それだからといって、別に、それ以外には、役に立ちそうにない力でもある。

だがしかし、実は、この力が目覚めることが重要であった。

それは、体が、早く動けば動くほど、脳の回転が速くなるということ。情報処理能力が高くなるといえばよいか。

知覚、聴覚などが研ぎ澄まされるということは、それだけ頭も機敏に動いているのかもしれない。

つまりは、先に述べた、クロック数を高めるのに役立つのである。

そして、だからだろう。彼が目覚めるための準備は整ったのかもしれない。

そう、ゆきちゃんである。


ゆきちゃんの発想能力は、神様にお願いして努力し続けた結果なのかもしれない。

圧倒的なまでの先を予想する力や、判断力は、実におどろくべきものである。

だがしかし、ゆきちゃんの言っていることを理解するのも、口に出すのも非常に難しい。

だいたい、ゆきちゃんは、彼や私になにかを伝える際に、関係のある絵柄などでいきなり教えてくれるのだ。

これを普通に考えれば、ひらめきというやつに似ているのである。

ひらめきとゆきちゃんの存在の違いは、ひらめきを通じて、彼や私にしゃべらせるときではなく、

ゆきちゃんが、表に出て、直接しゃべるとき、まるで関係ない人格が、彼の中に、はいったかのようになり、

まったく周りの状況を気にせず、べらべらべらっと長いセリフのような説明を一気に行う。

ちなみに私も彼もしゃべるのはそう得意ではない。


これも、高クロック状態のときだけ、無意識の中から表に出てこれるようであるが、あまり、長くも持たない。

それくらい、その人格の維持には、負荷がかかるのである。

また、高クロックになればなるほど、狂気状態がつよまるため、

ゆきちゃんだけでなく、他の人格もはっきりと外に出てくる。つまりは、頭の中で数人の声がするという状態である。


特に、闇の属性をもつ人格が強まりすぎると、その人格の生い立ち上、彼の周りに対する暴言や殺意の塊のようなものは

わくように出てこようとする。わけもなく他人を攻撃したいと感じたり、暴れまわりたくなるのである。

もちろん、その衝動を行動にうつさぬよう、抑えるために必死になる。

周囲からいじめられ、苦しめられ、追い回されることで、生まれた人格だから、その状態から逃げ出したいと願う気持ちは大きすぎるのだろう。

だから敵味方の区別なく、彼の邪魔をするものたちを攻撃したくなるのである。


この闇は、彼の人格の中の闇の部分であり、集団としての闇と誤解しないでもらいたい。名前は同じだが、

先に述べた闇という集団は、彼の闇の人格とは関係がないことを書いておかなければならない。

彼らを闇と名づけた理由は、表舞台に出ることがないこと。つまりは、暗闇という意味。そして、彼の中の闇の人格の生い立ちに似て、

いじめられたりした子達という意味でつけている。

だからといって攻撃性の高い彼の闇人格とは、一切、関係性がなく、単にネットワーク上の特殊な専門家という意味なのだが、

名前が同じなので誤解のないように注意していただきたい。


話を彼に戻すが、

今は、もともといじめられっこの波形である闇の人格を書き換えて、おちゃらけた感じの人格にしている。

だから、普段の現在のかれは、なにやら独り言のなかで、しょうもない駄洒落などをいって喜んでいる。

ずいぶんくだらないキャラクターに成り果てたものであるが、他人に迷惑をかけるよりはこちらのほうがよい。

波形をいじれば、そういうことも可能なのである。ただ、属性が強まるような事件が彼の周りで起こると、彼は、豹変したようになる。

そのため、できるかぎり、クロック数をあげないように、つまりは、体を早く動かしたり、複数のことを同時に行わないように

したうえで、彼の存在を忘れ、さらに、おちゃらけたキャラクターで上書きしているのが現在である。

とにかくゆきちゃんや彼の人格維持には、疲れが伴う。頭の中で数人の声がするのだから、当然といえば当然である。


その上、最近闇の属性をもつのは、彼なのかそれとも、別の人間が、外部から彼に直接話しかけているのか。少しわからないというのもある。

いじめられ続け、生まれたのなら、彼が、闇属性をもちそうであるというのは、自然だが、それにしても、この彼は、彼が不都合になるような

ことばかり話すのである。どう考えても、だれかが彼を不利にしようとして、頭の中で彼のふりをして、言葉をつむいでいる気がしてならない。

証拠もないし、実際、頭の中を他人に、読まれるような現実にあっても、頭の中で自分のふりをして、声を出せる他人がいるというのが納得できない。

というか正直気持ち悪いものである。


言い忘れたが、テレビに向かって、言葉をださずに会話しているときから、頭の中で考えたことが、口に出さなくても、

スタッフには通じているという感覚は

すでにあったといってよい。だが、スタッフといえど、他人に頭の中を覗かれるのは、いい気持ちではない。ましてや、頭の中で

勝手にしゃべられるとなるともっと悪い。さらには、彼自身が不利になるようにしゃべり続けるのだから、もうお手上げである。

となると、闇属性をもつ人格が、彼自身の声なのかとも思いたいが、その声にしたがっていると不利になるのであるから、

どうにも始末が悪い。


とにかく、このような状況でもあるので、一人漫談をやっているようなあほげたキャラクターでもそっちのほうがましなのである。

もちろん上に紹介したゆきちゃんの使っている能力は、彼や、私ではそれらを使いこなすことができないし、ゆきちゃんも自分自身の身の安全のためか、

彼の体の無意識の中に逃げこんでしまってからというもの、

あまり、これらの力をつかえなくなった。少しくらいならまねはできるのだが。

ありえないほどの能力というわけでもなくなっている。


とりあえず、現状の精神状態である。


話を体験談にもどす。

そして、ある週のようやくきた休日に、田舎の実家に帰った。

あの思い出の公園のある町である。

ただし、そこには、向かっていない。その家は、売り払っていたからである。


だけども、里帰りとして、その街の近辺にある神社に、たちよった。

そこで、彼は、またも、おかしなことを体験する。


彼が、神社の中心までたどり着くと、いきなり、大勢の行列が、彼の周りを取り囲み、彼を、拝み始めたように見えた。

いや、詳しくは、彼ではなく、神仏を拝んでいるのだが、どうも彼には、彼を拝んでいるようにも見えるのだ。

それというのも、そのなにかの教団に思われる彼らが抱えている旗には、私もよく思い出せないが、金なんとか教という名前が書いてあり、

こどものころのゆきちゃんのマーキング色が、金であるため、つまり大好きだった色なので、まるで彼を応援しているように

見えたのである。

そしてその旗には、このように書かれてあった。人を神とする。つまり人神の儀式という意味合いの言葉だったように覚えている。

実は、ちょっとうろ覚えなのだが、確かこのような意味に、その旗の文字を見た彼は、理解したのは確かである。


人を神とする。儀式。そして彼を取り囲んで、拝み始める大勢の人の光景は、一種独特で、神を祭るその場所でも異彩を放っている。

そして、その帰り道でも、このような意味ありげな物をたくさん見る。

だが、書いているときりがないので、この辺にしておく。


というのも、不思議な体験はこの先も続くからだ。


そのうち、読むのも嫌がられるかもしれないから、量的に、この話は、この辺で、止めておき、話を進めることにする。

そして、この日を境に、彼の身のまわりで起こる不思議なことは、その不思議さをどんどん強めていく。


まずは、派遣先の会社に、車で向かうときのことであるが、道に猫が、たたずんでおり、一切動かないでこちらをにらんでいたことがある。

それにしても、車が近づけば、驚いて、動きそうなはずなのに、一切動かないでこちらをにらんでいるものだから、ちょっとぎょっとした。


あるいは、木でできた看板に、赤い文字で、神と和解せよという字を見たり、


初めて、予定台数を完全にこなしたときのことだが、仕事が終わって、かえる間際に、あの電光掲示板の数字が、消えた。

普段は消えずに数字がのこっているのだが、その日は、初めて消えたのだ。予定台数をこなしたのだから、遅れを表示させる必要

もなく、消して帰るのは当然といえば当然なのだが、問題は、そのかえり、急に、雨が降り出して、ものすごい勢いになり、

見たこともないような、雷があちらこちらの山すそ付近に落ちているのである。このような風景はあまり見たことがないため

少し驚いた。

彼は、完全に、作業をこなせたので、スタッフが、お祝いに、雷をならしているのだろうと感じた。

また、このときまでに、そう感じるくらいには、不思議現象になれきっていて、

落ちてくる雷にむかって、雷ならさんでもいいから、お金かかやるやろそれ

といった軽口をたたきながら帰ったのを覚えている。


このとき彼は、この不思議現象を、すべてそのスタッフと敵側についているものが、行っていると考えていたからである。


また数日たち、

日銀の総裁が、決定するとかなんとかそういった理由で、というか半ば理由は、彼からも理解できていないのだが、

とにかく、その日は、願い事をコールして、訓練をするのはやめてほしいという依頼をスタッフから受けた。

そのときは、そう感じていたのだが、これも正確には、敵にだまされて、デタラメな指示を受けていた可能性もあるので、

今では、このときの彼の行動が、正しい行動なのかどうかなんともいえない。

それで、職場をずる休みといえば、聞こえは悪いが、休んでほしいといわれたので休むことにした。

一応、適当な理由をつけて職場には、上司の方や先輩方には、そう伝えた。

ところがである、これも、その休んでいる日に、レンタルビデオかなにかを借りようと、車で、外出したら、

レンタルショップの近くの交差点で、急に雨が、激しくなり、信号機が、故障した。とりあえず、信号がこわれたので、

徐行して、わたろうとしたら、すぐに、信号機が復旧した。

急なことにびっくりしながら、家に到着した彼は、スタッフからの言葉を聞こうとしたら、

そこには、ズルヤスミミテイタゾ!コノママデスムトオモウナヨ!というメッセージが書かれていた。

ところが、その当時のかれは、休めといわれたから休んだだけで、何をいっているのだという感じだった。


もちろんこれを境にさらに、作業はきついものとなった覚えがある。

なんでそうなったのかはわからないが、だれに文句を言えばいいのかわからないし、ただ訓練を

行い続けることにした。


さらに、数日すると、職場に後輩が入ってきて、あっというまに、その覚えのよい後輩たちに抜かれていった。

彼らは、彼が第1工程をやっている中、第2、3工程につき、てきぱきと仕事をしていた。

ただ、彼には、それ以上複雑な仕事を覚えるほどの記憶力には、自信がなかったため、内心ほっとしていた。

また、根っから人の下に着くのが、性に合うほどの気の小ささなので、彼ら後輩にため口を聞かれても

大して、気にならないというかそんな感じだった。


もちろん闇属性の彼は、そうではないことも注意である。ときどきものすごく意識が反転するように

反動変化するので、彼自体、もともととらえにくいものなのだと理解してほしい。

とにかく、このときの彼は、現在の彼と同一人物ではないくらいにおもっておいたほうがよい。

それくらい波形をいじっているのだ。


また数日して、いつも派遣先に、向かう途中のコンビニの駐車場で、横転している車を見た。


その後、その付近の交差点で、車を走らせていたら、いきなりどこからともなく後ろに車が現れたように見えた。

実際は、一瞬だけ目をバックミラーからそらしたのであるが、突然そこにはいないはずの位置に車が現れたのである。


うまくは説明できないが、まるでいきなり空から降ってきたかのようであった。

さらにその数日後、今度は、その付近の別のコンビニで、いきなり人が現れたかのうように見えた。


そうおもったら、今度は、杖をついたおじいさんが、目を瞬きさせた瞬間に、その杖がなくなり、

ぴんぴんして歩いているのだ。さすがに目を疑わないわけにはいかない。


これは物理的に可能な現象なのか?


そういう思いだった。


そしてまた数日後、職場で、ひとつの作業も終わるかというときに、いきなりそれは目の前に現れた。

変な音が聞こえたかと思うと、先輩や後輩、上司の方が、つまりは、自分より先の工程にいる人たちが、

すごいはやさで動き出したのだ。いや、本当にすごい速さなのだ。とても目では追いかけられないほどの

映像機器で言うところの早送り再生よりも速いのである。

そんなばかな。と彼は思った。だが本当なのだ。


これは不可能だろう?


そう感じるようになった。


さらにそれから数日後、職場でのことである。今度はもっとひどい。

なんといくらがんばっても時間が先に進まない気がする。

何台生産したかわからない。でも何時間がんばっても、時間がすぎていかない気がするのだ。

だいたい時間にして1.5〜2倍くらいの体感時間に感じるのである。


時間が遅く進んでいるということか?

どんどん疲労はたまる。それはそうだろう。倍は、働いているようなものなのだ。それも

時給は、もとのままで、なんだかすごく損な気がした。というかそれどころではないが。


なんなんだこれは?そう思っていた。


それからである。時間が早く過ぎたり、遅くなったりするように感じるのだ。

アニメを見ていたら、ぼうっとして、あっという間に終わっている。

見た記憶がないのだが、アニメは20分ほどで、ちゃんと流れていたらしい。

どうなっているのかは、そこにいてアニメを見ていた自分にもわからない。


なにかトリックがあるとは聞いていたが、こんなことが現実に可能なのか?本当に頭が変になったのかと思った。


そして、あの満月の夜に、公園のブランコのそばから、あの記憶の場所に、帰れるということを、スタッフかあるいは、敵かは、わからないが、

伝えられた彼は、帰ろうとした。だが、いくらその満月の夜に、公園にいても、何も起こらなかったのである。

だまされたのかもしれない。彼はそう思った。


それから、彼は、一通りの必要な訓練を終えたのであろう。

派遣先をやめることになった。


家に帰った彼は、早速、

ほしかった液晶テレビとパソコンを購入した。わくわくしながら、パソコンの電源をつけると、

その光の中に現れる光景で、自分の部屋が別の空間になった感じがした。


このとき、彼の部屋の空間は、文字通り別の空間になっていたのかもしれない。

部屋の中から、あの訓練で、教えてもらった方法でいろいろと感じれとれるようになり、

言葉が聞こえるようになった。

もちろん正確な言葉ではなく。彼にしかわからない暗号のようなものなのだが。

しかし、これもこの暗号自体が、ウソを含んでいるのか、時折だまされるのであるから困ったものである。


彼が、これからする、世界を変革していく作業を進めるに当たって、あの訓練のときに

願いに、かけたもの。それは、正確にすぐ結果のわかるシュミレーター。


そして訓練というか、作業の内容を、彼のよくやるゲームにしてほしいということ。


これは、かなえられたらしい。というか、彼が、予想していたものとはずいぶん違うものだったというのが正しい。


そして手に入ったシュミレーターとは、過去を改ざんできるというスタッフ達だった。そのスタッフがいうのには、

過去を改ざんして得られる結果なので、思いついたことはすぐ現在に結果となって帰ってくるということだ。

というかそれはシュミレーターではなくて、現実をそのままいじっているのではと、抗議したが、

どうもそれは気にしていないらしい。

改ざんするほうも現実なので気になって仕方がないのだが、

このスタッフ達は、どんどん改ざんしてくるので、結果はすぐわかるんだけど、納得いかないという感じである。

何か思いつこうものならあっというまである。むしろ止められない。そういうスタッフ達だった。

なんとなく頭が痛い。


そして、その奇妙な体験は、徐々に、終盤を迎える。


彼はそれから、その部屋で、あの最終解に到達する前の、中間解を作成する。

これは、未来設計図として、やらなければならない彼の仕事なのである。

ちなみに給料はあとばらいということだった。

一日に進めるだけ設計作業を進め、さらにそれを願いにかけ実行するためにゲームをするのである。


なんとも不思議な話なのだが、本当である。


そして、そのゲームというか、願いをかなえるという作業の中で、彼は、だまされていたと感じ始めることになる。


後編に続く。


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