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第24話 味方と敵方

「これはロット侯爵にバン辺境伯。どうしたのです。こんなに貴族の方々を引き連れて。どこかに殴り込みにでもいらっしゃるのですか?」


 翌日、ロット侯爵とバン辺境伯が突然訪ねてきた。随分と険しい表情だ。ロット侯爵家とペレス侯爵家へ王都に到着した際に挨拶に伺っている。何かあったのだろうか。


「貴殿が希望するなら、このまま殴り込みに後宮へ行っても構わぬぞ。」


 ダメだ。冗談が通じなかった。ロット侯爵には通じると思ったんだけどな。ロット侯爵家を訪ねたときには笑い声が絶えなかったのに。


「いや反省したんだよ。すまなかった。上京したての騎士爵に全てを委ねようなんて、とんでもない勘違いだった。わしたちを含めこれらの者たちは貴殿がどんな選択をついて行く所存だ。」


 バン辺境伯が頭を下げてくる。


 急に味方が増えた。確かにバン辺境伯もロット侯爵も中立的立場だった。俺が間違った選択をすれば、離れていくのだろうとは思っていた。


「何を急にどうしたんですか?」


「あ・いや「異世界のご息女に全ての責任を押し付けてはロット家末代までの恥。」という訳なんだ。」


 バン辺境伯が言いにくそうにしているとロット侯爵がそのものズバリを言ってくれた。


 なるほど恥というよりは男としてのプライドの問題なんだな。


「ありがとうございます。そうなんです。私怖くって。どうしようかと思っていたんです。」


 今は男です。


 そう言うよりは自分の中の女を使っちゃおう。前世では使ったことが殆どなかった女の武器を男に生まれ変わってから使うことになるとは思わなかったな。外から見たら気持ち悪い気がするけど。


 隣に居たパーシヴァルは目を丸くしている。


「そうだろう。そうだろう。」


 こうやって手を差し伸べてくれるときにはそれに乗っかればいいんだよパーシヴァル。そこで、でもとか大丈夫とか言ってはダメなんだパーシヴァル。


「ところでペレス侯爵という方はどういった人間なんでしょうか。」


 会いに行ったときには笑顔で挨拶をしてくれたものの、暖簾に腕押しで一方的にこちらが喋って終わった。全く人物像が読めなかったのだ。


「ペレス侯爵家は侯爵家としては領地も少なく、一見大した力も無いように見える。・・・だがな、裏の組織は一角のものだ。人の嫉妬や悪意といったものを上手く利用して人を動かすのに長けている。前ブリデン王の件も裏で動いているのは奴らだ。竜の剣のレプリカなど、そう簡単に手に入れられないからの。」


 しまったな。ガラハッドが侯爵家に養子に入ったときは、そんなことは全く考えなかった。何かあったときは援助を頼んでも良いと言われていたが使わなくて良かった。良かったがガラハッドが心配だ。あの子は口数が少ないから助けて欲しいとは言ってくれないだろう。


「あとそれから、エンヴィーという組織をご存知じゃありませんか。」


「お主どこでそれを・・・。」


 ロット侯爵が乗り出してくる。近い・・・顔が近いって。


「竜の剣を奪われそうになったんです。足に蛇の刺青をした気持ち悪い人でした。」


 俺は少し引き気味に話を続ける。


「その男はどうしたんだ?」


「怪我を負わせて捕まえたところ自害されてしまいました。」


 頚動脈から血が噴き出したんだよな。その所為でワームが寄ってきて大変な目にあった。まるでその血でワームを呼び寄せたかのようだった。まさかね。


「そ、そうか。エンヴィーという名は滅多なことで出してはならない。この国の陰部、闇の組織の名前なんだよ。男性幹部の身体の何処かに蛇の刺青をしているのが特徴なんだ。ペレス侯爵家とも繋がっているのは確かだ。」


 やっぱり。あの下半身の死体を見て男だと解ったのは組織の人間をガラハッドが知っていたからなんだな。脛毛も無い綺麗な足だったのにおかしいと思ったんだ。


「パーシヴァル。このことは誰にも喋るなよ。弟妹たちにも絶対に喋ってはならない。」


「そうだ。お主の弟のガラハッドは取り込まれてしまったと思ったほうが良い。」


 洗脳とかそういうことなのか。厄介過ぎる。俺の手には負えないぞ。


「なんとかならないんですか?」


 藁にもすがる気持ちで聞いてみるが2人とも首を振る。この世界を代表する侯爵が2人ともダメでは絶対無理ってことじゃないか。なんてことだ。


 『清』スキルを持つパーシヴァルならもしかするとできるかもしれないが危険を伴うかもしれない。2人共失うわけにはいかない。



ようやく敵が見えてきました。


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