色彩名蝶=アクアマリンの爽やかブルーオーシャン
色彩名蝶=アクアマリンの爽やかブルーオーシャン
「まあ、なんて言うかこれは仕方の無い事でもあるのよね。だって、あんたに嫌われたらあたし、ハハ、誰に拾われるって言うのかしら?猫みたいに惨めになるのは好きじゃ無いのよ。わかってるでしょ?あたしのそういう性格」
そう彼女は軽く肩をすくめ、ゴーグルを頭に着けながら綺麗な顔のメイクは多少、水で滲んでパステルカラーになっていた。
どこまでも真っ青な何かのような海は広がっている。
真っ白のヨットに彼女は腰掛け、眩しい水面を受けて綺麗に笑った。
「そうそう。結婚の話なんだけど、彼女との結婚、祝福してるわよ。まあ、何か贈ろうなんて今は出来ないんだけど、この綺麗な海は雄大じゃない?!」
そう両手を広げてみせた。
ウェットスーツに身を包んだ彼女は清々しそうな顔を風に持って行かせてホワイトブロンドの纏められた髪を抑えた。
美しい、横顔だ。
俺は、彼女を愛していた。深く愛していた。俺が何を捧げて来たかは今となってはもう分からなくなってしまった。
死なないでくれ。死なないでくれ……
どんなに乾いた喉で心の中叫んでも、すでに彼女の死体は3日前の夕方、腐乱した状態で引き上げられた。
届いたダイレクトメールは余りにも綺麗過ぎて、胸がぽっかり開いてしまった。
その空間に、美しさだけ、染み込んで全てをリセットさせてしまったかの様だった。美しさだけになった様だった。
何でだ?
結婚は決まっていた事だったのは確かだった。彼女はその話を窓辺で聞いて、コーヒーカップを見下ろして寂しげに微笑んだ。緩い日差しを浴びて、目の前の俺を見上げて、おめでとう、と、微笑んだ。
死ぬ事など無かったのに。本気で惚れ込んでいたのに。それを、彼女は受け止めてくれなかった。
心を綺麗なまま、気持ちを天まで持ち逃げしてしまった。
確かに、結婚した後会おうなんて都合良かったかもしれない。俺側の勝手な幸せの空想だったかもしれない。
彼女は哀しんでいた寂しい顔を隠して、一人旅に出てしまった。
「もしかしたら、この海あなたは来た事あった?綺麗よね……ダイビングするには最高。まあ、最期の場所にしてしまうのは何だか忍びないんだけど」
鴎は遠くから群を成して青空を飛んで行き、彼女は立ち上がり見上げて太陽を手をかざし見上げた。
2匹だけ寄り添って、水面にぷかぷかと浮かびゆらゆらと、水色の透明な上浮かんで幸せそうに目を閉じ揺れていた
寂しく一人で死にに行ってしまった。
俺に愛の言葉だけ残して、こうやって、残して、綺麗な青だけ残して、綺麗な彼女の姿だけ
海のたぷたぷという波音、彼女の聞こえない心音、生きている鼓動、全て、波の狭間に流れる時に消えてしまわないように、
「あたしの愛情を受け止めてきてくれてありがとう。あなたがあまりに優しかったから、いつも嬉しかった」
彼女は微笑んでそう言い、途切れる事は無かった。
「なんで、人は地球の青に惹かれてしまうかしら。青に包まれて、還りたがる……」
笑顔、輝き、反射する煌き、白の浮く青
「こうやって残しちゃってごめんね。一人で行ってごめんね。でも、綺麗よ。ありがとう、あなた」
微笑んで、
「愛してる」
ゴーグルを填め背後に水しぶきを挙げた。
嘘だと叫んでも画面を消しても耳を塞いでも、目を閉じても、きつく閉じても……、どんなに叫んでも
「俺だって愛してる、」
跪き顔を押えた。
顔を上げても、涙で視界が開けても、この場に、ぼやけたお前さえいない
画面の細波
画面の細波




