<No,4> 色彩名蝶=飛び立つフラミンゴピンク
No,4 色彩名蝶=飛び立つフラミンゴピンク
「もしも、あたしが自殺しなかったら、傍にずっといてくれた……?」
白のワンピース、群青の空に染まり、寂しげな冷たい風、彼女の涙はクリスタルの珠の様に光りをまとって、風に浚われた。
「あたしね……、よく覚えてる。あんたがよく連れて行ってくれた水族館の事、綺麗だったよね……」
瞳は涙で光っていた。
「本物の海が巨大な水槽の向こう側に広がっててさ、あたしとあんた、二人でそんな中を泳ぐ空想をよくしたよね。壁なんか取り払っちゃって、他の魚達も逃がしちゃって、自由に泳いで、分かれたママや恋人に会いに行く……成長した子供に会いに行く……曇りの日も、太陽の日差しも、不安な日々も、全て無しにして、一緒にいたかったよね……いつまでも……」
掠れた声に、僕の記憶の中に美しかった青空の下の水族館が浮かんで、あの子はいつの記憶も輝いていた。
「あたしが、死んでからきっといろいろな事があんたの周りで変わるよ」
彼女は微笑んだ。
「大好きだったよ。あんたの事とか、あたしを捨てたママだとか、先生とかマーキーとかリリア、キャロル、マックス……それに、おじさんや、パン屋のサントスさん、それに3匹の猫、」
僕は、泣く事しか出来なかった。
「綺麗な海、水族館、二人でよく回った公園、あんたのこと、ママと、パパ、自分の事、」
画面の中のあの子が、とっても、小さく見えた。
「シューマート、キャサリン、それとマーク、アーリー、セティオン、ウォーリーさん、シーム、」
アッという間に、
「カトレアに、それとランに、サーリーと、レナルドおばさん、レイドに、」
落ちて行った
ピンクに飲み込まれて行った
「みんな大好き」
頭が砕け、僕は目を塞いでうずくまった。動く事が出来なくなって、しばらく脱力していた。
目が腫れていても気にせずに僕は顔をTシャツで拭ってから部屋を出た。
牛乳とパンを買って来るメモを持って、気分はやっぱり無気力っぽい所を彷徨っているような感覚だった。考える事をそれで無くそうと思った。
動かずにいたら、きっと死んでしまう。感覚が。
教会に来るとベンチに袋を置いて、十字架を見上げた。
金メッキで綺麗に彫刻されていた。
こうやって、教会に来たのは初めてだった。参拝者が適度に多くて僕はぼうっと見上げていた。
綺麗なステンドグラスはマリアが泣いていた。息子を失ったからだ。
僕は泣く事しか出来なくて、ミサがそっと流れたのを、ずっと立ち尽くしていた。




