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第1話 魔法使いマーリン

アーサー王伝説では影の主役にも関わらず、扱いが酷いマーリンですがこの話では準主役クラスです。

彼の胡散臭さは主役も取って食われるかもしれません。

「お兄様・・・その御髪は一体どうされたんですか?」


 長女のパーシヴァルが部屋に入ってくるなり悲鳴をあげる。


「ランスロット。俺の髪の毛がどうしたというんだ?」


 なんだろう。前世を思い出した拍子にハゲにでもなったのか。それは嫌だな。


「いえ。白髪が増えただけです。」


「お兄様の綺麗な茶髪が・・・透き通るような私の自慢だったお兄様の御髪が・・・。なんてこと。」


 俺の髪の毛の色がパーシヴァルの好みだったらしい。きっと末弟アーサーを亡くしたショックで髪が白くなってしまったんだな。まあハゲるよりはいいだろう。


「それよりも何があったんだ。パーシヴァル。誰かが訪ねてきたのか?」


 パーシヴァルには弔問の受付を行なわせていたはずだ。


「・・・旅のドルイド僧がアーサーに会いたいと訪ねて来てますがどうされますか?」


 パーシヴァルは何か言いたげだったが、しばらく深呼吸を繰り返してから話を続ける。


 相変わらず男の格好が似合うやつだ。いつも髪を短くしており刈り上げられている。何があっても穢れない『清』スキルの持ち主だ。女性らしくない自分の容姿に対しても他人に嫉妬することなく生きてこれたのは、このスキルを持っていたからなんだろう。


 こちらも職業は『騎士』となっている。皆、それほど騎士になりたかったらしい。


「皆。これからは俺のことをアーサーと呼べ、アーサーのことを知っている人間に対してはアーサーのことを小アーサーと呼ぶことにする。・・・パーシヴァル。その僧はどんな人物だ。アーサーのことを良く知っていそうだったか?」


 兄妹12人が全て揃った状態で宣言をする。


 エクスカリバー復活の基本的なルールでは当家の人間だったら誰でも構わないはずなのだが、万が一のことを考え、俺がアーサーを騙ることで末弟アーサーの死によって当家の挑戦権が剥奪されることにならないようにする。


 皆が頷いたことを確認し、パーシヴァルに問いかける。まずは俺がアーサーと名乗る1人目の人間だ。できうるかぎり情報を集める必要がある。まあ最悪会ったあとで『鑑定』スキルを使うことも考えている。


「胡散臭い顔をした若い男で白い肌に彫られた蛇の刺青が胡散臭さをさらに際立たせていました。」


 『清』スキルの持ち主であるパーシヴァルが悪態を吐くほど、胡散臭いらしい。まあ樫の木や宿り木といった媒体を使った占いだけでも胡散臭いドルイド僧なのに紀元前には公然と生贄を使った占いが行われていたらしい。


「わかった。会ってみよう。離れにお通ししなさい。」


 どんなに胡散臭くても無視するわけにはいかない。この世界では祭司として役割を果たしており、一定の権力を持つ者でもあるのだから。


     ☆


「俺がアーサーだ。祭司殿のお名前を頂戴しても宜しいでしょうか?」


 離れの上座には若い男性が座っていた。目が蛇のように釣りあがっていて瞳の色が赤み掛かっていたが、それを除けばかなりのイケメンだ。しかも真っ白い髪の毛、アルビノのようだ。白く透き通った肌に不似合いな蛇の刺青さえもイケメンを引き立たす役目を果たしているらしい。


「貴方がアーサー? ・・・失礼。私はマーリン。占いにより日々の生活の糧を得るもの。」


 いきなりアーサー王伝説の最重要人物である魔法使いマーリンが訪ねてくるなんて、ご都合主義もいいところだ。だが彼の用件ならば想像がつく。アーサーが両親の下で暮らせば必ず死が訪れると予言しているのだ。その結果を確かめにきたのだろう。


「マーリン殿。貴方の仰るアーサーは若いのではないかな。小アーサーこと末弟は誰かと会う約束があると家を飛び出しており、まだ戻っておらぬのだ。もしかして貴殿と会う約束をしたのではないかな。」


 まずはアーサーの死は隠しておくのが順当のように思う。悲しみに暮れる両親の様子を見ればバレるだろうが領地の外の人間に対して、わざわざ賢者として有名だった弟の死を喧伝する者など現れるはずも無い。


 占い師が死の予言を残しておいて、予言を成就させるため殺すことなど、この時代良くあることなのだ。最重要人物マーリンは最重要容疑者でもある。だがマーリンほどの重要人物と会う約束をしていたなら、弟が竜の剣探しを楽観視していたことにも辻褄が合うというものだ。


「私は、先程ここに到着したばかりなんだ。弟さんの面識も彼が幼い頃にしか無い。」


 弟はマーリンの容姿を聞きかじって必ず訪ねてくると踏んでいたのかもしれない。


 しかし物凄く怪しい。怪しいが彼が犯人だという確固たる証拠も無い。但し、目の前に居る人物がアーサー王伝説に出てくる本物のマーリン本人ならば、既にこの時点で有名人であるだろうから、少し疑惑が晴れるかもしれない。


 『鑑定』スキルを使うしか無いようだ。


―――――――――――――――――――――

名前:マーリン

種族:神獣ユニコーン

職業:ドルイド僧

年齢:12歳

―――――――――――――――――――――


 えっ。


 まさか。魔法使いマーリンが神獣ユニコーンだと。


 この世界は俺に取ってかなり無理ゲーと思っていたが、まさかクソゲーだったなんて。


 マーリンが登場する物語では予言するとき、必ず生贄を必要とする。多くの作家が手がけたアーサー王伝説では詳しい描写さえ無いものの、敵方の間者や襲ってきた騎士を血祭りにあげていることを匂わせる記述が多いのだ。


 ありとあらゆる文献でマーリンは非情で穢れだ存在だと共通認識されているのだ。悪魔の子とさえ記述されている物語さえある。それがこの世界では神獣だなんて・・・。


 穢れた存在のマーリンと穢れてはいけない存在神獣ユニコーンが同一人物。


 『予言』という目下最大の武器が目の前に転がっているにも関わらず、使わずに封印しなければならないらしい。なんてクソゲーだよ。

ダンス。ダンス。

ジャズとヒップホップ。どっちが良いですか?


踊り狂って、ブックマークと評価をお待ちしています。

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