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第40話 竜を統べる王

『ペンドラゴン王のご血筋とお見受けしますが?』


 俺は迷っていた。これはどう答えるべきなんだろう。


 不老不死のペンドラゴン王がどういう理由で亡くなったのか解らないが俺で10代目となる。先代の200年は短いほうだというから2000年以上は経っているはずなのだ。


 だからペンドラゴン王の血筋と言われればブリデンの国民が全て血筋の人間となってしまう。しかも竜の剣を見つけ出した貴族が次代の王なので必ずしも直系が残っているとは限らない。


 貴族の中でも、バン辺境泊やペレス侯爵といったごく僅かな国外からやってきた人間だけがエクスカリバーの挑戦権を得られないのだ。


「すみません。横に向いて喋って頂けないでしょうか。貴殿の声は高すぎて鼓膜が破れそうなんです。」


 ワイバーンの嘴から発せられた声は超音波らしく。両手で耳を塞がずに聞いた所為でキーン、キーンと頭に響き渡ったのだ。


 隣ではパロミデスや騎士たちがうずくまっている。


『ごめんなさい。これでよろしいでしょうか。』


 慌てたように横を向いて喋ってくれた。


 そんな声でも『翻訳』スキルは正しく効果を発揮したようでワイバーンの言葉を通訳してくれる。こちらの言葉も届いているようだ。


「ブリデン国王アルトゥスだ。」


『王。逃げて、逃げてくださいってば。』


 隣で必死にパロミデスが喋っているが耳が音を捉えていない。しかし『翻訳』スキルが効果を発揮する。変なところで高性能だな。赤ん坊の泣き声でも何を言っているか解りそうだ。


「パロミデス。馬車の中で待っていろ。」


『やはり。ペンドラゴンのご血筋の方とは知らず、うちの若いもんが突然襲い掛かってしもうて。申し訳ありませんでした。』


 また『翻訳』スキルが変な高性能さを発揮する。まるでヤの職業のお姉さんのようだ。『鑑定』スキルを使ってもメスと解るから女性で間違ってないらしい。


 謝られてしまった。どういうことだろう。同族の中で社会を形成しているのならまだしも弱肉強食の世界で生きている彼女らが謝るなんてありえない。まるで人間の社会で生きていたかのようだ。まさかね。


「こちらも2匹とも葬ってしまったが構わなかったか。」


 何かしらペンドラゴンという名前だけで彼女らにとって恐怖の対象であるらしい。ここまで明らかに下手に出てくるのであれば、上から目線でいくしかあるまい。


『はい。それはもちろん。こちらが悪いんですから、どんな殺され方をしても文句はありません。』


 竜を統べる者と言われたペンドラゴン王が本当に竜を統治していたとは驚きだ。しかも襲い掛かった際に酷い殺され方をしているらしい。聞いてみたいような聞きたくないような。


「それで俺に何の用だ?」


 別に2匹の仲間(ワイバーン)を殺されたからと文句を言うつもりは無いらしい。偶然、強者に当れば死ぬのは当然と思っているようだ。


『はい。以前のようにブリデン国に住まわせては貰えないかとご相談にあがりました。』


「ほう。以前ブリデン国に住んでいたというのか。ペンドラゴン王が出した条件は何だ。」


当然、何の条件も無しに住まわせるわけは無い。どんな場所であろうとも大切な領土に違いは無いのだ。


『はい。お婆様によるとプリデン国の人間を襲わず保護下に置くことだそうです。』


 ワイバーンの寿命がどれだけか知らないが口伝で伝わるほど長いのは確かだ。


「それだけか。」


『はい。』


 なるほど外敵は襲い掛かっても良いわけだ。


「食事はどうするんだ?」


『トド・アザラシ・海鳥たちを自由に獲っていいことになってました。』


 漁場を荒らす生き物を減らし漁民を保護してくれる存在か。この世界にバイキングやサクソン人が居るかどうか解らないが敵対する勢力に対して威嚇にもなる存在。これは是非とも欲しい戦力だな。


「だが神獣の傍に居られるのか?」


『はい。神獣の指揮下に下れば問題無いそうです。』


 ペンドラゴン王が死んで、神獣の代が替わる際にブリデン国を追い出されたらしい。


 お守りはマーリンに任せればよさそうだ。


「住処は南西部の山岳地帯だよな。」


『はい。』


 ウェールズ地方というわけだ。現代では街が存在するがこの世界では誰も住んでいない。険しい山を乗り越えなければいけないからだ。


「何勝手に決めているんですか!」


「うわぁ。びっくりした。驚くじゃないかパロミデス。もう決めたぞ。」


 いつの間にか耳が回復しており、耳元で怒鳴ったパロミデスの声が直撃した。


「えっ。」


「別に問題無いだろ。あの辺りに人は住んでいないはずだ。」


「ブルターニュの目の前じゃないですか。そんなところにワイバーンが居たら怖いじゃないですか。」


 怖いだけなのか?


「ブルターニュの船は4本足の竜の旗を掲げて漁に出ないのか?」


 古くからブリデン国の船には4本足の竜の旗を掲げる習慣があるのだ。貴族の紋章にも使われているため、気にした事が無かったがそれでワイバーンが判別していたらしい。


「出ます。なるほど、そういうことですか。」


 パロミデスもやっと納得がいったらしい。


 ワイバーンが口伝で伝わったものが人間たちの間では習慣として残っているだけとは情けなすぎる。

アーサー王伝説の舞台はグレート・ブリデン島という説とブルターニュという説。

他にも幾つかの説があるそうですが、英国王室が権威付けのため創作した部分や

紋章に4本足の竜の絵が使われていたりしてグレート・ブリデン島という説が嘘臭く見えてしまいます。

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