色彩の称号=全部のピンクカラーワールド
色彩の称号=全部のピンクカラーワールド
僕は花を一輪持ってマンションに来た。
サーモンピンクからコーラルピンク、フラミンゴピンクに変わって行く。波みたいに。
ガラスのエントランスを潜るとローズピンク色の石材とピンクのガラス衝立壁で仕切られたフロアを歩いて行った。
「おばさん」
「リグ」
「こんにちは」
「ええ。こんにちは」
おばさんは暗い顔をしていて、透明の輝くピンクシャンデリアを赤ピンクの中見上げると少しだけは色づいて見えた。
「ごめんね。あの子がこうなった事だけでもどうにか隠さないといけなくて」
僕は口元をちょっとだけ上げることしか出来なかった。
彼女のパパは超大物だから知られるわけにはいかない事件は、彼女のパパがもみ消した。この州の警察本部長だから。
すでに5年前に離婚が成立して娘を引き取ったおばさんは彼女を孤児院に連れて行った。僕は彼女と出会った。
「あの、花」
僕はそれを掲げておばさんに見せた。
「まあ、綺麗な色」
「あの子がピンク好きだったから」
「ありがとうリグ……」
赤い空間に浮いたピンクのガーベラは可愛らしかった。
「僕、この事言わないよ」
「辛いでしょうリグ」
「うん。辛いけど」
僕は一度うつむくと肩を大きく回した。
「泳いでくるよ」
僕は泣きそうになる前に走って行った。本当は泣きそうになる前に走って逃げたからだ。泣く事から。一気に辛くなるから。
プールは波型のマンションの中庭広場にあった。真っ白の空間で、プールの水色が昼のスポットライトで揺らめいて白をちょっとだけ水色が照らした部分もあった。空中公園から飛び込みも出来る優雅な広場だ。
よくここをあの水族館という事にして魚の真似をして2人で泳いではしゃいだ。
あたし達、残酷だよねとマリーは言っていた。
あたし達は元々自由で、心だけ窮屈で、こうやって自由じゃなくて水槽の中に引き込まれた魚達の真似をして、疲れればまた水から上がって、その内にも食事を時間通りに与えられて掃除されて、敵に会う事無く、サバイバルも無く、安全で、あたし達、同じなんだって気付いた……
親元を離れて、与えられた時間のカリキュラム、食事、居場所、なんで、気付いちゃったんだろう……
だから、惹かれるのかな
同じ物、同じ境遇、同じ物
囚われた身だなんて事……捨てられたほうと、離れさせられた方、どっちも辛いよね
彼女の白い肌に水色と、輝く水面と、夜のスポットライトの黄白が眩しく映ってた。縁に立って、瞳がキラキラして表情が無い顔で水面を見つめていた。
マンションオーナーの老婆に引き取られて可愛がられてきたあの子はなんだか不満そうだった。
あたしわがままだな、恵まれてるよねって言って肩をすくめると僕の肩をぽんと叩いた。
それなのに死んだら終わりなのに、彼女のそういう情操だけ駆けめぐり続けるだけで、僕の中に残す
僕は飛び込んだ。どこまでも深く潜ってみた。苦しいから上がった。
流れる遥か上のいびつな切り抜きの青い空を行く真っ白の雲を目で追い見た。
もしもあの子がピンクじゃ無くて、僕と同じ水色が好きだったなら、自殺なんか考えなかったんじゃないかって、思った
もしも君が死ななかったら……ずっとそばに居たかったのに




