第20話 もう郷里に帰りたい
「伯爵位ですか?」
王都に着くやいなやスケジュールを入れられてしまった。その中でも1番に入ってきたのはブリタニア家への爵位授与だった。
「そうだ。エクスカリバーの復活の挑戦とは別にブリタニア家の爵位を元に戻そうということになったんだ。」
そもそも伯爵位を剥奪された経緯も謀反の疑いでブリタニア家の次男を処刑したという。それでも騎士爵位に留まったのは竜の剣を持つ家柄ということで王が倒れた際の代役が必要とされていたのだが、いざ国庫にある剣を調べてみると偽物であることが解ったというのだ。
「何か裏がありそうですね。」
「もちろんだ。前ブリデン王派の122騎士爵家の総意なんだ。国を2分しないためにも受けてくれないだろうか。」
「なるほど。前ブリデン王の娘グィネヴィアの助命嘆願の条件なんですね。」
前ブリデン王が行った政にも善政と言われているものがある。それが侯爵家に権力を集中させず、多くの騎士に爵位を与えたことだ。その爵位授与の中心的人物こそがグィネヴィアだったのである。
今まで前ブリデン王の娘が生き長らえてきたのは彼女を殺すとクーデターが勃発してしまう可能性があったからだと言われている。
「権力構造の維持のためには絶対に打たなければならない一手なんだ。」
「辺境伯のよろしいようにしてください。俺とて彼女をどうしても殺したいほど憎んでいるわけでもありませんから。」
意見を言える立場でありながら、言わなかったというだけならば、殆どの貴族に当て嵌まってしまう。
実際に言った貴族が20以上処刑されており、各地の暴動でも首謀者を処刑、関わった者たちを強制労働に送り込んでいる。
☆
王都の辺境伯邸から移る。随分と大きい邸宅だった。前ブリデン王が私邸して使ってた邸宅でゲストルームまで使って兄弟12人とマーリンとイゾルテさんにそれぞれ1部屋与えた。
別棟に使用人宅まであり、ここの経費は国で賄われるらしい。
殆ど大ホールと言っていいほど広い応接間に使用人たちが並ぶ。
「ここはブリタニア伯爵家宅です。貴女たちはブリタニア家に忠誠を誓わなければなりません。それぞれ出身と前職、名前を述べていってください。」
その殆どが若い女性だったのだ。『鑑定』スキルを使って確認していく。
元娼館に居たとかなら分かりやすいが代替わりしたばかりの元子爵夫人とかハニートラップとしか思えない人材が混じっていたのだ。
「ガラハッド・・・この女性を知っているよな。」
ペレス侯爵家の人間も紛れ込んでいた。その女性の説明では食いっぱぐれた農家の出身とあり、確かに農作業を行い赤黒く焼けた素肌をしているのだが、栄養状態はそれほど悪そうに無い女性だった。しかも職業欄は剣士だ。
ガラハッドと女性は視線を交わしあう。
「知りたいことがあるのなら、こちらの女性のように堂々と来るように言っておいて貰えるか。」
横に居る女性はロット侯爵家から来たことを告げ、伝言役を買って出ている。
全く嫌だ嫌だ。身内も疑わなくてはいけないなんて。勘弁してほしい。
「ランスロット。竜の剣を渡すから伯爵を受けないか。俺は騎士爵位のままでいいや。田舎に帰りたい。」
騎士爵とは別に伯爵位をくれるらしい。田舎に帰って皆で仲良く暮らしたい。
「兄貴。置いていかないでください。爵位に拘らなくてもいいじゃないですか、皆で力を合わせて働けばなんとかやっていけますよ。竜の剣なんてガラハッドにくれてやればいい。」
ランスロットも同じ気持ちらしい。




