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 「メランコリーな若者達を対象にした物だろう。無意味な死とも呼べる。人口の大多数が社会に必要とも思えない中の」

「だから何だ。くだらねえ事言うなよ。勝手に存じ上げねえ内に人一人の命ぐらいくたばって様が確かに俺達には関係ねえがそりゃあこの職業の意気込みじゃあねえだろう。だからボンボンの暇凌ぎだって言われるんだよしっかり打ち込めねえなら俺のチームから出て行きな」

「ああ悪かったよ」

正直、あのパソコンに忍び込まれた事で相当苛立っていた。ダイランが集め、処理し続けて来た情報や捜査内容は、全てが後一歩という所で確信に近づけずにいる物ばかりだ。今回の様に容易に回線が繋がる様では困る。首が飛んでは奴等を正当な域で捕えられない。

 幾度も映像を流す。

まだ確固とした事件性も見られず、捜査は限られて来る。こんな事件ばかり担当する事は多いが、とにかくこの管轄に籍を置いていればいい。

何度も灰を落とし組んだ腕に指を打つ。モザイクこそ掛かってはいないが、暗闇に閉ざされたスイサイドの体系は女だ。

レンズを通し、妙に殺伐とした雰囲気のくせに客観的な感じと虚無的独特の空気が充満した映像だ。

 フィスターは階まで急遽駆け上がり、ドアを開ける。

「自殺幇助に今まで荷担した者の調べをまず当たってみます」

ダイランのマイラブフィ……、彼女が部屋に入ってきながらそう声を張り上げる。

その手にはCD−ROMが収まっている。ダイランが署に戻って来たという事は同じ線に決まっていて、これは警察への挑戦状に違いないと思ったのだろう。そうかもしれないが、目的が掴めない事だ。

実際何の目的も無く犯行に及ぶひやかしを掛けて来る輩は半端無い。中でも始末が悪い物が妙な嗜好を持つ犯罪者達だが、そんな物ダイランには関係無い。犯罪は犯罪。スムーズにさっさと檻に突っ込むまでだ。

「その前にこちらの映像もご覧下さい」

フィスターは手短に、自室寮に設置されたインターネットの受信状況を確信したところ、送り込まれていた事が発覚した事を説明すると映像を流す。

 最近では様々な犯罪が後を絶たないネット上事情だが、請求書が送りつけられるならばまだしも、そういう物のコレクターまで現れ触発され犯行に及ばせる阿呆もいる程だ。

写真では無残でグロテスクな惨殺死体、異常な解剖医の素顔の映像、音楽ではドラッグミュージック、洗脳目的の邪神ミュージック、映像ではイカレた行為の数々。反吐が出る物ばかりを流し込んでは金を得る裏社会。

それらの中の一部と見なせばそれで終わるが、そうは問屋は降ろさないのが彼率いるこのチームの長所だった。どんな小さな事件でも逃さない。徹底的に犯人を追い詰めて牢に叩き込む。一種それは執念だった。

だからと言え、別に良心が疼き正義心が根付いているからというわけでもない。逆に犯罪に餓えているわけでも無い。あまりにダイランに優しさなどが欠けている為に余り感謝されない所が彼の短所でもあった。

また経費も降ろせ無い様なボランティア的雑業になる事だけは避けたい。

 送り主も不明のままの内容を見る。

声明文とも取れる内容の違いに気付く。


MEMBER各位

始めに断っておく。もしもこの世に未練があるのならば、あなたはここに留まり、生き続けなさい。その道を選ぶ者が常人ではあるが、全ての人間がそうというわけでも無い世の中だ。

もしも、興味本位で一つのそれらの死の世界を見てみたい、追求したいという心からであるのならば、ここからは引き取って頂きたく思う。死を伴う物に探求は不要。その心こそは破滅への一歩へと繋がる事だ。

単なる戯言ならば生がどの様に恵まれるというのか、本気からの心ならば報われる方法は幾らでもある事を分かる事だ。

あなた等はただの一度も過去を振り向く事無くいられない事は分かっている。過去の辛い一つ一つを見つめては、逃げ場の無い中をまるで後ろ向きになり歩いている姿をしている。

人々は終焉の時を望み、自傷の癖を付け、心を死へと漠然に向わせる。生への判断力さえ失い、一時の絶望であるとも気付かずに身を投じようとする。それを楽しみにする人間もいる。最高の死の場所と方法、それを模索し、死ぬならせめて何かを残そうと言うのか。

生への道が再び開かれたのなら何を望む。

心身を壊して絶望していても、余裕が無くとも一度思いとどまっては見ないか。あなたのその死を。是非、そうしてもらいたい。

NETWARK社長


「明らかに違う」

「ああ。ふざけ切った要素こそは無いが、その後に映像を流すなどという所は、前者同様自殺を容易に見ているとしか捕えられない事だ」

「もしかして、前者は自殺者を募らせ促す文章、後者はその自殺者がいる事を世間に知らせ、世間に思いとどまらせようとする内容なのでは?明らかな違いには犯人の人格の二重性が見てとれます。本心では思いとどまらせたい心はどちらにもあり、それでも自殺者の絶えない現状を捉えていると」

「そんな物は甘い考えだ。本気で留めたいなら映像なんか流して死を茶化した様な一連の行動は取らない。明らかに送り主は病んでるんだよ。それか余程ひねくれてる。自分でさえ死の方向性に思い悩んでいる証拠だ」

「そうですね」

「それに拍車を付けて人員を募らせようなんて事は間違ってる。同士を引き入れて自分を正当化しようとして死を思いとどまろうとしているだけだ。ふざけきった事に変わり無い」

「この社長は何の動機で動いているんでしょうか」

「まだ分からねえ。映像を流せ」

「ああ。今やるよ」

フィスターがいるとコーサーは署内での顔に戻った。そういう所がダイランは嫌いなのだが。本心を隠して装う奴には他の隠し事が多いという証拠だ。

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