第28話 同じお調子者でも
「それであと何人後宮に入るの?」
モルゴースが後宮に入るなり、そんなことを言い出す。
「お前。何でそれを。」
「決まってるじゃない。諸侯から押し付けられた女性が居るでしょ。王なんだから最低3人居なくちゃ格好がつかないもの。後宮の女主人として把握しておきたいの。」
「よく解るな。なんて報告しようか悩んでいた俺がバカみたいじゃないか。」
「まあ貴方はそうよね。中央のことなんて興味無かったもの。それにしても良く王になる気になったわ。偉い偉い。」
モルゴースは抱きついてきて頭を撫でてくれる。これだから頭が上がらないのだ。全て見抜かれている。
「2人入る予定だったんだが今はゼロだ。」
イゾルテさんは誘拐事件の責任を感じているようでランスロットについていってしまった。当然のようにトリスタンも一緒だ。
「嘘でしょ。グィネヴィアが居るはずだと思ったのに。」
いやいやいや。嘘でしょ。何故グィネヴィアの名前が出てくるんだ。しかも親しげだ。
「何故。グィネヴィアのことを知っている。」
「やはり来たのね。レオ家はグランス家の遠い親戚なの。その関係もあって私はしばらく王宮で働いていたこともあるのよ。」
俺としたことがうっかりしている。アーサー王伝説ではグィネヴィアはレオデグランス王の娘という設定だったはずだ。遠い親戚と言いながらも両家は近しい関係なのかもしれない。
「まさかお前もグィネヴィアを仲良くしろなんて言わないよな。あんな頭のおかしい女を王妃に迎え入れるだけでもどれだけ葛藤したか。」
「何があったか知らないけど酷い言い方ね。」
「そういうが・・・な。」
俺はグィネヴィアが前ブリデン王を唆した顛末を話した。アーサー王伝説のことは伝えられない。それこそ頭がおかしい男扱いを受けそうだ。
「それ作り話かもよ。彼女は鼻持ちならないほど若さと美貌を自慢するような女性だったけど、あの男が処刑された件に関しては責任を感じていたらしいの。」
随分と詳しいな。まるで見てきたかのような・・・。
「240・・・?」
まさに当事者らしい。『鑑定』スキルを使うんじゃなかった。
「貴方見たの・・・見たのね。」
拙い。あの女所為でモルゴースとの間に溝を作りたくないと思いながら自分で作ってどうする。元々、年上と知っていて結婚したのだ。それが3歳差だろうと203歳差だろうと・・・大した違いは・・・ないはずだ。
俺はモルゴースを引き寄せて唇を重ねる。
初めは抵抗するそぶりをみせたモルゴースだったが諦めたのかその行為に夢中になっていった。
「ごめん。」
「貴方も物好きよね。こんなお婆ちゃんに。」
うっ。突っ込めない。突っ込んではダメなやつだ。女性教授も女性副学長も自分では年寄りだといいながら、少しでも大事にしようものなら烈火のごとく怒っていたからな。気をつけないと。
「ここは夫婦の寝室でもあるんだ。最後まで証明してみせようか?」
「バカ。」
うんうん。可愛い?
頬を染めるモルゴースは可愛かった。大丈夫。何も変わらない?
「まあ寵愛しろとは言いたくないけど、おろそかにしないほうがいいんじゃないかな。私が第1王妃として抑えつけるから、引き受けなさい。それで彼女は何処に居るの?」
結局、話すしかないのか。どう転んでも厄介な未来しか見えない。
「誘拐されたんだ。」
俺が告げると理解が遅れたようで暫く見つめ合う。
「ちょっ・・・大変じゃない。助けに行かないと・・・。」
「ランスロットに行かせてる。メルワス要塞攻略の準備が整い次第向かうつもりなんだが連絡が無い。」
「メルワス。メルワスなの。あの野郎!」
「知ってるのか?」
「知ってるも何も・・・遠い親戚よ。グランス家が持つ南部の領地を騎士爵たちに分け与えていたんだけど、南西部の要塞とその周辺の土地を貰ったメルワスがグランス家の後継者のつもりになっているバカな男よ。」
「殺し・・・ては拙そうだな。トリスタンのような存在なのか?」
「・・・ごめんなさい。弟の子孫なのよ。少し特別扱いが過ぎたみたい。五体満足じゃなくて構わないから生かせしおいて。」
同じお調子者でも随分扱いが違うよな。
「では2人で民衆の前に顔を出してから出掛けるとするか。そのために待っていたんだ。」




