第21話 そんな資格があるはずがない
「どうしてブリタニア家の人間はどいつもこいつも無責任なのよ!」
「グィネヴィアさん。前の伯爵家の次男もこんな感じだったのかい。」
ネズミの後ろに大物が居た。
「そうよ。伯爵家の次男が気楽でいいなんて言って・・・。どうしてっ! 私ってわかるのよ。」
『鑑定』スキルを使っているからだけど。使用人に化けてくるなんて、何を考えているんだか。悪役のくせに小説の主人公になったつもりか?
「有名人だよね。顔バレしてるって自覚無いの? 危険なことをしているって自覚無いの? 後宮の奥に引っ込んでいて欲しいんだけど。顔も見たく無いんだけど。そんなに憎まれたいの?」
凄い美女だ。胸は小さめだが、ウエストは細いし、お尻も小さくて足が長い。変装のつもりなのかスッピンでも二重のパッチリした瞳に自己主張しすぎない鼻にへの字に曲げられても可愛らしく見える唇。
アーサー王伝説では王妃グィネヴィアとランスロットのロマンスが有名だが、アーサーやモルドレッドに惚れ抜かれている。だがモブの俺には効果が無いようだ。
「なんてことを言うんだ兄貴。こんな・・・綺麗な人に・・・。」
お前もか。ランスロット。当たり前か。一目惚れって設定は動かないらしい。息子のモルドレッドがこの場に居なくて良かった。
「じゃあ。お前にやるよランスロット。後宮の奥深くで一緒に暮らすがいいよ。」
「なんで・・・なんで・・・そんなことを言うのアルトゥス。私は貴方のことが・・・。」
女が擦り寄ってくるが、咄嗟に逃げてパーシヴァルの後ろに隠れる。
「止めてくれっ!」
本気で嫌いなのだ。アーサー王伝説の中で1番嫌いな人物だ。アーサー王伝説は中世において、英国王室や宗教上の理由において意図的に書き替えられ、書き加えられており、元の物語を抹消した形跡がありありと残っている。
その中でもグィネヴィアという人物を題材としたロマンスが多数作られており有名なのだが、前世の俺は虫唾が走るほど、この悪女が嫌いなのだ。
「だがそう言うわけにはいかないのだよ。」
「辺境伯・・・まさか・・・。」
グィネヴィアが王妃になった経緯は、当時のアーサー王には後ろ盾が必要で政略結婚している。
「そうだ。君は彼女と結婚して貰う。」
マジか。俺に王が内定しているから、後ろ盾として王妃グィネヴィアが付随してくるのか。勘弁してくれ。
「嫌です。こんな200歳を越えた婆さんと何でピチピチの俺が結婚しなきゃいけないんですか。」
37歳でピチピチというのも無理があるよな。でも普通逆だよね。王になったら若い女性を選び放題だ。別に年上が嫌いというわけじゃないが200歳越えは無いよね。
「君は国をバラバラにするつもりなのか。もう決定事項なんだ。君に選択権は無い。」
うわあ。本気で詰んでいる。バッドエンド中のバッドエンドに嵌まり込んでいる。
「でも次の挑戦者が竜の剣ごと不壊の鞘を抜けば、その人物が王だ。」
「そうだな。それで君はどうするつもりなんだ。ワザと不壊の鞘を抜かないのか。次の挑戦者に竜の剣を渡すのか。それとも秘策でも伝えるのか。それが出来る君は天命を受けているというのでは無いのか。君を今逃せばこの国は滅びるだろうな。」
俺が・・・この俺が天命を受けている。そんなバカな。
確かに前世知識を持ち、『勇者』という称号も持っている。生まれ変わる前には神さまにも会った。
だったら何故俺は、今前世を思い出したんだ?
生まれてすぐに前世を思い出し、ユニークスキルを駆使して国王を倒すのが筋だろう。
のうのうと37年間も何もせずに過ごしてきて、多くの犠牲者が出たあとで、全てが終わってしまったあとに、棚からボタモチのように転がり込んでくる王位を受け取れというのか。
そんなバカな話は無い。
「俺は何もしていない・・・何も成し遂げていないんだ! そんな王になる資格なんて、あるはずがないんだ!!」
やっと主人公が本音を漏らしました。強情ですね。
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