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第29話 積極的にイジメます

「グリフレットどうだ。何か掴めたか?」


 グィネヴィアが誘拐されたと報告があった後、真っ先にしたことはグリフレットとディナダンに王都の騎士爵たちに情報収集に向わせたことだった。


「グィネヴィア様が襲爵の働き掛けた騎士爵たち伺ったところ、現在王都に居ないのはメルワス以下7名。そのうち2名は老齢で領地に居ることが確認されていますので最大5名の騎士爵の存在が確認できません。」


 グリフレットの情報収集能力は素晴らしい。モルゴースが到着する3日間で王都に居る全ての貴族の所在を把握していた。


「ディナダン。上手く情報を植え付けておいてくれたか?」


「はい。皆様、憤っておいででメルワス攻略の際には是非同行させて欲しいと仰っておいででした。」


 民衆の前に王として顔を見せる際にグィネヴィアが居ないと蔑ろにしたと思われかねないので情報収集と同時に情報操作も行なったのだ。


「ちゃんと救出の準備をしていたのね。」


 同席していたモルゴースが感心した声を上げる。確かに感情では救出に行きたくないという思いのほうが強いからモルゴースの前では声に現われていたのかもしれない。


「王としての威信がキズ付けられたわけだから、最低限のカバーだけはやっておかないといけないと思ったんだ。」


 アーサー王伝説ではキズつけまくりの威信だが、愛と憎しみの王廷ロマンスばかりで良くアーサー王の施政が18年も持ったなあと感心する。


「そうよねえ。」


「だから犯人たちを捕まえたら処刑するつもりだった。グィネヴィアへの所業によっては情状酌量もできない。」


 グィネヴィアに恩を感じているならば無体な真似をしないと信じたい。だが男が美しい女を攫ってきたのだ。何も無かったと思うほうがどうかしている。世間的にはキズものになったと見られるに違いない。


 王妃の親類という理由で罪状を酌量するのもどうかと思うけど、国外追放して相手が居なくなれば、そんな噂も無くなるに違いない。


「うん。解っている。」


「ひとつ聞きたいんだけど、騎士爵位に関してはモルゴースが主導的にやっていて、表向きのことをグィネヴィアがやっていたんだろ。ならば君も騎士爵たちに睨みを効かせる立場にあるんだ。」


「まあね。だからといってグィネヴィアがキズものになったという理由で王妃にしないなんていうのは無しだからね。解ってる?」


「君たちって、仲良さそうには見えないんだけど。何故そこまで庇うんだ?」


「言わなきゃダメかな。」


 突然、モルゴースが弱気になる。これは余計に聞きたいかも。


「まあね。」


「嫌いにならないでね。長年グィネヴィアのほうが立場が上だったのが、今度は第1王妃と第2王妃。これまでの鬱憤が結構溜まっているの。」


 それくらい普通だよな。立場が逆転したら下になった人は逃げていくかもしれないが。


「そうか。時々、庇う役割を交代すると長く遊べるぞ。どうしても俺に固執するようならば、初めはこっちがイジメ役な。」


「貴方って・・・そう言えば元女の子だったわね。でもイジメなんかしていたようには見えないんだけど。どちらかと言えば傍観者って感じよね。」


 鋭い。


 餌食になったのは私を捨てた女。


 私が庇えば庇うほどイジメがエスカレートするので傍観者に撤するしか無かったのだ。


 集団の場合、半分が庇う側に回り攻守交代するたびに庇う人数が徐々に減っていくというテクニックを見せつけられた。いつの間にか庇う人間が1人になっていく。そしてその場では庇う人間が居なくなるが後でフォローを入れて長引かせるみたいだった。


 初めに強気な態度を示してしまうと後に引けなくなる。庇う人間がいなくなっても不遜な態度をとり続けさせることで逃げられなくするらしい。


「まさか。俺と結婚したのは・・・。そう言えば随分、条件が良かった。持参金も多かったし、子供も長男をこちらが取れるとかなり有利だ。3歳年上ってだけではなさそう。」


 実際は203歳年上だったんだけど。少なくとも俺の顔が伯爵家の次男にソックリなのは知っているんだし、結婚してからコッソリ情報をグィネヴィアに伝えることくらいは訳がなさそうだ。


「ふふふ。さてね。」

精神的なイジメは女性のほうが得意みたいです。


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