Color=Zero
★The Lenz Which Stare At The Death★
ホテルの屋上
風はまるで地上へと向って吹いて行く
飲み込まれるように吹いて行く
キレイな薄紅色が広がっている
瞳にも、映っているだろうか……
Color=Zero
彼はその日の勤務を終えて帰ると、まず自らも認める殺風景な部屋の一番隅に追い遣られた、パソコンの電源がオンにされている事に気付いた。
電気のスイッチも付けずに青白いディスプレーを、いつもの様に眉を潜めて見つめ、吸い込まれるようにパソコンの前へと進んで行く。
この時期何の関係なんだか部屋に溜まる蒸し暑い空気を回した換気扇が徐々に吸い取っていく。
いつもの気配の部屋に異常は見られず、ただタイマーも切った筈のパソコンだけが勝手にオンになっている。かなり旧式のこのパソコンは以前職場の新機種導入の為、不要になった物をもらって来た。旧式とは言うものの、そこらでお目にかかれるような代物では決して無い。
おんぼろが、そう口の中でつぶやきながらスイッチを切ろうとしたが、その手を止める。
いい加減古い分勝手に着くまでになったのか、電気代が知らぬ間に跳ね上がっていたら面倒だ。1セントたりとも自分の金を無駄にするか。
それでもこのパソコンの勝手振る舞いにはどうやら別の意味がある。画面の右下に見慣れない何かの白いマークを見つける。
白のディスプレーの分、見づらいが、何かを受信している。
カタタタタと立て付けの悪いプロペラが部屋に響く。
ベッドに放り投げた上着の中のキャメルを引っ張り出して腕を捲くる。何やら画像を受信したらしい。
疲れて帰ってくればこれだ。本来そんな物は直ぐにでも吹っ飛ぶものだが、今日は違った。いつもならバーボンを流し込んでそのままベッドに倒れ込み眠るだけだ。その為に全ての仕事は残らず済ませてシャワーも借りてから帰って来る。
要するにこのパソコンはある一軒以外には全く起動させる事の無いパソコンで、最近その件の収穫が滞っていたものだから隅に追い遣られているわけだ。
受信は信号ですら受け付けない様に設定されている。受信される分は携帯用のノートパソコンに記録し、全てをこちらに記録しなおしていたのにはわけがある。ギャング捜査は基本的には彼の範囲では無い。上司にばれらばまた大目玉を食らう。
強制的なこの介入者をどう見るべきか。
マークはどこかの会社のシンボルマークやロゴにでも使われていそうな物だった。進めているDD関係の物では見かけない。
本来をロックし、受信した物をディスクに収めノートに読み取らせてからマークをクイックする。
MEMBERS各位殿
始めに断って置こう。
もしもこの世に未練があるのならば、お前様はここに留まり、生き続けなさい。
その道を選ぶことが通常の人であるからして、興味本位で一つの世界を覗いて見たいわ、追求したいわというのならば引き下がって頂かなければなりますまいて。
死を伴うものに探求はもはや無用。その心こそが破滅への一歩であるのだから。
単なる戯言ならば生は恵まれ、本気で向き合う心があるのならば開ければよろしい。
うぬは、ただの一度も過去を振り向くことはせずにいられようか。
過去の一つ一つを見つめ、まるで後ろ向きで歩いているそちの姿が見える。
ただただ、終焉のときを望む。自傷の癖がある。心は死へと漠然としている。生への判断力が欠けている。一時の絶望の想い。それが愉しみ。
うぬ等は其々であるが、死への道が開かれたならば、何を望まんとす。
最高の死の場所と方法、それを模索すればよい。
死ぬならせめてそれ位はしておこうと、心身を壊して絶望していても、余裕が無くとも……
提供してみないか、お前の死。是非、吾輩を呼んで頂きたいファイヤー。
それがしNETWORK社長
完全に各位殿をなめ切った触れ込みはやはりふざけ切っており、多少青筋立ててその文章を見てから、続いた映像を見た。
映像は8分上映された。
しばらく映像の消えたディスプレーを見ていたが、勢い良く立ち上がり上着を再び着て最近買い換えたセダン、ワイルドオーズッドに乗り込んだ。