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<NO,1> Color=One

NO,1 Color=One


 火曜だけあってまだ署内はこの時間ごった返すように溢れ返っている。

特A補佐刑事ジョセフが、戻って来たダイモン主任を意外そうに見下ろした。

仕事上だから仕方が無いが、このジョセフとパートナーの刑事ティニーナのコンビと稀にサブとして組む事になる。

 基本的にダイランはこのモデル上がりのジョセフの性格も顔も何もかもが嫌いだった。この男の婚約者の女、ティニーナの事も嫌いだ。

基本的な相性という物が合わないだけなのだが。

余計な無駄口を叩かれる前に無視して部長のいる部屋に直行する。ジョセフは肩をすくめやれやれと溜息をつく所が癪に障った所だったのだが。

 扉を開け、机にディスクを放りケツを乗せた。

部長は溜息混じりにハイバックチェアを反転させ、背を向け新しい煙草に火を着けている部下の後頭部を見上げ、書斎机から降りさせた。

全く、蹴り出したくなって来る態度だ。

 目の前のディスクを見下ろすとダイランの顔を見上げる。ダイランはジッポーのオイルが切れたらしく振っていた。振り過ぎて中身が本体から飛び出し、向こう側の壁まで吹っ飛んで行った。

部長の娘ティニーナは、父親に茶を出している所だった。彼女の、飲むよねという好意の言葉も無視し部長に話し始め、ティニーナはフン、ほんとヤなヤツと、勢い良くソファーに座った。だが、要所に掛かる前に追い出された為に騒いだものの、すぐに収まった。

ドアの外から驚いた声が聞こえ、ダイランは眉を潜めて部長を見てから、勢い良くドアを開けた。ティニーナは舌を出してはたかれたケツを擦った。

 また戻って話し出す。だがドア外で話し声が聞こえた。

「自殺映像が送られて来たらしいよダイモンの部屋に」

「マジかよ。ついにそこまであのルシフェルやり始めたか。黒いな」

「自粛し始めたならガブリエル様でしょー」

「あっはははそれいいね〜!すっごい皮肉!」

 ダイランは拳をぷるぷる震わせて背後をギロリと睨み、部長が止める前に今度は即刻走った。

同僚は馬鹿な話に呆れた様に2人を見守ってから仕事に戻る。

部長が娘を下がらせる為に食堂券を渡して漸く落ち着いた。

 まだ少女をかばった白狼と、食人事件を引き起こした少女の後処理は続いている。

 今ごろあの白狼は街も落ち着いたことで山脈に戻っている頃だろう。あの狼は山の神様だ。話ではメス狼だというし本能的に追われるものを助けていたのだろう。優しい目をした狼だ。

 結局その少女は食人教祖の男と逃走した。

 パソコンで作業をしていたダイランのパートナーの警部補コーサーは、屋敷からのディナーから帰って来た時でもあった。頭脳派キャリア組である。

ダイランが戻った事はエレベータが開いた瞬間から分かっていた。あのダイモンの怒鳴り声はこの3階から発されても1階にまで騒々しく響く。凸凹コンビは2階の食堂へと向って行った。

「何があった。珍しい事だ。お前が戻って来るとはな」

「来い」

 部長室へ入り、再び映像が流された。

見慣れた無残な死体。見慣れた悲惨な現場。見慣れた自殺者。見慣れた気違い共。凶悪残忍な手口はよく見る沙汰だ。

ただでさえ胸が悪いというものを、それに耽美まで付け加える心理の胸糞悪さにダイランは我慢ならなかった。

「まあ、悪趣味なアッパークラス達の余興だろう。まるで事件性を感じさせない趣味的趣がある。お前が間違って受信しただけの事だ」

DD捜査に関してはこの男も共謀し共に裏で捜査を進めている為、本来どのパソコンに入り込んできた物なのか位分かっている筈だ。

「問題は何処でこれが行われて何処のどいつがくたばって何処の糞ッ垂れが撮影して何処の豚共が愉しんでやがるのかだろうが、これは立派な犯罪なんだよ!!」

苛立ち紛れにまた怒鳴り声が響く。今頃あのコンビは共に肩をすくめている頃だろう。

 その声に重なるように電話が鳴る。

部長が取り合う。

「ジェーン君からだ」

3人目のチームメンバーの女、フィスター=ジェーン。まだ新米も同然でコーサー同じくキャリア組の刑事だ。

 ダイランが主任を務める特Aは3人編成であり、殺人課処理B班内に部署が置かれ、B班はリーダーのソーヨーラ、ロジャー、ハンスの3人で編成され、両班のサブでティニーナ、ジョセフが入り、其々の事件にあわせB班も特Aに加勢し捜査をし、特Aの暇な時期はB班を全体で回し過去の迷宮入り事件の再捜査と処理を続ける。彼等を取り仕切るのが部長のハノスだった。

 フィスターは用件がある為今から署に戻るという事だ。

「ガルド警部にも起こし頂きたいので恐縮ながら連絡を繋いで欲しいのですが」

既に戻って来ていれば、彼との連絡の取りようは皆無だ。直接の居場所も掴めなくなる。本人が変わった。

「すぐに来い」

「はい!」

一瞬で緊迫した声になり、電話は切れた。

 嫌な間合いが3人の間に流れる。同じ件の可能性が高い。

キャメルが砂漠の熱を吸い取るかのような心理的悪寒がした。


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