第39話 マッチポンプ
「助け・・・なきゃいかんよな。4つもレベルアップしたから魔術師を選択すればなんとかなるかもしれんが賭けなんだよな。今度こそ騎士をレベルアップして至上最高の騎士なりたかったんだがなあ。」
「・・・何をブツブツ言っているんですか! 助かる方法があるのなら、助けてください。お願いします。何でもします。死にたく無い。」
パロミデスが脂汗を掻きながら必死に言葉にする。まあそうだよな。
「本当に何でもするか? 『抱いて欲しい』とか『側室にしろ』とか言わないな。」
なんで俺こんなことを聞いているのだろ。普通逆だよな。
「言いません。言いません。だから助けて!」
でも普通の魔術師で解毒ができるだろうか。まずは職業を取ってみるしかないよな。
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名前:アルトゥス
種族:人族
職業:猟師Lv4、騎士Lv1、魔術師Lv1
年齢:37歳
HP:125000
MP:600
称号:勇者、ブリデン王
スキル:翻訳、鑑定、状態、箱、賢、毒耐性Lv2、火魔法、水魔法、風魔法、雷魔法
状態:[神経毒]
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HPは変わらず、MPが2倍か。火・水・風・雷魔法。これ属性魔法ってやつだよな。魔法使いのレベルを上げることで使える魔法が増えるようだ。解毒があるとすると水魔法か。やっぱり聖魔法。
聖魔法取得の定番は教会に行って訓練すると貰えるというやつだろうけど、この世界の教会の人間で魔法を使えるということを聞いたことが無いんだよな。後は聖なるモノを持てば・・・ある・・・あるじゃないか。聖剣が・・・。
俺はワイバーンの血で薄汚れたオリハルコンの剣を地面に突き立てる。凄い、街道の石畳がまるで土のようだ。こうやってみるとこっちのほうがエクスカリバーらしいんだけど。まあいいか。
聖剣の柄を持ち、選択できるスキルを思い描くと・・・あった。聖魔法だ。俺はそれを慎重に選択する。あるあるある解毒がある。
「これでどうだ?」
「ありがとうございます。楽になりました。これはいったい・・・。」
パロミデスが口ではそう言うが立ち上がれない。
『鑑定』スキルを使うと確かに状態から神経毒が消えていた。ただHPが残り少ない。仕方が無い魔法使いのレベルを上げよう。レベル3まで上げ『高回復』を使うとようやく立ち上がれるようになった。
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名前:アルトゥス
種族:人族
職業:猟師Lv4、騎士Lv1、魔術師Lv3
年齢:37歳
HP:125000
MP:2201
称号:勇者、ブリデン王
スキル:翻訳、鑑定、状態、箱、賢、毒耐性Lv2、火魔法、水魔法、風魔法、雷魔法、聖魔法
状態:[神経毒]
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「いわゆる魔法ってやつだ。」
「魔法ってドルイド僧が樫の枝を使ってやるというアレですか?」
パロミデスの顔が胡散臭げな表情に変わる。やっぱり人気無いよなドルイド僧。
「いや王と神獣だけが使えるものなんだ。」
万が一、マーリンが使うところを見たとしてもこれなら納得してくれるだろう。
「そうですか。」
パロミデスの顔がホッとした表情に変わる。すまんマーリン。本当のことを言えなかったよ。
「さて戻ろうか。」
「助けて頂いて何ですが、もうこんな危険なことは止めてください。」
「危険。どこが危険だったんだ。パロミデスこそ馬車の中で待っていれば良いものを『解毒』するために至上最高の騎士になり損ねたじゃないか。」
至上最高の騎士ならアーサー王を名乗れるのにレベル1でしかも末弟アーサーから譲って貰った騎士じゃなあ。
「とにかく、こんな『マッチポンプ』みたいな真似は止めてください。そんなに私を抱きたいのなら抱かせてあげます。」
そうだよな。女性に対して毒に侵された身体にしたあげく『解毒』『回復』して恩を着せるなんて酷い。レベル上げをしたかったからとはいえ我ながら酷い行状だ。
「おいおい。約束が違う・・・じゃ・・・うん。すまん。」
パロミデスに睨まれて引き下がる。これって抱くと約束したことになるのか。いや違う違うことにしておいて欲しい。骨折り損のくたびれ儲け・・・どころか大赤字じゃないか。
「ねえ王・・王様・・・アルトゥス・・・アルトゥス様。」
がっかりだ。せっかくレベルアップの絶好のチャンスだと喜び勇んできたのに。次はぺラム王との面会か。気が重いな。
「なんだよ。煩いな。こちとら大赤字をどう帳尻つけようか悩んでいるんだから・・・。」
「そんな場合じゃないです。後ろからワイバーンたちが付いてきているんですけど。」
「何の冗談だい。奴らはとっくの昔に逃げ・・・本当だ。しかも4本足で器用に歩いてきている。」
真っ赤な身体に青色の舌がチョロっと見える。可愛いと言えなくもないかな。
真っ赤な身体に青い舌や爪の4本足の竜はイギリスのウェールズ地方の紋章に良く使われています。
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