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第6話 昔話の中から出題されました

「痛いっ。」


 風呂場に繋がる通路でデバガメっていた弟妹たちに拳骨をくれてやる。グリフレットの奴、『情』スキル持ちだからって、風呂場を覗き込むなよ。それじゃあタダの変態だ。


「パーシヴァルがのぼせてしまったぞ。介抱してやってくれ。子供じゃないんだからバカなことを仕組むなよ。」


 広い風呂場だったのでパーシヴァルの後ろにゆっくりと回り込んだのだが、途中で崩れ落ちたパーシヴァルを慌てて抱き留めて座れそうなところで『箱』スキルから冷たい水を出して飲ませて置いてきたのだ。


「酷い。置いてきたんですか?」


 首謀者のエレインが睨みつけてくるが怖くはない。俺には可愛い妹にしか見えない。


「うるさい! さっさと行け。」


 抱き上げたときに触ったその弾力を思い出す。アイツって着痩せするタイプだったんだな。若干筋肉質だが出ているところは出ていたのだ。全くもうコッチの気も知らないで。


     ☆


 割り当てられた寝室に行くとランスロットとガウェインが待っていた。


 良かったすぐ下の弟たちはデバガメの集団に居なかったようだ。


 それでも気になるのか。何か聞きたそうな視線を投げてくる。


「このムッツリめ。」


 まだデバガメのほうがマシだ。


「「にいちゃーん。」」


 何か悪さをするとこうやって甘えてくる。やらなきゃいいのに。


「全くパーシヴァルとの関係性が変わってしまうじゃないか。まあ元に戻らない。ちゃんと兄妹内でフォローしてくれよ。なんで弟妹は皆可愛いじゃダメなんだ。皆等しく愛情を注いできてきたつもりだぞ。」


 2人の弟を両腕で抱き締める。


「じゃあなんでアーサーは・・・ゴメンにいちゃん。ごめんよー。」


 俺は返事の代わりにガウェインの髪の毛をくしゃくしゃにしてやった。アーサーが死んでからまだ数日しか経っていない。冗談でも受け流せるところにまで到達していない。


 遺体を『箱』スキルの中へ入れているのが悪いのかもしれない。この儀式が無事終わったら丁重に葬ってあげなくてはいけない。それまで一緒に居ような。


     ☆


 翌朝、簡単に食事を摂るとマーリンに船着場に連れて行かれた。そこには1艘の舟が置いてあった。


「漕ぎ手は?」


 ここに来るときの舟の漕ぎ手は湖の乙女に仕える下男風の男だったが舟の上には誰も乗っていない。


「大丈夫だ。勝手に動く。」


「魔法なのか?」


「まあそのようなものだ。」


 なるほど。『鑑定』スキルを使ってみると舟の底に湖の乙女たちが居た。彼女たちは水の中でも呼吸ができるらしい。妖精の魔法かもしれない。というか人力なのか。普通に漕げばいいのに。


 俺とマーリンが乗り込むと静かに動き出した。


「俺は何をしたらいいのだ?」


「さっき言ったようにココと思うところで池に武器を投げ込めばいい。そうすれば竜の剣になって戻ってくる。」


 何か特別な場所があるらしい。『鑑定』スキルを使い続けることになりそうだ。


 島の周囲を1周回ったところで『ペンドラゴンの湧き水』というものを見つけた。


「ちょっと待て! 今、何を投げ入れた?」


 俺は『箱』スキルから取り出した愛用の武器を投げ入れた途端、マーリンが怪訝な顔で問いかけてきた。


「えっ。愛用の武器を投げ入れればいいんだよな。」


「あ・・ああ。」


 マーリンが言い澱むうちに湖から3つの武器が突き出された。


「・・・汝に問いかける。汝が投げ入れた武器はどれだ。」


 俺が投げ入れた武器以外はこの国の騎士なら誰もが持っているであろう長剣だった。


「一番、右だけど。」


 間違えようが無い。もしかしてクイズ形式だったのだろうか。


 同じような問題が4度続いたが全問正解だった。


「では最後に汝が投げ入れた武器はオリハルコンの剣か? 宝石が散り嵌められた剣か? それとも、この・・・武器か? 自分で取ってみせよ!」


 これって、鉄の斧を池に落したら、金の斧を持って水神様が現われて、これかと聞き、違うと答えたら、銀の斧を持って現われ、違うと答えたら鉄の斧を持って現われる。欲を掻いて金の斧とか銀の斧とか選ぶと池に引きずりこまれる昔話だよな。


 少し悩むな。引きずり込むのが湖の乙女なら勝てそうだ。これで竜の剣が取れなくて騎士爵家が取り潰されても、オリハルコンの剣や宝石が散り嵌められた剣を売れば騎士爵家を金で買えそうなんだよな。


「どうした。迷うところじゃないだろう。さっさとこんな茶番を終らせてくれよ。」


 マーリンが自棄になった口調で吐き捨てる。


「はいはい。解りましたよ。・・・なんじゃこりゃ。」


 俺1人ならオリハルコンの剣を選んだだろうけど、弟妹たちが居る。軽蔑した視線を貰いたくないので素直に自分が投げ入れた武器を取り上げた。


 俺は愛用の弓を投げ入れたのだ。代々ブリタニア騎士爵家に伝わる長剣も俺が国から賜った長剣もとっくの昔に弟たちの授業料などのために売り払ってしまって無い。


 投げ入れたのが代々ブリタニア騎士爵家に伝わる長剣ならば、4度続いたクイズで不正解を引いたかもしれないが、弓では間違えようがなかったのだ。


 『鑑定』スキルでは下から差し出していたのはヴィヴィアンさんだったが見なかったことにする。それよりも弓の形状が変わっていたのが問題だ。


 弓の弦のど真ん中に柄が突き出ていた。柄を握り込むとどういう仕掛けなのか剣の形に変形したのだ。しかも柄の部分にはトグロを巻いた竜が描かれている。本当に竜の剣に変化したらしい。しかし、派手派手な剣だ。こんなの持っていたら変人扱いされそうだ。


「この2本も貴様の物だ。受け取れ。」


 マーリンからオリハルコンの剣と宝石が散り嵌められた剣を渡された。そういえば昔話も正解を選ぶと金の斧も銀の斧も貰えるんだった。そんなところまでソックリにしなくてもいいのに。

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