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第36話 慰謝料を頂戴しました

「それで何か解ったのかよ。」


 俺に言い負かされたのが悔しかったのか膨れっ面で返してくる。やっぱり弟って可愛いな。ホッペを突いたら怒るだろうなあ。


「地下に人身売買のための競り市みたいなところがあった。」


 最上階にある特等室から地下に降りる階段があったのだ。愛玩用と思われる美しい男女が檻や鎖で繋がれている姿は倒錯的で一枚の絵画のようだった。


「ま・・・まじかよ。」


 そのとき思ったのだ。これが罠で監禁されてしまえば抵抗出来ないなあって。1人で脱出できるだけの攻撃力を持たないとこれ以上の単独任務は無理だ。


「競りの日じゃなかったから、放置してきた。直ぐに踏み込んで。」


 まあどのみちシロウトばかりだったから捕まらないだろう。


「今日なのかよ。」


「違う3日後かな。でも王宮警備隊の隊長と俺が接触したんだからバレバレだ。命令書が必要か?」


 今日帰ったときに報告しようと思ったんだがな。まさか情報収集中の人間に声を掛けるバカが王宮警備隊に居るとは思わなかったのだ。


「そこにぶら下がっている営業許可書のようにか? それには及ばない。」


 木片に営業許可書と書き国璽が重なるように押されているものが無造作に屋台にぶら下げてある。もちろん国璽は本物だが営業許可書は偽物だ。


 国璽は俺専用に作られており『箱』スキルに入っているからいつでも押せる。命令書も偽物にしか見えないのでは作っても仕方が無いのだろう。


 誰かが文句をつけてきたら俺が顔を出せば済む問題だ。

















「ただいま。ちょっと善良に育て過ぎたかな。」


 ランスロットじゃあるまいし、もっと知恵が回ると思ったんだがな。エンヴィーと対峙させられないレベルだよな。王宮警備隊の隊長様。


「おかえりなさい。どうだった?」


 後宮へ戻るとモルゴースが出迎えたので、少し意地悪をしたくなった。


「ほとんど、もぬけのカラだった。数人抵抗したので皆殺しにしてきた。」


「皆殺し・・・なの。」


 モルゴースが青ざめていく。


「冗談だよ。もう2度とこんなことをするな。」


 俺を取り合った娼婦の1人と支配人の所属が『影の軍団』になっていたのだ。どういう結末に持っていくのか興味があったので放置した。案の定、無関係と思われる娼婦数名と用心棒を除いて、もぬけのカラになっていたのだ。


 多分、即座に報告して突入したとしても殆ど変わらなかったのだろう。凄い撤収力だ。


「貴方・・・。」


「俺に手を出して欲しくないのなら、そう言えよな。それとも俺のことが信じられないのか?」


「ごめんなさい。貴方の力量を掴みたくて・・・。」


「こんな大掛かりなことをしたのか。大方、娼婦に手を出したら、それで脅してグィネヴィアに手を出させようって魂胆なんだろうが、そうはいかないからな。」


 屋台を引いている男を娼館のナンバーワンとナンバーツーが取り合うなんて、どこの3文芝居だよ。


「それは違うのよ。地下に案内した娼婦が芝居でもう1人のほうは本気だったらしいの。途中で仲間に引き入れたんだけど。どうやって肉体関係を持たずに情報を聞きだすなんて高等テクニックを身につけたの?」


 女性相手に気持ち良くなってもらう手段なんて男も女も同じだ。肉体関係は男がイクための手段に過ぎないのだ。キスして触れ合って抱き合うだけでも愛情は伝わる。


 娼婦だったから。ガッついて居ないところが好かれたのかも知れないけど。


「それは前世でだな。」


「2人とも褥のことは言いたがらないし、どういうこと?」


 なんか形勢が逆転し掛けている。やばいやばい。


「解った。実地検証してみせようじゃないか。こいよ。」


 無理矢理ベッドルームにモルゴースを引っ張り込む。女性教授や女性副学長で培ったテクニックを見せてやった。身体が衰えると短時間ループを繰り返して幾らでも欲しがるんだが、モルゴースの身体は若々しかった。実年齢は幾つなんだろうな。
















「取りあえず。慰謝料代わりに娼館の権利は俺が貰っておいたからな。」


 100年以上の歴史を持つ娼館だったのだが所有者は転々としており、初代の所有者が地下に魔窟を作り出し摘発されており、最後の所有者は故人だった。


 地下の魔窟を改造したらしい。全く良くできているよ。きっと国から売りに出された後、数人の所有者を転々としたあとで『影の軍団』の所有に戻るのだろう。拠点のひとつらしい。


「えっ。」


「それはそうだろう。無関係の人間まで巻き込みやがって。娼婦たちにも生活があるんだぞ。明後日から営業が再開できるようにしてきた。第2の後宮だな。」


 多分、ラグネスのところへガウェインが通うことになるだろう。娼婦としては下位ランクだがアーサー王伝説とは違い、醜いというほどじゃ無い、愛嬌があって可愛い部類だ。


 しかも頭の回転も早く、思わずこちらが納得するような答を導き出してくれる。まあガウェインじゃ太刀打ち出来ないだろう。


「お優しいこと。こちらのフォローもお願いね。」


 いつの間にか娼館のナンバーワンとナンバーツーが後宮の大きな建物に入っていた。側室だそうだ。


「フォローって、彼女たちもプロフェッショナルだろ。」


 娼館の前で商売するに当たり、予め同業者は無許可営業で摘発して貰ったのだが、娼館主とよしみを結ぶために安くない金額を払い、抱いた娼婦が彼女たちだ。


 初めは場所代がわりに暇な娼婦を抱かされたと思ったのだが情報収集中に聞こえてきた噂でナンバーワンとナンバーツーだと知って驚いたのだ。あまりにも怪しすぎるので次に抱いたときに『鑑定』スキルを使ってみると案の定『影の軍団』だった。


 片方は娼婦のプロフェッショナルで、もう片方はハニートラップ要員のプロフェッショナル。モルゴースの掌の上で転がされていると憤った俺はテクニックを駆使して抱いたのだ。


 だがやりすぎたらしい。他の客に抱かれても簡単に感じるようになってしまい商売にならないのだという。まあベッドの中の女性は8割方演技だと前世の女友達から散々聞かされたからな。


 でもそれって俺の所為かよ。




アーサー王伝説にはガウェインとラグネスのお話があります。

最終的には悪い魔法に掛かっていたラグネスは美しさを取り戻すのですが、この一節要らないと思う。

美しくても頭オカシイ女より、醜くても賢い女のほうが良いと思います。容色は衰えるからね。

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