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色彩名蝶=サイレント・ジュエリー
色彩名蝶=サイレント・ジュエリー
「遺書をここに遺します。長年ご愛好頂いた方には大変申し訳無い事になったとお詫びします。もう私には……美しさを飾る事に、恐怖しか、見出せなくなってしまった」
暗い室内を暖色の照明が照らし、優しげなままの老人はずっと変わらないままだった。
愛用し続け使い古された様々な用具や器具達、美しいデザイン画の数々、作品達
「MM。こうやって死に場所を与えさせてくれて感謝しているよ。ココの事はそんなに激しくは怒らないでやってもらいたい。仕方が無かったんだよ。こうなってしまっては」
そう、手をさすってから顔を挙げた。
「これから、君も頑張りなさい。天国から、勝手ながら応援しているよ。会えるといいね」
手の加えられた全ての一つ一つ、叶えてきた女性の美しさを引き立て際立たせる者達の数々。
女性を思い続け、女性の為だけにだからこそ産まれる者達を作り続けて来た美しい職人の手。
「死に華を添える事くらいは、どうか老人の最期に許して欲しい」
彼はそう言うと古びて擦り切れたビロードの一人掛けから立ち上がり、微笑んだまま手を振った。




