カラー=パープルピンク
カラー=パープルピンク
僕はピンクマンションの前まで来た。
今日のマンションは、コーラルピンクに染まるマンション外壁一杯にホワイトピンク色で巨大に王宮シャンデリアシルエットがスポットライトで模されていた。紫掛かる夜の空には大粒の銀の星が煌いていた。
外壁はサイドから他の特殊ライトを満面に当てられ、不思議とピンクの中をパープルがキラキラ砂のように煌いていた。
僕は背後を振り向いた。
「ああ、ここだ!」
男の人の素っ頓狂な声が紫夜に響き渡って、身なりのいいスーツの若い夫婦が揃ってマンションを見上げていた。金持ちかな。
奥さんの方は清楚なのになんだか可愛らしい顔をしているから僕は頬を赤くしてうつむいた。夫の方は凄く格好良い人だった。
「ねえコーサー。ほら、角度が違っただけだったのよ。あんなにシャープな建物に見えたけれど実際はこんなにワイドに広くて建物全体が大きく波打った形をしていただなんて」
「そうだね。それに」
男の人はまたマンションを見上げた。シャンデリアは左下から当てられた他のローズピンクの波紋のスポットライトに揺らめき水面に映った様に消えて行き、マンション全体がピンク色の海の様に水面を作り煌いた。
「この分だとピンクの色のバリエーションも100種類以上の設定が用意されていそうだ。てこすらされた物だよ」
水面は徐々に左端から、シャンパンクリアピンクの波が立ってはサーフィンをするのには丁度良い波が右へと押し寄せつづけた。これはスクリーン映像をマンションに映しているものだった。
2人は椰子の木が並んでいる左の道の方向を見渡したりしていて、このマンションが四角に見える所まで奥さんが歩いて行くと、ポイントを定めるかの様に何かを書いていた。
僕はマンションの前庭の中に広がる公園に入ると、シーソーに座って彼等を上目で見た。
奥さんの方が僕に気付いて公園に入って来て、遊具を見回しながらここまで来てしゃがんだ。
「こんにちは」
「こんにちは」
「あなたはここのマンションに澄んでいるの?」
僕は首を横に振って警戒して公園周りの木の向こう側でパソコンまで開いて写真を読み取っている男の人の方を見た。
「お姉さん達ここの部屋に入るの?」
「いいえ。調べ物をしているの」
「旦那さん?」
「……」
お姉さんは透き通る淡い色の瞳で瞬きしてコーサーって呼んでいた恋人を振り返ると、「ふっ」と可笑しそうに噴出しながら振り返った。僕は首を傾げた。
「あたしはフィスター=ジェーン。あなたのお名前は?ママが心配するわ」
「僕にはママはいないから。パパもいないし」
「まあ、あたしったら、ごめんね」
「別にいいんだ。嘘じゃ無いし」
時々、全部嘘ならいいとは思うけど。
「心配してくれてありがとう」
僕はそう言ってから、マンションエントランスの方を振り返って、オーナーが煙管を持つ腕を組んで、下げた口元で僕を睨んで佇んでいた。シーソーから立ち上がった。僕はフィスターお姉さんの横に来て上目で老婆を見た。
彼女は白いショートの髪をシャープに流していて灰色のメッシュを入れている。背が細くて長くてきつい目元を冷たくしていて、今日は白シャツに黒のロングスカートを着て黒いヒールを履いていた。
耳のシルバーと真珠のイヤリングが鋭い目に加えて彼女を冷たい印象に増幅させていた。
お姉さんは彼女に気付いてにっこり微笑んだ。80代には到底見えない老婆はしゃんと伸ばした背を向けると横目で僕等を見て、踵を返して男の人に気付くと意外そうな顔をした。
「あら。ミスターレガント」
そう辛し声で言うとその男の人はパソコンから顔を上げて、片目をこすって柔らかい印象の眼鏡を上げると、「ああ」と男らしい笑顔になって眼鏡を仕舞い、そこまで歩いた。本当に格好良い人だと思ったけど、ちょっと眼鏡取ると冷たい目元だ。
「貴女の経営するマンションでしたか」
そう演技っぽく言い、なんだか、それを知っていたという感じに聞こえた。
「お婆様のご活躍は耳に入れているわね」
「孫としても喜ばしい限りですよ」
「ええ」
老婆はそう言うと僕の横のお姉さんを見た。
「浮気の為のお部屋探しかしら?シバーラ夫人がいらっしゃるのにねえ」
「え?いや違いますよ」
「そうでしょうねえ」
大きな伏せ目を作ってそう言うと、流れるように2人を見てから首を緩く頷かせて煙が揺れた。
僕は視線だけで追い出されて、マンションから走って行った。また老婆が見えなくなったらプールで泳ごう。




