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第38話 王の役割

「ブルターニュを完全復興させて成り上がり、王廷に馳せ参じますので覚悟しておいてくださいね。」


 翌朝、程よく暖かい抱き枕になってくれたパロミデスが何かに憑かれたように俺の前で宣言する。部屋を出て行くよりも添い寝を選び、気持ち良くもなりたかったらしく希望通りにしてあげたのだが。


「解った。解った。騎士爵位を持って報いよう。」


 本当にブルターニュ全域を短期間で完全復興を成し遂げば騎士爵位どころか男爵位でもおかしくない。数代先には辺境伯の可能性さえあるだろう。


「全然、解ってないじゃないですか!」


 もちろんワザとだ。これで諦めてくれるといいんだけど。いや復興はして貰わなければ困るんだけどな。


 モルゴースが知ったら、側室枠を空けて待っていそうで怖いのだ。

















「見事に何も無いな。」


 ぺラム王国の王都の門はブリデン国側にもロマンス帝国側にも無い。どちらにも従属しないぞという表れなのだろう。唯一海岸線に向っている門の前に立った。


 王都より向こう側は砂漠が広がっており、遥か遠くには翼竜と思われる姿が見え隠れしていた。ブルターニュに神獣が来たことで追い払われてしまったのだろう。そのうち戻ってくるのかもしれない。


「前王が倒れて4年間はブルターニュもこんなふうでした。僅かに残る森の周辺だけしか農作物が育ちませんでした。」


 パロミデスは感慨深そうに言うがぺラム王国の人間にとっては現実だ。ブルターニュが荒廃していたときはブリデン国側もこんなふうだったのだろう。実際にブリデン国側には多年草は生えておらず最近生えたと思しき1年草ばかりだ。


 良く国が持っているよな。食糧は輸入に頼るしかなさそうだ。


 ロマンス帝国の使者との会談は王都の近くの砂漠に作られた街道上で行われる。まずはぺラム王と会談する。ぺラム王国は中立国だがペレス侯爵家と縁続きで一見ブリデン国寄りだが、エンヴィーとの関係も疑われるため油断できない。


「そうだ会談場所の下見に行こう。」


 会談は3日後を予定しており少しくらいならうろつき回っても大丈夫だろう。


「そんな乗り合い馬車で旅行に行こうみたいに気軽に言わないでください。いつ何時、魔獣が襲ってくるか解らないですよ。お供の騎士たちだけでは不安です。ねえ、聞いてます?」


 王以外は帯剣も許されないため、装備品の剣は馬車に積んであり国境でぺラム王国側の衛兵たちが付いている。


「別に付いてこなくても平気だよ。ちょっと馬だけ貸してくれればひとっ走り行ってくるよ。」


 あらかじめ馬たちとは話し合って一番足の速い馬は知っている。まあ追っかけてきたとしても、追いつけない出来レースになっているのだ。


「ちょっと何勝手に馬に乗っているんですか。ダメですってば。その馬は気性が荒くってですね。騎士たち何をぼーっと見送ってるんですか! 追いかけて追いかけて止めてください!」


 街道を砂煙を上げて馬たちが走れば、何事かと魔獣たちが寄ってくるのは当たり前だ。ゆっくりと来ればいいのに。


 ロマンス帝国が会談の場所に選んだ元オアシスで馬から降り立ち、『箱』スキルからエクスカリバーを取り出し弓形態にすると1本の矢を放った。丁度近付いてきていたワイバーンの羽に当る。


「早く逃げて! ワイバーンに矢なんて通じませんから! 早く!」


 これは本当だ。オリハルコンの鏃を付けなければワイバーンの身体を貫通しないらしい。しかも羽に当っても大したダメージを与えられないという。


 俺はワイバーンと共に落ちてきた矢を回収する。これが一番危険物だからな。万が一、先端に染ませた俺の血液に触れたら、パーシヴァルもマーリンも居ない今助けられる術が無い。


 更にエクスカリバーを『箱』スキルに仕舞い、オリハルコンの剣を取り出し、ワイバーンの首を切り落す。


















 『レベルアップしました。』『レベルアップしました。』


 やはりジャイアントワームの毒はワイバーンにも効果を発揮するらしい。


「ワイバーン・・・・・・・・・・・・・・・・・・を倒されたんですか? ひとりで。」


 ワイバーンは天災と言われ、襲ってきたら建物の中に逃げるしか対処のしようが無いと言われている生き物だ。


 だが魔獣を追い払うのも王の役割のひとつだ。そのために竜の剣が与えられているのだ。


 パロミデスがへたり込む。いや周囲の騎士やぺラム王国の衛兵もへたり込んでいる。


「まだまた!」


 また1匹のワイバーンが襲い掛かってきたので同じ手段で撃ち落すと首を切り落とす。


 『レベルアップしました。』『レベルアップしました。』


「何ですかその矢は!」


「触るな! 触ってはならない! ちっ。」


 パロミデスが触ろうとするので大声で警告し、固まったところで矢を回収する。


 もう1匹襲い掛かってきたワイバーンが急回転して上空にあがっていった。他のワイバーンもこちらの様子を窺うばかりで近寄って来ない。これ以上のレベルアップは望めないか。


「大丈夫か?」


 パロミデスに近付くと脂汗を流して頷く。大丈夫じゃないらしい。


 さてどうするか。参ったな。奇跡を起こすのはマーリンの役割で王の役割じゃないんだがな。

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